しかし、現在オンライン服薬指導はそこまで普及していません。中には、概要などを把握できていないという人も多いでしょう。そこで今回は、オンライン服薬指導の概要や条件、流れ、費用、メリット、課題などについて解説していきます。
目次
■オンライン服薬指導とは?
はじめに、オンライン服薬指導とはどのようなものか、概要から解説していきます。オンライン服薬指導は、薬剤師がビデオ通話できるアプリや電話などを使い、服薬に関する指導を行うというものです。大きく分けると、オンライン診療による処方箋に基づいた遠隔服薬指導と在宅医療による処方箋に基づく遠隔服薬指導の2つに分けられます。
従来の服薬指導は、対面が原則となっていました。しかし、後期高齢者の増加や過疎化、ライフスタイルの多様化に対応するために、2019年12月から医薬品医療機器等法が改正、2020年9月に改正法が施行され、オンライン服薬指導がスタートしたのです。オンライン服薬指導は、それ以前にも離党やへき地の一部(国家戦略特別区)の調剤薬局では実験的に行われていました。
また最近は、新型コロナウイルス感染症の感染対策である0410対応として特例的に行われています。オンライン診療で処方された処方箋が対象となっているだけでなく、時季的な制限も設けられています。
改正法の施行により、国家戦略特別区にとどまらず全国どこでもオンライン服薬指導が可能となりました。
■オンライン服薬指導を行うための条件
オンライン服薬指導を行うためには条件が設けられています。また、導入するのであれば、その流れを知っておく必要があります。ここでは、具体的にどのような条件があるのか、どのような流れで導入されるのかなどを解説していきましょう。・オンライン診療の場合
オンライン診療を行ってオンライン服薬指導を行う場合は、オンライン診療で処方箋が処方されている・原則として3ヶ月以内に対面服薬指導を行っている・頻度や緊急時の対応などの計画書を作ってそれに基づいた指導を行う・お薬手帳を使って服用歴や服用している薬を確認するなど、様々な条件が定められています。
・在宅診療の場合
在宅診療によって処方箋に基づいてオンライン服薬指導を行う場合は、在宅訪問診療で処方箋が処方されている・在宅患者訪問薬剤管理指導料の算定実績が1ヶ月に1度ある・調剤施設が在宅患者服薬指導に係る届出が済んでいてオンライン診療の適切な実施に関する指針に沿った情報セキュリティ対策ができていることなどが条件です。
■オンライン服薬指導の流れ
オンライン服薬指導は、患者様からの依頼があってスタートするというケースが多いです。具体的に流れをみていきましょう。①相談を受けて計画書を作成する
まず、患者様からオンライン服薬指導に関する相談を受け、計画書を作成します。対応するのは基本的に同じ薬剤師を担当に指定しなければいけません。しかし相談を受けた時に不在になってしまうことも考えられるため、対面指導をした経験がある薬剤師であれば3名まで指定できます。
②患者様が病院へ相談する
オンライン服薬指導をスタートするためには、オンライン診療を受けて処方箋を発行してもらわなければなりません。まずは、通院している病院がオンラインに対応しているかどうか確認する必要があります。オンラインに対応している場合は、指定した調剤薬局に処方箋を送ってもらわなければならないため、どの調剤薬局なのかを病院に伝えてもらいましょう。
③診察と服薬指導を受ける
オンライン診療は、自宅のようにプライバシーが確保された空間で行われます。診察が終わったら、アプリなどを使って服薬指導の予約をします。その後、予約された日時に調剤薬局の担当者が指導を行う流れです。
④薬を受け取る
オンライン服薬指導が終わったら、計画書に記載された方法で薬を送付します。支払いは、アプリを通じてクレジットカードで行うのが一般的です。
■導入する際にどのくらいの費用がかかるのか
オンライン服薬指導による服薬指導を受ける際、患者様にも費用負担があります。経営している調剤薬局での導入を検討しているなら、患者様からの理解を得ることも重要です。では、どのような費用を患者様が負担するか解説していきます。・薬局の会計
オンラインでも対面でも薬価は変わりません。しかし、1回あたりの会計では従来よりも少し安くなる場合もあります。ぜんそくなどの治療に使う吸入薬であれば対面なら練習用を提供することもありますが、オンラインでは手元にある薬を使わなければならないためできません。
細かい部分まで指導ができない、確認の手間がかからないなどの理由から、費用が差し引かれることがあります。しかし、アレルギーの薬や高血圧などの飲み薬、塗り薬に関しては、窓口における負担と差異がないというケースが多いです。
・送料
オンライン服薬指導の場合は、薬を送る必要があります。その際の送料は、基本的に患者様が負担することになっています。詳細は計画書に記載されているため、あらかじめ患者様としっかり相談しておくようにしましょう。
・通信費
ビデオ通話を使うので、通信費もかかります。料金プランによっては、データ容量が少ない場合もあり、通信費が追加されてしまうこともあるでしょう。通信費に関する理解も得ておくとトラブルを回避しやすくなります。
・アプリにかかる料金
服薬指導アプリは基本的に料金がかかりません。しかしアプリによっては、オンライン診療とオンライン服薬指導で別のアプリを使わなければならない場合もあります。別々のアプリを使用する場合、オンライン診療でアプリの利用料がかかってしまうこともあるので注意が必要です。
■オンライン服薬指導のメリットについて
オンライン服薬指導を導入することによって、調剤薬局も患者様も様々なメリットを享受できます。具体的にどのようなメリットがあるのか解説していきます。・患者様の時間的な負担を軽減できる
