近年、調剤薬局業界ではM&Aや事業承継が積極的に行われるようになっており、増加傾向にあると言われています。なぜ、調剤薬局業界でM&Aや事業承継が増加傾向にあるのでしょうか? そこで今回は、調剤薬局M&Aや事業承継が増加傾向にある理由と、対策方法として成功させるためのポイントなどを詳しく解説していきます。これからM&Aや事業承継を検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。目次■調剤薬局業界の現状を振り返る■調剤薬局M&A・事業承継が増加傾向にある理由■調剤薬局が今後生き残っていくためには?■調剤薬局M&A・事業承継を成功させるポイント■調剤薬局M&A・事業承継のサポートを担うアテック■調剤薬局業界の現状を振り返る M&Aや事業承継が増加傾向にある理由を探る前に、まずは業界の現状を振り返ってみましょう。現在の調剤薬局業界へ変わったのは1980年代のことです。この頃から「医薬分業」が開始され調剤業務は薬剤師が専門的に行うようになりました。 これまで薬剤師は病院だけで働いていたものが、医薬分業により薬局開業へと発展し、現在に至ります。調剤薬局の数は厚労省の調べによると平成29年度(2017年度)で59,138軒も存在しており、現在はさらに数を伸ばしているものと推測できます。 約6万店舗も存在する調剤薬局業界は大手薬局チェーンが軒を連ねているかと思いきや、実はトップ企業のシェア率は約3%のみであり、そのほとんどは個人薬局で構成されています。業界を引っ張っていくような大手企業は存在せず、低寡占市場とも呼ばれています。 これまでは低寡占市場であっても店舗数は徐々に増加していき、約6万店舗にも及ぶようになりました。しかし、国が医療費削減政策として「診療報酬の改定」や「薬価差益の縮小」などを行ったことで、収益に大きな影響が出てしまっているのです。 また、近年は人材不足に悩まされている調剤薬局も増えてきています。薬剤師の資格は基本的に薬学系大学に入学し、6年間知識と技術を身に付けていきます。以前は4年制だったものが6年制へと変わってしまい、金銭的な部分などで学校に通うことを諦めてしまう人が増えているのです。 1980年代に薬剤師だった人が薬局を開局し、40年経った今、オーナーは引退を検討するようになっている時期です。それでも人材が不足しているため、経営を続けなくてはならないという人や、薬局を閉局しようと考えている人も少なからずいます。 このように、個人の調剤薬局では苦しい状況が続いている中で、M&Aや事業承継が増加傾向になってきています。■調剤薬局M&A・事業承継が増加傾向にある理由 調剤薬局M&A・事業承継が増加傾向にある理由は、譲渡したい調剤薬局側と譲受したい企業側の両者にあります。どのような理由があるのか、それぞれご紹介していきましょう。 ・譲渡したい調剤薬局側の理由 譲渡したい調剤薬局側の理由として、オーナーの多くがこのまま経営を続けていくのは難しいと考えていることが挙げられます。上記でもご紹介したように、診療報酬の改定や薬価差益の縮小による減益は個人経営の調剤薬局にとって非常に大きな痛手です。しかも、薬剤師の人材不足ということもあり、経営を続けていくのは困難だと考えているオーナーが多くなっているのです。 基本的に薬剤師1人につき1日40枚の処方箋枚数と決められています。薬価差益が縮小してしまったため、調剤薬局の売上を上げるためには薬剤師を多く雇い入れ、1日の処方箋枚数を増やさなくてはいけません。しかし、薬剤師は人材不足で確保することが難しいため、多くのオーナーが頭を悩ませています。 また、この理由に加えてオーナーとしては自ら開局した調剤薬局を閉局させたくないと考えていることも、M&A・事業承継が増えている理由につながります。自らの想いで閉局させたくないと考えるのはもちろんですが、地方だと調剤薬局数が少なく、閉局してしまうと近隣住民が困ってしまうため、なかなか閉局できないという場合もあります。 