近年、調剤薬局が事業承継やM&Aを行うケースが増えつつあります。増えている理由は様々ですが、共通する悩みを抱えている薬局も多いです。円滑な経営を行うために事業承継せざるを得ないといったケースもあります。

今回は、薬局M&Aが必要になる理由やメリット・デメリットについて解説していきます。調剤薬局の経営をしていて、事業承継やM&Aを検討している人はぜひ目を通してみてください。

■なぜ薬局M&Aが必要なのか

まずは、薬局M&Aが必要となる理由についてみていきましょう。

・売上に伸び悩んでいるから

売上が頭打ちとなってしまい、伸び悩んでいる薬局のオーナーがM&Aを検討するケースが多くなっています。調剤薬局が得る調剤報酬は法律で定められていて、国民皆保険の対象です。そのため、処方される人は3割負担、残りの7割は国が支払っています。

最近の傾向を見てみると、国が社会保険料を抑制しようとしています。抑制するために、調剤報酬を引き下げているのです。高齢化が進むことによって調剤数自体は増えているのですが、調剤報酬の単価が引き下げられているため、調剤薬局の報酬による売上が伸びないという状況になっています。

売上が下がってしまうと企業価値の低下につながるため、企業価値が著しく低下する前に売却を検討するオーナーが増えてきました。薬局M&Aは、企業存続のため必要な選択となっているのです。

・後継者の確保が難しくなっているから

後継者の確保が難しくなっていることも、薬局M&Aが必要だと考えられる理由の1つとして挙げられます。調剤薬局は、薬剤師の人手不足や将来的な収益確保など多くの課題を抱えています。課題が多い業界であるため、跡継ぎになりたいと考える若者が減少しているのです。

後継者が見つからなければ廃業を余儀なくされるでしょう。それでは地域における医療のバランスが崩れてしまう懸念が生まれます。薬局M&Aをすることにより、後継者の確保も容易になると考えられています。

・薬剤師の人出不足が慢性化しているから

調剤薬局における薬剤師不足は非常に深刻です。調剤薬局を経営するためには薬剤師が常駐していなければなりませんが、全国的に薬剤師が確保しにくい状況に陥っています。特に、地方の調剤薬局ではその傾向が顕著です。

薬局M&Aを行うと、薬剤師の確保も可能となるため、薬剤師不足を理由としてM&Aを検討する薬局オーナーも増えています。また、薬剤師を求めて積極的に買収を行っている企業もあります。

■薬局M&Aを行うメリット

薬局M&Aを行うことで、オーナーや雇用されている人だけではなく、買い手側にもメリットがあります。ここでは、薬局M&Aを行うメリットとしてどのような点が挙げられるのかご紹介します。

【売り手側が得られるメリット】

・後継者問題を解決できる

後継者問題を解決できるのは、売り手側にとって非常に大きなメリットです。前述したように、調剤薬局業界では後継者問題が深刻化しています。後継者を探す時間がないケースや、後継者を探しているけど見つからない場合など、オーナーは様々な理由で悩みますが、薬局M&Aを行うことで解決へと導くことができます。

それは、オーナー自身が身内や従業員から後継者を探すことなく、スムーズに事業承継ができるからです。中小の調剤薬局で後継者候補は見つからない場合でも、薬局M&Aによって廃業を免れる可能性があります。

・個人保証や担保を解消できる

個人保証や担保を解消できるのもメリットの1つとして挙げられます。規模が小さい調剤薬局では、薬局自体が経営者名義の資産になります。加えて、借入金などを含む負債も経営者名義の個人保証になってしまうのです。

それらの担保や個人保証も薬局を売却すると買い手が引き継ぐことになります。負債も引き継いでもらえるため、資金繰りが危うい状態になっている場合も問題解消に導けます。

・創業者利益が得られる

薬局M&Aを行うことで創業者利益が得られるというのも、売り手側のメリットです。後継者が見つからずに廃業した場合、廃業するためのコストがかかるので経営者が負債を抱える可能性が高いです。しかし、調剤薬局の売却が成功すれば創業者利益を手にできます。

しかし、調剤薬局は将来性がそこまで見込めないとも考えられているため、価値は少しずつ下がっていくのではないかと考えられています。もし、後継者が見つからず薬局M&Aを行いたいと考えているなら、できるだけ早急に進めるようにしましょう。早めの行動で、得られるメリットも多くなります。

・事業の拡大が見込める

薬局M&Aによって事業の拡大が見込めることや、多角化経営を行う企業に買収された場合、売り手側とってメリットとなります。特に多角化経営を行っている企業では、複数の事業間におけるシナジー効果が得られるように取り組んでいるため、コストを抑えながら大きな利益を上げられる可能性が高まります。

【買い手側が得られるメリット】

・人材を確保できる

人材を確保できるという点は、買い手側にとっては大きなメリットです。調剤薬局の経営には薬剤師が必要不可欠です。しかし、地方では薬剤師不足が深刻化しているため、人材に確保が非常に難しい状態になっています。

しかし、人材不足に関してもまた、薬局M&Aをすることで解決しやすくなります。調剤薬局の買収を行い、薬剤師の確保をするケースも少なくありません。薬剤師を確保すれば収益のアップにもつなげられます。

・規模拡大のコストを削減できる

買い手側は、規模拡大のコストを削減できるというメリットもあります。規模を拡大すると取り扱う医薬品の数が増えることからコストがかかりやすくなります。しかし、調剤薬局の買収を行って店舗数を増やせば、大量仕入れが可能となるのでコスト削減につなげられるのです。

