調剤薬局のM&Aは、企業間で行われるもので比較的規模が大きいと思っている人は少なくないでしょう。確かに、企業間で行われるケースが多いのは確かなので、その認識は間違えていません。しかし最近は、スモールM&Aも活発になっています。

今回は、調剤薬局の現状や抱えている問題について再確認し、調剤薬局のM&Aが活発になっている理由についてみていきます。さらに、調剤薬局のM&Aを行うメリットや個人間での調剤薬局買収についても解説していきます。M&Aを検討している人は、ぜひ目を通してみてください。

■調剤薬局の現状はどうなっているのか?

調剤薬局の数は、2018年度末で日本全国に5万9,613施設となっています。コンビニエンスストアも全国各地に点在していますが、その数は5万8,340施設となっているため、調剤薬局よりは少なくなっています。まずは、非常に数が増えている調剤薬局の現状からみていきましょう。

・調剤薬局市場の動向について

調剤薬局は、コンビニエンスストアよりも多くなっていますが、実は2016年以降は減少しているのです。また、大手調剤チェーンや大手のドラッグストアなどの売上は全体のおよそ2.8%となっていて、上位10社を合わせてもその売上は全体の20%以下となっています。つまり、調剤薬局市場は個人が経営する薬局が大半の比率を占めている低寡占市場だと言えるでしょう。

現在は低寡占市場となっていますが、今後は今よりもM&Aが活発に行われると予想されています。そうなった場合、大手企業が運営する経営基盤がしっかりした調剤薬局と経営が上手くいかない小規模調剤薬局の二極化がさらに加速すると考えられます。そのような事態が予想できるのは、薬事法の改定やドラッグストアの大型化などが起因しているのです。

・システムに変化が生まれる

厚生労働省は、地域医療を強化するという目的でかかりつけ薬剤師や薬局の増加を推進するという方向で動いています。その動きが調剤薬局業界の再編に拍車をかけているのです。

これまでは、病院やクリニックに併設している門前薬局で薬を受け取るという仕組みが一般的でした。しかし現在は、かかりつけ薬局で薬を受け取るという仕組みへの変更が勧められています。それによって、門前薬局だからという理由だけで利益を得られない調剤薬局が増えてきました。

今後は、さらにかかりつけ薬局で薬を受け取るという仕組みが浸透していくと予想できるので、より大きく変化していくことでしょう。そのため、調剤薬局はその流れに乗れるようにシステムを変化させなければいけないという風潮はより強くなると考察できます。

■調剤薬局が抱えている問題

多くの調剤薬局は、薬剤師不足という問題に悩まされています。調剤薬局にとって大きな問題である薬剤師不足はなぜ起こってしまうのでしょうか?また、薬剤師不足によって調剤薬局が困ってしまうのはなぜなのでしょうか?

・薬学部が6年制になった

薬剤師不足の要因として、薬学部が6年制になったということが挙げられます。2006年から薬剤師を養成するための教育が4年制から6年制へと延長されたのです。

薬剤師を目指して勉強している学生は、6年間も学校で学んだのだから大手企業の安定した調剤薬局で働きたいと考えるようになります。それによって、大手の調剤薬局には人材が潤沢に集まりますが、中小の調剤薬局には人材がなかなか集まらないという状況になっています。

・過重労働につながる

薬剤師が不足してしまうと、現役で働いている薬剤師の負担が大きくなってしまいます。それによって、過重労働へとつながってしまうのです。しかし、薬剤師が1日でさばける処方箋の枚数は40枚までと決められているので、それ以上の処方を行いたいのであれば2人以上の薬剤師を雇用しなければいけません。

それだけではなく、調剤薬局で処方されている薬の多くは薬剤師がいなければ処方できないのです。万が一、薬剤師が休んだ場合、シフトに穴が開いてしまうので処方ができなくなってしまいます。そのような調剤薬局からは顧客が離れてしまいうため、薬剤師がなかなか休暇を取れないという負のスパイラルも生まれてしまいます。

