M&Aの基礎知識

調剤薬局のM&Aで最も多い手法は「事業譲渡」「株式譲渡」です。

「事業譲渡」は、買い手が売り手の事業全部、もしくは一部を譲り受ける方法。複数の薬局のうち、一部の店だけを譲渡したり、営業権(のれん代)のみを譲渡する時に用いられます。

それに対して「株式譲渡」は、自社の株式を買い手に売却することです。そこには、法人の経営権、資産、負債などすべてが含まれます。

買い手にとって最大の違いは、「事業譲渡」は引き継ぐものを選べますが、「株式譲渡」はすべてを引きつがなければならない、ということ。

ただし、手続きに関しては、「株式譲渡」は一つの手続きで終わりますが、「事業譲渡」は譲渡するものすべてに対して個々に移転手続きなどをするので、非常に煩雑です。

急増中の「薬局経営代行」

最近、注目を浴びているのが「薬局経営代行」です。

これは薬品在庫だけを譲渡し、営業権、什器備品、内装設備、レセコンなどはそのままオーナーが所有し続ける、というもの。オーナーは、これらを新オーナーに貸し出して、賃貸料を得るわけです。
これも広義の意味でM&Aの一種といえるでしょう。

一番の特徴は、薬局の実質的な所有権は、旧オーナーが保有し続けることです。

一度に大きな金額が動かないので、税金を低く抑えられることも、この手法を使うメリットだといえるでしょう。

これまで3つの手法を紹介しましたが、どれが優れているといったことはありません。

あなたが、どういうカタチでリタイアしたいのか、
また、どういうカタチで薬局を譲渡したいのかによってベストな方法は変わります。
まずはご自身がどうしたいのかを、よく検討すること。
それが“ハッピーリタイア”の王道なのです。

3種類のM&A。その違いとは――?

  オーナー購入者
株式譲渡メリット オーナーに譲渡の対価が入る。
株主が変わるだけで簡単に譲渡企業の存続を実現できる。
手続きが簡単。
手続きが簡単。
デメリット  不必要な資産や借金も引き継ぐことになる。
譲渡企業の簿外債務を引き継ぐ恐れがある。
事業譲渡メリット 売り手法人に譲渡の対価が入る。
税金対策がとりやすい。
必要な部分だけを選んで譲り受けできる。
簿外債務を引き継ぐ心配がない。
デメリット 不要な在庫や借金が残る場合がある。
手続きが煩雑。
手続きが煩雑。
薬局経営代行メリット 薬局を手放さないですむ。
賃貸料が継続的に入る。
税金対策につながる。
相手を見つけやすい。
譲渡代金を用意しなくてすむ。
面倒な資産の転移をともなわない。
開局のハードルがとても低い。
デメリット 譲渡代金は得られない。
契約が終了した場合、更新するか再度相手を見つけなければならない。
自分の薬局にならない。
契約が終了する可能性がある。
薬局企業評価(株価算定)の方法について