他にも、提携先の病院もまた高齢の医師が頑張っているのに、薬局側が勝手に閉鎖できないと感じていたり、閉局するにも莫大なコストが掛かってしまうため、閉局したくてもできない状況に追い込まれていたり、様々な理由から調剤薬局M&A・事業承継が選ばれています。 ・譲受したい企業側の理由 調剤薬局を譲受したい企業の多くは、大手薬局チェーン企業や中堅の薬局チェーン企業です。なぜこれらの企業は個人経営の調剤薬局を譲受したいと考えているのでしょうか? まず1つ目の理由が、新しい地域への効率的な開拓が行えるという点です。薬局チェーンは全国出店を視野に開局を検討するものですが、新しい地域に出店するとなると非常に手間と時間、コストが掛かってしまいます。 例えば、出店する前にはまず地域のリサーチを行います。周辺にどれくらいの調剤薬局があるのか、病院はあるか、利用する地元ユーザーの年齢層はどれくらいなのか、どのような薬を必要としているのかなど、細かな調査と分析が必要です。 さらに出店するために土地を買い取ってから薬局を建て、薬剤師を募集するために採用活動も行う必要があります。新しい地域に調剤薬局を1軒建てるだけでも半年〜1年は時間が掛かってしまうのです。 その点、M&Aで薬局譲受となれば既に建てられている薬局を使えるので、簡単なリフォームだけで済みます。人材も既に働いている人に継続して働いてもらえる環境にすれば良いので、採用活動に時間とコストが掛かりません。調剤薬局M&Aなら譲受企業にとって多くの時間とコストを節約でき、新たな地域での出店が可能となるのです。 2つ目の理由は、異業種から参入しやすいという点です。近年は調剤薬局を専門に扱っている企業だけではなく、異業種からの参入も増えています。 異業種の企業が参入するとなると、通常であればノウハウがないままの参入となってしまうため、多くの問題が山積しやすいのですが、M&Aによって調剤薬局を買収すればノウハウはもちろん、しっかりと初月から収益を出すことも可能です。M&Aは異業種の企業が調剤薬局業界に参入しやすくなる手段となります。 調剤薬局M&Aや事業承継が増加傾向にある理由をご紹介してきましたが、譲渡したい調剤薬局側も譲受したい企業側もメリットがあるからこそ、増加傾向になっていると考えられます。■調剤薬局が今後生き残っていくためには? 厳しい経営状況の中でも調剤薬局が生き残っていくための戦略をご紹介していきましょう。 ・後継者を育てる 調剤薬局については経営者が高齢なことも多く、数少ない従業員とともに経営をしている場合もあるため、事業承継が後回しになっていることも多いです。後継者がいないために事業承継ができない薬局もあるでしょう。 今後も地域の発展のためにあり続ける調剤薬局を目指すためにも後継者を育てていくことが大切です。親族や従業員で後継者に相応しい人材がいなければ、M&Aで第三者に事業を承継することができます。 後継者の育成には時間が掛かるため、調剤薬局経営者として早い段階で活躍してもらうためにも、後継者探しは後回しにせず早めに探すようにしましょう。 ・地域性を持たせた調剤薬局になる 2016年に「全調剤薬局のかかりつけ薬局化推進」を国が掲げました。地域に根ざした薬局を求めるためのもので、調剤薬局に訪れる患者さんが健康に暮らすために様々なサポートをしてほしいと国が考えているのです。 大手調剤薬局チェーンは地域との関係性が薄い傾向があります。国が考えているような地域に根ざした薬局になるためには時間を要するでしょう。 しかし、小規模な調剤薬局はその地域に長年根差して経営を続けています。周辺地域で暮らすお年寄りやその子供、孫が訪れていることも多く、家族でお世話になっている患者さんも多いでしょう。 こうしたサービスは国が求めている薬局のイメージと合致しています。現時点では人材不足や資金が足りないことでサポートができていなくても、M&Aを行うことで課題を解決することができるでしょう。 ・M&Aは適切なタイミングで行う M&Aはタイミングが重要です。調剤薬局は景気の影響を受けにくいと言われていますが、国の制度によっては大きな影響を受ける可能性があります。 消費税の増加によって負担が増えたことや調剤報酬の減少、かかりつけ薬局に経営体制を変えることなど、国の政策によって調剤薬局業界に変化が巻き起こっています。