地方にある個人の調剤薬局においては、地域密着型のサービスを提供しているところが多いです。調剤薬局の数も少ないため頼りにしている顧客がたくさんいるというケースも多く、薬剤師が高齢になっても引退できないという状況になっている調剤薬局も多く見られます。

■調剤薬局のM&Aが活発になっている理由

制度の改正や薬剤師の高齢化、人手不足などによって、調剤薬局の廃業が増えています。そんな中で、M&Aはさらに活発になると予想されるのです。続いては、調剤薬局のM&Aが行われる目的についてみていきましょう。

・薬剤師を確保するため

調剤薬局のM&Aを行うことによって、薬剤師の確保が可能になります。特に、地域に密着した調剤薬局は、その地域になくてはならない存在となっているため、事業承継を希望する高齢薬剤師の数も増えているのです。

2018年に厚生労働省が行った調査によると、一般的に定年を迎える60歳~69歳という年齢でも働き続けている薬剤師は全国に4万人以上いるということが分かりました。さらに、70歳以上の薬剤師も1万6,000人以上となっていることから、世代交代をしなければいけない時期に調剤薬局業界が突入していると言えます。世代交代の時期に突入しているため、営業権も高くつくので買い手のニーズも高まっていて、M&Aによる事業承継に拍車がかかると考えられます。

・かかりつけ薬局を買収するメリットが大きいため

厚生労働省の方針によってかかりつけ薬局が推進され、門前薬局やグループ薬局の調剤報酬は引き下げられてしまいます。それでは利益を得にくくなってしまうため、かかりつけ薬局を買収するメリットが大きいと考える人が増えてきたのも、調剤薬局のM&Aが活発化する要因だと考えられるでしょう。

薬局の生き残りに向けて、かかりつけ薬剤師を導入したり、かかりつけ薬局へ移行したりといった動きがみられるようになってきました。個人経営の規模が小さい調剤薬局は、そのような環境の中で買収の対象になりやすいと言えます。また、大手の調剤薬局やドラッグストアの場合は、地域のヘルスケアに関するネットワークを構築することを視野に入れたM&Aを行うケースが増えているのも様々な制度の変化を見越したものだと言えるでしょう。

■調剤薬局のM&Aを行うメリット

調剤薬局のM&Aが活発に行われているのは、買収された側と買収した側の双方にメリットがあるからです。では、具体的にどのようなメリットが得られるのかみていきましょう。

【買収された側のメリット】

・後継者問題に悩まずに済む

調剤薬局は現在飽和状態になっていますが、エリアによっては周辺にライバルの薬局がないというところもあります。そのような調剤薬局が万が一廃業してしまうと、そのエリアに暮らしている人に大きな迷惑をかけることになりかねないでしょう。だからといって、簡単に後継者を中小の調剤薬局オーナーが見つけられるというわけではありません。

そのような問題は、M&Aを行うことで解決できます。後継者を見つけられれば医療機関との関係も維持でき、利用していた人が困ってしまうこともありません。さらに、従業員を雇っている場合は雇用関係も継続できるため、職を失う人が出るという心配もしなくて済みます。

さらに、オーナーは創業者利益を得られます。調剤薬局の譲渡価格は、営業利益のおよそ3年分が相場となっていますが、立地条件が良い調剤薬局だと5年分や7年分の営業利益を得られるケースもあるのです。これは、オーナーにとって大きなメリットです。

・薬剤師の確保が容易になる

薬剤師の採用が難しいと感じていた中小の調剤薬局の場合は、薬剤師の確保が容易になるというメリットを実感できるでしょう。大手企業に買収されたのであれば、より人材を確保しやすくなります。ブランド力が高まることが採用のしやすさにつながるだけではなく、M&A前から在籍している薬剤師の仕事に対するモチベーションも上がるというメリットも享受できます。

【買収した側のメリット】

・事業規模やエリアの拡大を実現できる

調剤薬局のM&Aを行うことによって、買収した側は事業規模やエリアの拡大を実現できます。個人で調剤薬局を運営している人がさらにエリアを拡大する目的で買収することもありますし、企業が買収することもあります。どちらの場合であっても、買収した側は今までは参入できていなかあったエリアへの参入ができ、さらなる利益アップを目指せるでしょう。

