近年、雇われ薬剤師という立場から独立を考える薬剤師が増えています。 勤務していた方が安定しているようなイメージを持たれがちですが、独立をする薬剤師が増えているということは、それなりの理由があると考えられます。
今回は、独立を考える薬剤師が増えている背景について、調剤薬局の現状や独立を促す要因、薬剤師が独立をするメリットなどについてご紹介しましょう。 これから独立を考えている人や独立に向けて準備を進めている人などは、ぜひ目を通してみてください。
■調剤薬局の現状
調剤薬局は現在、減少の一途をたどっています。まずは、なぜ調剤薬局が減少しているのか、その現状からみていくことにしましょう。・調剤薬局の目の前に立ちはだかっている壁
調剤薬局の目の前には、収益を得るための環境悪化や患者数の減少、後継者不足、新規出店が難しいといった食べが立ちはだかっています。 このような壁を乗り越えることができないと閉業に追いやられてしまうのです。 行政も薬局数を減少させるという方向性に動いているため、これから先はさらにその数を減らすことになるでしょう。
それに対して薬剤師の数は増え続けています。 現在でも飽和状態になりつつありますが、さらに薬剤師が過剰供給される時代はすぐそこまで迫っていると言っても過言ではありません。 そんな時代に突入した場合、薬剤師という資格を持っているだけではなく、一人ひとりの質が重要視されるようになり、給与水準も下がっていくのではないかと考えられます。
・大手チェーンに就職=安心ではない
薬剤師に限ったことではありませんが、大で企業へ就職できれば将来は安泰だと考えられています。 確かに中小企業や例さ企業と比べてみるとリスクは低いでしょうが、必ずしも安心とは言い切れません。 調剤報酬改定による様々な規制は大手チェーン薬局に矛先が向いているからです。
また大手チェーン薬局であっても、働いている薬剤師には自由度がなく、キャリアにも限界があります。 そのため、将来的にキャリアアップをしたいと考えている薬剤師にとってはあまり魅力的な環境とは言えません。
■薬局減少が独立を促す要因だった!
調剤薬局の経営が厳しくなっている中で、独立を考える薬剤師が増えています。 続いては、その理由についてさらに深堀していきましょう。1つ目の理由は、薬剤師として活躍している人は女性が多いということです。 女性は、仕事だけではなく子育てや家事と両立させながら、安定した仕事を続けたいと考えている傾向が強いです。 勤務薬剤師として働き続けることに不安を感じている場合、リスクが低くなりつつある調剤薬局のM&Aを行い、独立しようと考える人は多くなっています。
2つ目の理由は、スキルアップのために頑張るなら自分がメインで動ける環境にしたいと考える人が増えてきたことです。 雇われ薬剤師の場合は、いくら努力してスキルアップをしても給料に反映されることは基本的にありません。 それに対して独立開業すると、努力をした分だけ収入にもつながるので独立をしたいと考えている薬剤師が増えているとも言えるでしょう。
薬剤師が過剰供給される時代が訪れれば、薬剤師の免許を持っていれば良いと見なされるようになり、給与水準が低下していく可能性があることも独立を促す要因だと考えられます。 給与水準が低下してしまえば仕事に対するモチベーションも下がってしまうため、いっそのこと独立してしまおうと考えるのです。
薬剤師が過剰供給される頃には、政府の政策によって薬局の数自体が少なくなっている可能性もあります。 つまり、雇われ薬剤師として働くこと自体が容易ではなくなるということです。 それも薬剤師が将来のことを考えて独立する要因だと言えます。
■薬剤師の独立…どんなメリットがある?
