日本初の「調剤薬局M&A専門」会社の誕生

M&A仲介を依頼することは、自分の人生を託すと同じこと。依頼する前には、その人・その会社の素性を知っておきたいと考える人は、少なくないと思います。

そこで、アテックとは一体どんな会社なのか、創業の経緯や歴史などについて、ここで少しお話しさせていただきます。

アテックが創業したのは、今から20年前、1991年のことです。当時はM&A自体が一般的ではありませんでしたから、日本初の「調剤薬局M&Aの専門会社」といっても、差し支えはないと思います。

そんな未知数のビジネスをなぜ始めたのか。これは、出会った人々に導かれた結果といえます。

1980年代の終わり頃、私は、自らが実用新案を持つゴキブリの駆除剤のメーカーを営んでいました。駆除剤は医薬部外品であったことから、全国津々浦々の薬局を営業で回っていました。これが薬局と関わることになった最初のきっかけです。私は、昔からいろいろな人と話をするのが好きで、学生の頃もアマチュア無線にのめり込んでいたほど。営業の場も、人間同士の触れ合いだと考えていたからでしょう。足繁く通ううちに、多くの薬局オーナーと顔見知りになることができました。今でも付き合いがあるオーナーも少なくありません。

このように薬局業界にパイプを持つことが目に留まったようで、数社の大手薬局チェーンから「不採算店舗の買い手を探す」ことを頼まれるようになりました。不採算店舗といっても、企業としては経営する旨味が少ないだけで、独立希望の薬剤師から見れば、居抜きですぐに開業できたり、医療機関の前に開業できたりと、魅力は小さくありません。そんな薬局を買いたい人材を探してほしい、というわけです。

当初は、薬局とのパイプを生かして、無料で独立希望の薬剤師を紹介していましたが、その流れで、薬剤師の独立のサポートを手がけるようにもなりました。「自分の店は持ちたいが、どうしていいのか分からない」と薬剤師から相談されることが多かったからです。

たとえば、資金面。居抜きとはいえ、案件を譲り受けるとなれば、最低でも数百万円のお金が動きますが、薬剤師は、融資を受けた経験がありません。そこで、融資を受けるための事業計画書の作り方などを指導するようになったのです。

この仕事が、アテック株式会社を設立するヒントになりました。調剤薬局の売買、つまりM&Aをサポートするビジネスのニーズは高いのではないか、と考えたのです。

近い将来、さらにそのニーズが高まっていくことも想像できました。薬局の営業回りで、オーナーと話し込んだ時に、「後継ぎがいない」という話を聞くことが少なくなかったからです。そのオーナーが引退を考えたときに、薬局の売却を希望することも十分に予想されました。

一方、医薬分業は1974年に、処方せんの点数が従来の5倍になり、処方せんを外に出す医療機関が増えたことから、調剤薬局は年々増えていました。1990年時点で、医薬分業率は10%強でしたが、国の意向から考えても、調剤薬局市場が大きくなることは容易に予測がつきました。

このビジネスに取り組みたいと考えたのは、生来のベンチャー精神がかき立てられたこともありあます。私は、茨城の農家の長男なのですが、子供の頃から家業を継がずに、「自分で何か新しいことに挑戦したい」と考えていました。大学卒後、大手セメントメーカーに就職したものの、5年で退職を決意。新しい事業を企画し、企業や店舗に提案する会社を一人で立ち上げました。その後も、商工会議所の仲間と異業種交流会を立ち上げたり、飲食店オーナーからの相談をヒントに害虫駆除剤を開発したりと、ニュービジネスに挑戦してきました。そんな私の前に、「誰も取り組んでいない」ビジネスが現れたのですから、闘志を燃やすのは当然のなりゆきでした。

そして、なんといっても、薬局オーナーや独立希望の薬剤師など、さまざまな人に喜んでいただける。こんなにやりがいのある仕事はなかなかない、と感じたのです。

これらの思いが、「調剤薬局M&Aの専門会社」誕生の原動力となったわけです。

アテック株式会社 取締役社長 鈴木 孝雄
「薬局オーナーのためのハッピー・M&A読本」より

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