中堅調剤薬局グループでは、M&Aを行うことで買収を増やしていき、少しずつ規模を拡大しています。 しかし、小規模の調剤薬局では規模を拡大できずに経営体制を整えられず、将来に大きな不安を抱えている経営者が増えてきています。その不安によって廃業を考える調剤薬局も増え問題となっているのです。 今後の予想としては、現在5万件ある調剤薬局のうち、2万件以上が廃業、または譲渡することが予測されています。現段階では買収需要が高い状況ですが、今後調剤薬局の再編が進んでいくことで譲渡需要が高まる可能性もあるでしょう。 こうした考えから、M&Aで企業の傘下に入ることや引退をするにしても、早い段階からM&Aについて意識し、考えることが重要であることが分かるでしょう。■調剤薬局M&A・事業承継を成功させるポイント M&Aを行うのであれば成功させたいと誰もが思うはずです。そこで、調剤薬局M&A・事業承継を成功させるポイントを解説していきましょう。 ・売り手側の成功のためのポイント 調剤薬局の多くが小規模な個人経営の調剤薬局なため、供給が過多になりやすい業界と言えます。制度改正によって調剤薬局の利益が縮小されることで、売却価格にも影響を与えてしまうでしょう。 調剤薬局業界だけではなく、その他の業界でも利益の少ない会社は売却価格が下落します。無形価値などによっては価値の上昇に影響を与えますが、収益が安定していれば売却価格には影響がないため、不安なくM&Aを進めることができます。 収益の縮小が問題となっている調剤薬局では、価値の減少を進めないためにも、売却条件が悪化する前に準備を進めていくことが大切です。 ・買い手側の成功のためのポイント 買い手側がM&Aを進めるにあたり、最初に確認することは「薬剤師」についてです。国が求めている地域密着の調剤薬局を目指すためにも、薬剤師の確保が不可欠です。 人材不足が原因でM&Aを行う買い手側も多いので、売り手側の薬剤師の情報を収集することから始めていきましょう。集める情報は、薬剤師の人数や年齢などです。少ない給与で薬剤師を雇っている場合は買い手側にもメリットがあるので給与を確認することも忘れないようにしましょう。 薬剤師の数が少ない場合には、新しい人材を確保することになります。募集する際の人件費について計画する必要性も出てくるでしょう。 また、処方元が地域の個人病院やクリニックの門前薬局を買収する場合、買収前に病院の理解を得ることも重要となります。説明がないまま買収すれば、理解を得られず想定していた売上を達成できない可能性もあるのです。患者数の減少を防ぐためにも、理解が得られるよう交渉や説明を行いましょう。■調剤薬局M&A・事業承継のサポートを担うアテック 調剤薬局のM&Aや事業承継は増えていくことが予想されています。スムーズに進めていくためにも、専門家のアドバイスが欠かせないでしょう。 サポートする仲介業者は複数ありますが、信頼が重要だと感じるのであれば薬局経営総合支援の「アテック」がおすすめです。アテックは、日本で初めて薬局M&Aを専門に行うために設立した会社になります。1991年からこれまでに多くの実績があり不安も取り除けるでしょう。 アテックの役員の中には調剤薬局の経営経験者や薬剤師も在籍しています。調剤薬局が抱えている状況を熟知した人材がいることで、売り手側の経営者や従業員、患者さんまで、M&Aをして良かったと思えるような事業承継をしていくことに力を注いでくれます。 また、アテックでは薬局を譲渡したいと考えている経営者と独立を考えている薬剤師、買収を考えている経営者をマッチングさせるためのサイト、「ファーママーケット」も運営しています。希望通りのM&Aができるよう売却希望や購入希望の情報を手軽に確認できます。M&Aを考える全ての人に役立つサイトとなっているでしょう。 調剤薬局業界は国の制度の改正によって状況が変化しています。変化に対応するためにも、M&Aを行う調剤薬局が増えていることは事実です。M&Aを成功させるためにも対策方法を確認し、サポートを行ってくれるアテックやファーママーケットを活用することでM&Aを成功させていきましょう。