薬剤師が独立することによって、様々なメリットを感じられるようになります。 続いては、どのようなメリットがあるのかみていきましょう。・将来手に入るお金を可視化できる
独立し、レセプトや窓口の入出金を可視化できるようになると、自分の給料はどのくらいなのか、退職金積み立てにはどのくらい回すべきなのかといったことを明確にできます。 独立をしたばかりの頃は1人で様々な仕事をやらなければいけないため、疲れがたまってしまうかもしれません。 しかし、将来の不安を払しょくすることができれば、今が頑張り時だと思って踏ん張れるはずです。
また、子どもの学資保険に回せる金額や住宅ローン、マイカーローンの返済などの目途も立てやすくなるでしょう。 そうすることで、旅行や外食などに使う娯楽費をどのくらい使えるかということも必然的に見えてきます。 自分自身で得た営業や新規の処方獲得などをどのくらい還元するか、内部留保に回すかという大切なポイントも自分で決めやすくなっていきます。
・消費が活発になる
自分自身が得る給料や将来の退職金が分からないと不安が募り、消費が縮小してしまいます。 お金は天下の回り物です。 頑張ってお金を得たら、それを消費活動に使えるようになれます。
経営に関しては全て自己責任になってしまいますが、雇われ薬剤師だったときには得られなかったような大きな報酬を得るチャンスでもあります。 その報酬を消費に使えば、日本経済を助けることになり、将来的に自分へ還ってくるでしょう。
・大手チェーンに参入するチャンス
日本全国にはおよそ5万9,000店舗の調剤薬局があります。 その中で大手チェーンが占めているシェアはわずか1割ほどです。そして、2割は小規模チェーン、7割は個人経営の調剤薬局となっています。
つまり、大手チェーンに参入するのは今がチャンスだと言えます。 大手チェーンは店舗数を増やすために独立を考えている薬剤師を募っているケースも多いです。 スタートしたばかりの頃は資金繰りなどで辛いと感じることがあるかもしれませんが、参入してしまえば安定した運営を継続しやすくなります。
・個人が大手チェーンの不採算店舗を買収すれば高収益に
門前薬局やマンツーマン薬局は、特定の医療機関からの処方箋の割合が高くなっています。 そのような調剤薬局は、診療報酬の改定で採算が取れない状態に陥っているのです。
2016年には集中率が95%を超えた場合に調剤基本料を下げられるようになり、2018年の改定では集中率が85%を超えた場合になりました。 今後はさらに下がっていくことが予想されます。場合によっては集中率が50%まで下がる可能性も捨てきれません。
現在の診療報酬では、調剤基本料が41点(1店当たり10円換算)、在宅訪問などの条件を満たしていれば地域支援体制加算が35点加算され、76点(760円)が調剤薬局の報酬になります。 しかし、集中率が85%を超える大手チェーンに属していると調剤基本料が15点(150円)だけになってしまうのです。 処方箋1枚当たりの報酬が610円も減ってしまうのは大きな痛手です。
しかしこれは中堅もしくは大手チェーンにしか適用されていないため、個人で大手チェーンの不採算店舗を買収することができれば、高収益店舗を手に入れられるということになります。 1人で切り盛りしなければいけないので負担は大きくなってしまいますが、処方箋の枚数は予測できるので経営のリスクは低いでしょう。
■他にも魅力がたくさん!
