今回は、調剤薬局のM&Aが増えている理由やメリット、2021年に行われた事例についてご紹介します。具体的にどのような取り組みが行われているのか知りたいという人は、ぜひ最後まで目を通してみてください。
■調剤薬局のM&Aは増えている
まずは、調剤薬局のM&Aが増えている理由からみていきましょう。調剤薬局業界は、他と比べてみるとかなり低寡占な市場になっています。業界でトップ企業であっても、占有率はわずか3%という低さです。年間売上を見てみると、上位10社の合計が13%となっていることからも、かなり低寡占なことがわかります。
調剤薬局の数は、なんとコンビニエンスストアよりも多いのです。調剤薬局の数も非常に多いので、顧客が分散しやすいという特徴があります。それも、低寡占状態を助長していると考えられます。
調剤薬局に大きな動きが見られたのが、2015年です。厚生労働省によって策定された『患者のための薬局ビジョン』の中で、これまで一般的だった門前薬局からかかりつけ薬局や地域密着型の薬局へと方向転換をするという方針が示されました。かかりつけ薬局や地域密着型の薬局は、情報通信技術を駆使して服薬情報の一元管理や継続的な把握をできるようにする、24時間いつでも対応でき在宅看護にも対応する、医療機関などと連携をより密にする、という機能を持つ調剤薬局を指します。
その他に、薬剤師による対人業務の重要性も示しており、地域に密着したサービスを提供できる立地への移行も患者のための薬局ビジョン』では掲げられています。それを踏まえて、2016年4月に行われた診療報酬の改定では診療報酬にかかりつけ薬剤師や薬局に対する評価が加わり、2018年4月の改定では評価を充実させるだけではなく処方箋の受け付け数や集中率が一定数以上の所は調剤基本料を減らすことが決まりました。
診療報酬の改定のみならず、国の医療費削減政策によって薬価差益も得にくくなっています。結果的に収益の減少につながってしまうため、経営自体が非常に厳しくなっているのです。慢性的な薬剤師不足や経営者の高齢化、後継者不足も大きな問題として取り上げられています。
そんな中、大手企業は地方における店舗拡大を目指したり、スケールメリットによる収益の増加を目標として掲げたりするケースが増えてきました。結果、調剤薬局のM&Aを推し進めていく企業が目立つようになっています。調剤薬局M&Aによって薬剤師不足の解消も実現できるため、積極的に進める企業が増えてきたのです。
M&Aを行うと、譲渡側も業界再編に対応できるようになるほか、後継者問題を解消できるなど、多くのメリットあります。大手企業の傘下に入れば、これまでの問題を一気に解消できる可能性もあるため、相互利益を得られる方法として有用です。
また、異業種から調剤薬局業界に参入するケースも多くなっています。業界に一定の成長が見込めるため、他の業種からも注目されています。今後は、今よりもM&Aが積極的に行われるようになっていき、寡占状態に近付いていくでしょう。
■調剤薬局のM&Aを行うメリットとは?
調剤薬局のM&Aが積極的に行われているのは、取り入れるメリットがあるからです。ここでは、買い手側と売り手側がM&Aでどのようなメリットがあるかをみていきましょう。【買い手側のメリット】
買い手側が得られるメリットには、新規出店よりも短期間で事業を成長させられる、顧客の基盤をまとめて得られるといったものが挙げられます。その他にも、共同仕入れができるようになるので薬の原価を下げられたり、薬剤師の確保ができたりするというメリットもあります。法律の改正や診療報酬の改定に対する対応力を高められるのも、調剤薬局M&Aで買い手側が得られるメリットの1つです。
【売り手側のメリット】
売り手側が得られるメリットとして最も大きいのは、後継者問題の解消でしょう。後継者が見つからずに閉業するケースも増えているので、自分自身が築いてきたものを残したいならM&Aは賢明な判断だと言えます。
また、大企業の一員となることで事業拡大のチャンスが得られたり、事業再生を目指せたりするのもメリットに含まれます。会社を清算するよりも高額で売却できる可能性が高いのも、売り手側にとって大きなメリットになります。
■【2021年版】調剤薬局M&Aの事例7選
調剤薬局M&Aは、大きく分けると大手薬局・ドラッグストアチェーンによるM&A、中小規模の薬局・ドラッグストアによるM&A、ファンドによるM&Aの3パターンがあります。ここでは、2021年に行われた事例についてパターンごとにご紹介します。【大手薬局・ドラッグストアチェーンによるM&A】
・薬局Aが薬局Bを株式取得によって傘下に収めた事例