さらに、店舗数が増えればノウハウの共有化も図れます。ノウハウを共有できれば、業務効率の改善によるコスト削減効果も期待できます。

・新規立ち上げのリスクを軽減できる

新規立ち上げのリスクを軽減できることも、薬局M&Aを行うメリットの1つです。新規参入をしたり、新店舗を立ち上げたりする場合、建物や調剤に必要となる機器などの設備投資をしなければなりません。万が一失敗してしまったら、設備投資は負債になってしまうため、新規立ち上げのリスクはかなり大きくなります。

しかし、薬局M&Aを行った場合、基本的な設備が一通りそろっているケースが多いので、新規立ち上げよりも設備投資をせずに済みます。固定顧客もついていることから、大きな失敗になる可能性も低いです。

メリットには、以上のような点が挙げられます。M&Aは、売り手側も買い手側も多くのメリットがあることがわかります。

■薬局M&Aを行うデメリット

薬局M&Aをする際には、デメリットについても理解しておく必要があります。ここでは、薬局M&Aを行うデメリットをご紹介します。

【売り手側が感じるデメリット】

・買い手探しに手間がかかる

薬局M&Aを行うなら、買い手探しに手間がかかることを念頭に置いておかなければなりません。将来の収益性が不安視されること、薬剤師の確保が難しいことなどの理由から、なかなか買い手が見つからない可能性があります。

売却先選びを慎重に行わないと、買い叩かれてしまう恐れもあります。買い叩きに合うと売り手は大きな損を被ってしまいます。少しでもリスクを軽減したいなら、M&Aの仲介会社に依頼して売却先を探してもらうのがおすすすめです。

・顧客が流出する

調剤薬局が買収されると、売却先のやり方に従った営業方法に変わります。営業方法が変わること自体はそこまで大きな問題ではありませんが、売却先の評判が悪かったり、質の低いサービスを提供したりしている会社だった場合、顧客が流出する可能性があります。

顧客流出によって売上が落ちてしまえば、結果的に廃業を余儀なくされる可能性もあるでしょう。売却先に関しては、しっかりと調べて納得できる所に売却することが重要です。

・従業員が離職する

薬局M&Aで売却を行った場合、従業員は基本的に引き継がれます。しかし、契約条件や職場環境の変化などを理由に、離職してしまう可能性についても理解しておかなければなりません。

薬局M&Aにおいて、薬剤師の離職は売却金額に大きな影響を与えてしまうため、主要な従業員や薬剤師には薬局M&Aを行いたいと前もって伝えましょう。ただ伝えるだけではなく、売却後の不安を払拭できるようケアすれば、リスクを軽減できます。

【買い手側が感じるデメリット】

・簿外債務などを背負うリスクがある

簿外債務などを背負うリスクがあるのは、買い手側にとって大きなデメリットです。M&Aを行う場合は、売り手側が抱えている負債を買い手側に申告しなければなりません。しかし、債務額が非常に多いケースだと、売却価値の低下を懸念して全ての債務を申告しないケースもあるのです。

場合によっては、簿外債務まで引き継がなければいけない状況になります。簿外債務を引き継がないようにするため、徹底したデューデリジェンスを実施することが大切です。デューデリジェンスは、買収する予定の企業に関する審査を行い、買収価格の決定やスキームの策定を行うための重要なプロセスとなっています。

・従業員同士のトラブルが発生する可能性がある

薬局M&Aを行うと、既存の従業員と新しい従業員同士の関係性によってトラブルが発生する可能性もあります。特に、ソフト面の統一はかなり難しいです。ソフト面が統一できないと従業員同士の統率が取れなくなってしまい、シナジー効果が期待できなくなるのです。

場合によっては、シナジー効果ではなくアナジー効果(マイナスの相互作用)が生まれることもあります。既存の従業員と新しい従業員の間で良好な関係が築けるように経営者は対策を講じる必要があります。

・従業員が離職する可能性がある

従業員が離職する可能性は、新しく入ってきた人だけに言えることではありません。既存の従業員が離職する可能性も考えられます。離職のリスクを完全になくすことはできませんが、離職を考えている従業員や薬剤師からのヒアリングを行い、ケアをするとそのリスクは軽減できます。

M&Aを考えているなら、メリットだけではなくデメリットも把握しておくことが重要です。デメリットを把握していれば、少しでも回避できるような対策を講じられるようになります。

■薬局M&Aを検討しているならアテックにご相談を

薬局M&Aを成功させるためには、正しい知識が必要となります。M&Aには専門的な知識も必要となるため、自分の力だけではうまく話を進められない可能性も高まります。そのような時は、調剤薬局のM&Aを専門的に行っているアテックまでご相談ください。

【アテックとは】

アテックは、1991年に創業した日本初の調剤薬局のM&A仲介会社です。創業以来、多くの実績を残してきました。薬局の経営者と独立したい薬剤師のマッチングを行っています。

アテックは、調剤薬局業界に精通している会社です。そのため、専門的な知識を駆使した企業売却のサポートを行っているのです。

【ファーママーケットとは】

アテックは、ファーママーケットというマッチングサイトの運営を行っています。このマッチングサイトでは、薬局を譲渡したい経営者と独立・売却を検討している薬剤師のマッチングをサポートしています。これまでに多くのマッチングを成功させてきた実績があります。

自力で売却先を探そうとするとかなりの労力も必要となるので、それだけで疲れてしまう可能性も高いです。効率的に進めたいなら、ファーママーケットの利用がおすすめです。

アテックでは、それぞれが希望する条件に合う最適な交渉ができるような仕組みが整っているので、満足度の高い結果となる可能性が高いです。経営している調剤薬局の売却を検討しているのであれば、ぜひアテックまでご相談ください。専門的な知識やこれまでに培ってきたノウハウを活かし、最善のアドバイスをさせていただきます。
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