ここまでも薬剤師が独立することで得られるメリットについてみてきました。 この他にも様々なメリットがあるので、さらにメリットを深堀してみていきましょう。・理想的な薬剤師を目指せる
薬剤師の資格を取得した時に、どのような薬剤師になりたいか、どんな働き方をしたいのか、社会に貢献するためにはどうすればいいのかを考え、就職先を決めたはずです。 働き始めてからもそのようなことを常に考えているのではないでしょうか。 しかし、雇われ薬剤師だとトップの方針に従わなければいけないため、自分が理想とする薬剤師になることができない可能性が高くなってしまいます。
それに対して独立すれば、自分がやりたいように実行へと移していけるのです。 特に、地域医療に貢献したいと考えている人であれば、独立したことでより輝けるでしょう。
・会社の都合に左右されずに済む
雇われ薬剤師だと、会社に都合に左右されて転勤などをしなければいけない可能性があります。 過去には大手製薬会社が大規模なリストラをしたという事例もあるため、調剤薬局でもリストラをされてしまうリスクはないとは言い切れません。 そのため、入社したからといってそれが安心につながるとは言えないでしょう。
しかし独立をすれば、会社の都合に左右されて転勤をしたり、退職を余儀なくされたりといったリスクを回避できます。 自分らしく、周りに振り回されることなく仕事をしたいという人にとっても独立は魅力的だということになります。
・やりがいを感じられる
雇われ薬剤師でもやりがいを感じることはできますが、独立することでさらに大きなやりがいを感じられるようになります。 雇われている状態だとやりたいことや考えていることを実行できない可能性も高いため、将来的にスキルアップやキャリアアップを目指している人にとって足かせになってしまう場合があります。
独立をすることによって様々なリスクも伴いますが、実力を試したり、さらなるスキルアップを目指すためには絶好の環境が手に入るのです。 そのため、より大きなやりがいを感じられるようになると言えます。
・定年がない
雇われ薬剤師の場合は、定年退職を迎える日がやってきます。 しかし、独立すれば定年という概念がないので、一般的に定年といわれる年齢を過ぎても働き続けることができます。
現在は、人生100年時代と言われていて、老後に大きな不安を抱えている人も少なくありません。 そのような状況下において、定年がなく元気な間はずっと働けるというメリットはかなり大きいと感じる人が多いでしょう。
・M&Aなら従業員を引き継げる
独立開業する際に、M&Aをした場合は従業員を引き継ぐことができます。 事務員や薬剤師などその店舗に慣れている人材を引き継げることも大きなメリットです。 自分だけで回すのが難しくなった時に採用活動を行うことも可能ですが、すぐに理想的な人材が集まるとは限らないので、M&Aを行って従業員を引き継げるというメリットは独立を希望する薬剤師にとって魅力的だと感じるでしょう。
・働き方を柔軟に変えられる
雇われ薬剤師は決められた勤務時間や勤務日に出勤して仕事をします。 そのような働き方の方があっている人もいますが、中にはもっと自由に働きたいという人もいるでしょう。 そのような人は、独立をした方が自分らしく働ける可能性が高まります。
なぜかというと、独立をすることで働き方を柔軟に変えられるからです。 個人経営の調剤薬局は、自分以外の薬剤師を雇わないという選択肢は選ぶことができ、利益を全て自分のものにできます。 また、仕事以外にやりたいことがある場合は薬剤師を雇って自分自身の負担を軽減できます。
このように柔軟な対応ができるのは、独立したからこそ得られるメリットだと言えるでしょう。
■M&Aならアテックとファーママーケットが便利
薬剤師が独立を考えた時に、M&Aを行おうとするケースが多く見られます。 しかし、M&Aは専門的な知識が無ければ成功させることが難しいため、躊躇ってしまう人もいます。 そんな時にぜひ相談してほしいのがアテックです。アテックは、1991年に日本初の調剤薬局M&A専門会社として設立されました。 調剤薬局業界は急速に変化しているため、マネジメントには技術が必要です。 これまでの経営手法では解決できないような問題もたくさん見つかっています。
そのような問題に立ち向かっている調剤薬局の経営者や独立を考えている薬剤師をサポートしているのがアテックなのです。 アテックが運営しているファーママーケットは、調剤薬局を譲渡したい人と買収したい人をつなぐマッチングサイトです。 これまでに多くのマッチングを成功させ、ハッピーリタイアの後押しをしてきました。
ファーママーケットでは、売却希望や購入希望の案件を確認することもできます。 実際にどのような案件があるのか確認してから登録を検討してみても良いでしょう。
もしも、独立を検討していてどうすればいいか迷っているのであれば、アテックに相談だけしてみるのもおすすめです。 これまでに多くの実績を残しているため、状況に応じた適切なアドバイスをしてくれるでしょう。 そして、M&Aをするかどうかを決めることができれば、自分でも納得できる結果を手に入れられます。