これまでの服薬指導は、調剤薬局まで患者様が足を運ばなければなりません。そして処方箋を提出し、対面指導を受けてから薬を受け取るという流れとなっていました。一方、オンライン服薬指導は、対面指導が必要ないので、調剤薬局まで足を運ばずに済みます。
離れた場所に住んでいたり、高齢者のみの世帯で移動するための足がなかったりする場合では、大きなメリットだと言えます。また、仕事や育児、介護などをしている場合でも負担を感じることなく、薬を処方してもらえるようになります。時間的な制約があり、なかなか病院へ行けないといった場合を回避する方法としても有効です。
・在宅診療を行う場合に薬剤師の負担軽減ができる
オンライン服薬指導は、通院が難しく在宅診療を受けざるを得ない患者様でも利用できます。従来は、往診を受けても薬の調剤や交付をするために対面指導を行う必要がありました。つまり、通院が難しい患者様に薬を処方するためには、薬剤師も訪問しなければならなかったのです。
それでは薬剤師の負担も大きくなってしまいます。しかし、オンライン服薬指導が可能になってからは、訪問で一軒一軒足を運ぶ負担を軽減できるようになりました。
・感染予防に役立つというメリットも
オンライン服薬指導は、自宅にいながら薬を処方できます。そのため、感染症の感染リスクも大幅に軽減できるというメリットあります。医療機関は感染リスクが高い場所なので、そのリスクを軽減できるのは患者様だけではなく、医療従事者にとっても大きなメリットになるでしょう。
・慢性疾患の重症化防止にも役立つ
慢性疾患を抱えている方は通院の負担が大きいと感じてしまうケースが多いです。その負担を軽減することにより、治療を中断してしまう患者数を減らせると考えられています。治療を適切に継続することができれば、重症化の防止にもつながるでしょう。
■抱えている課題についても把握しておこう
オンライン服薬指導によるメリットは大きいと考えられています。しかし、まだ始まったばかりの取り組みです。そのため、解決しなければならない課題も残されています。・薬の配送に関する課題
オンライン服薬指導を行い、薬の処方をしても大丈夫だと判断された場合、患者様の自宅まで薬を送付します。送付する方法は決められていませんが、安全性が確保でき、利便性が良い方法を選ぶ必要があるのです。調剤薬局の中には、配送ができるエリアをあらかじめ決めておき、薬局のスタッフが配送するケースや代引の宅配を利用するケースなどがあります。
どのような方法であっても、送付するためには費用がかかります。送付にかかる費用は、患者様に負担してもらう場合もありますが、調剤薬局が負担する場合も少なくありません。
ただし、新型コロナウイルス感染症対策の0410対応では、調剤薬局が配送などの費用を負担することが定められています。それを指標としてオンライン服薬指導を行う調剤薬局も多いと考えられるでしょう。
2021年3月の段階では、患者様に自己負担額に関する上限などは定められていません。また、都道府県にある薬剤師会によって解釈が異なっているため、全国で同じ対応ができているわけでもありません。今後は、配送にかかる費用をどのように取り扱っていくか検討する必要があります。
さらに、対面服薬指導とは違って薬を受け取るまでのタイムラグも生まれてしまいます。タイムラグについても考慮した上で処方しなければなりません。
患者様には、配送費用を負担しなければならないこと、処方から受け取りまでにタイムラグが生まれることなどに同意を得る必要があります。どのように説明するのか、また費用に関する課題もあります。
・IT関連の知識に関する課題
オンライン服薬指導は、患者様自身のITリテラシーが必要になります。ITリテラシーとは、通信機器を操作するための知識や通信環境に関する知識を意味します。高齢者世帯や普段からIT機器を使わない人の世帯では、オンライン服薬指導がうまく導入できない可能性も考えられます。
この課題は、従来型の対面服薬指導を行う際に通信機器を使った経験があるか、普段から使っているかなどをヒアリングすることで対策できます。ヒアリングを実施すれば、一人ひとりが持つITリテラシーに合わせた対応が可能です。
・電子処方箋や電子お薬手帳に関する課題
オンライン診療やオンライン服薬指導が普及していく中で、電子処方箋や電子お薬手帳への切り替えも必要になっていきます。処方箋は、オンラインでも対面でも紙媒体の発行に限られているので、医療機関や患者様から処方箋を送ってもらわなければなりません。それでは手間がかかってしまうため、厚生労働省では電子処方箋の運用に関する取り組みをスタートし、早ければ2022年は電子処方箋が解禁される予定になっています。
紙媒体の処方箋をやり取りする場合、タイムラグが大きくなるばかりか、処方箋を紛失してしまうリスクも高まります。こうしたトラブルを回避するためにも、電子処方箋の解禁は効果的なのです。
また、お薬手帳は紙媒体もありますが、アプリを使ったタイプも混在しています。対面服薬指導の場合は薬剤師がお薬手帳をチェックし、処方内容を記録します。しかし、オンライン服薬指導では紙媒体でもアプリでも、患者様自身が記録をしなければなりません。
患者様自身が記録すると、記入漏れがあったり、紛失してしまったりといった事態に陥る可能性が高いです。トラブルを未然に防ぐためには、電子お薬手帳を活用し、医師や薬剤師でもチェック・記録できるようにする必要があります。
オンライン服薬指導は、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、注目されるようになりました。導入する際は、患者様からの理解を得なければならないため、説明ができるような体制を整えなければいけません。双方にとってもメリットがあるため、導入を前向きに検討する価値はあるでしょう。