・立ち上げのリスクを減らせる

新たに調剤薬局を立ち上げるのは、少なからずリスクも伴います。新しく調剤薬局をオープンするためには、建物や調剤に使う器具を用意するために大きな設備投資が必要になります。また、オープンしても必ず成功するとは限らないため、失敗してしまうと大きな負債を抱えることになるでしょう。

それは運営元に取って大きなデメリットになってしまいますが、調剤薬局のM&Aであればそのようなリスクを回避できます。設備投資も最低限で済みますし、固定の顧客も存在しているからです。

■個人間での調剤薬局買収もできる

近年、企業による買収ではなく、個人間での調剤薬局買収も活発になっています。いわゆるスモールM&Aと呼ばれている方法ですが、なぜ活発になっているのでしょうか?その理由と引き継ぎについて、次はみていくことにしましょう。

・人柄重視のM&Aができる

中小の調剤薬局、特に個人で経営している調剤薬局は、地域密着型のサービスを提供しているケースが多いです。そのような調剤薬局の場合、後継者にも同じような視点で経営をした貰いたいと思うものです。

企業が買収先になると安定した経営は約束されますが、今までと同じように地域密着型のサービスを継続できるという保証はありません。そのため、人柄重視のM&Aをしたいと考えている調剤薬局は個人間での調剤薬局買収を検討します。

若い薬剤師の中には、地域に密着した調剤薬局を経営したいと考えている人もいます。そのような人に買収してもられば、買収前と同じようなスタンスで経営を継続できる可能性が高まります。

・個人間で調剤薬局買収をした場合の契約はどうなるのか

個人間で調剤薬局買収をした場合、どのように契約が引き継がれるか気になるという人もいるでしょう。契約に関しては、買収する側が法人か、個人事業主かによって異なります。

法人だった場合は、必要と考えられる契約を全て引き継げます。しかし個人事業主だった場合は、引き継ぎ契約ができない部分が生じる可能性があるのです。なぜかというと、法人は社会的な信用度が高いとみなされ、個人事業主は法人よりも信用度が劣ると考えられているからです。

個人事業主は、契約をする際に保証人を求められることもありますし、場合によっては引き継ぎの契約ができない可能性もあります。それを踏まえた上で買収を検討する必要があるでしょう。

■調剤薬局買収を個人でしたいならアテックに相談を

調剤薬局の買収を個人で行おうとする場合、全て個人でやろうとするとハードルが高くなってしまいます。しかし、調剤薬局M&Aのサポートを行っている企業への依頼をすることでスムーズにM&Aを進められます。最後に、調剤薬局M&Aのサポートを手掛けるおすすめ企業、アテックについてご紹介します。

・アテックとは?

アテックは、1991年に創業して以来、調剤薬局のM&A仲介事業を行っている会社です。設立してから多くの調剤薬局M&Aをサポートしてきました。事業承継を行いたいと考えているオーナーとやる気に溢れている経営者候補のマッチングを実現しています。

「21世紀の薬局を元気にする!」という理念を実現するために、日々奮闘しています。そのため、事業の規模を拡大したいだけの依頼、これまでの現場の状況を無視した依頼などは断っているのです。そのため、確実に未来を掴み取れる案件を提案していると言えます。

・調剤薬局M&Aをサポートするマッチングサイトを運営

アテックは、調剤薬局M&Aをサポートするマッチングサイト・ファーママーケットを運営しています。ファーママーケットでは、調剤薬局を譲渡したいと考えているオーナーと独立を検討している薬剤師もしくは薬局の買収を検討している経営者のマッチングを行っているため、個人での買収もサポートしてもらえます。

調剤薬局のM&Aは、適切な知識を持っていないと失敗してしまうリスクもゼロではありません。特に、個人間の買収ではそのリスクがより大きくなってしまいます。そのリスクを少しでも軽減するためにも、アテックへ相談したり、ファーママーケットを利用したりすることを検討してみてください。
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