譲渡側の薬局Bは、大正時代に創業した老舗薬局で、兵庫県内におよそ10店舗展開しています。譲受側の薬局Aは、全国に薬局をおよそ800店舗、医療機関内の病院をおよそ20店舗展開しています。薬局Aは、調剤薬局事業の新規出店を検討していて、M&Aを活用した積極的な事業拡大を目指していました。
地域医療に貢献するかかりつけ薬局を展開することで、企業価値の向上を目的としています。そして、2021年1月に薬局Aが薬局Bの株式を100%取得して、傘下に収めました。
・薬局Cが薬局Dと業務資本提携した事例
譲渡側である大分県を中心におよそ10店舗展開している薬局Dは、無菌調剤室の導入を行ったり、地域に根差した在宅医療の推進に貢献したりと魅力的な取り組みを行っている薬局です。譲受側の薬局Cは、全国各地に薬局をおよそ1,000店舗、ドラッグストアをおよそ70店舗展開しています。
薬局を運営する企業を傘下に収める取り組みを積極的に行っている薬局Cですが、この事例では業務資本提携という形を採用しています。運営に関するノウハウを共有したり、薬機法改正への対応を柔軟に行ったりすることが目的です。また、災害時における運営協力支援も目的の1つになっているため、緩やかに統合して双方に有益な結果をもたらそうと考えているのでしょう。
オンライン服薬指導やかかりつけ薬局の推進が重要視されている今、それぞれが持つノウハウを共有してより良いサービスへつなげるのはかなり重要な課題となっています。そのため薬局Cは、地域に根差したサービスを提供する薬局Dと資本提携し、ノウハウを学ぶことを目標として掲げています。
業務資本提携の関係をより強固にするため、2021年3月に薬局Cは薬局Dが発行する新株を引き受け、その20%を有する株主となりました。
・ドラッグストアAとドラッグストアBが経営統合した事例
ドラッグストアAは、全国に薬局併設型ドラッグストアなどおよそ1,800店舗を展開しています。ドラッグストアBは、ドラックストア・薬局をおよそ1,500店舗展開しており、グループ会社は訪問介護やサービス付き高齢者向け住宅の運営なども行っています。
ドラッグストア業界は、かなり競争が激化しているため厳しいのが現状です。また、国が調剤関係の政策を行ったことにより、その対応に追われています。そこに新たな分野で存在感を出すことは、海外展開を視野に入れた時に重要な意味を持ちます。
その考えに双方が合意し、2021年2月に経営統合が成立したのです。そして2021年10月には、株式交換や会社分割などのプロセスを経て、新たな株式会社を設立しました。
・ドラッグストアCが薬局Eと薬局Fを傘下に収めた事例
譲渡側の薬局Eと薬局Fは、愛媛県を中心とし地域に密着した薬局を展開しており、その数は前者が10店舗、後者が3店舗となっています。譲受側のドラッグストアCは、薬局併設型を含むおよそ2,200店舗の薬局を全国展開しています。
このM&Aは、資格地域における店舗拡大や調剤事業の推進、共同仕入れによるコスト削減などが目的です。薬局Eと薬局Fを傘下に収めることでそれらを実現するだけではなく、本部機能の効率化や経営資源の有効活用も目指しています。
2020年7月に薬局Eと薬局Fが発行する株式を100%取得して傘下に収めました。そして2021年7月には、薬局Eと薬局Fを消滅会社とする吸収合併が行われました。
【中小規模の薬局・ドラッグストアによるM&A】
・薬局Gが薬局Hの事業承継を行った事例
那覇市で薬局を1店舗だけ運営している薬局Hは、後継者問題に悩まされていました。そんな時、沖縄県内で3つの薬局と訪問看護ステーションを運営する薬局Gが商圏の拡大を目指していることを知ります。沖縄銀行と沖縄県事業引継ぎ支援センターが連携して双方のマッチングが実施され、事業承継に結びつきました。
事業承継が実施されたのは2021年2月で、薬局Gが薬局Hの発行する株式を100%取得しました。
【ファンドによるM&A】
・ファンドAが薬局Iに出資して事業承継投資事業を行った事例
譲渡側の薬局Iは、全国におよそ600店舗の薬局を展開する大手です。譲受側のファンドAは、銀行などの共同出資によって設立された会社で、地方の企業に対する融資や投資による地方創生の支援を行っています。
調剤薬局は、かかりつけ薬局への転換や後継者不足など色々な課題を抱えているため、事業承継型M&Aのニーズは高まると見られています。それに伴い、大手の薬局グループは買い手として積極的な動きを見せるのではないかと考えられているのです。そのためファンドAは、中堅薬局や中小薬局の受け皿になれるような大手グループに投資し、地方薬局の事業承継や地方創生を目指そうとしています。
2021年4月には、ファンドAにおける初めての投資案件として薬局Iに対する投資が決まりました。銀行などを含む12社が出資するファンドが立ち上がり、第三者割当増資を通じた総額50億円もの投資が行われました。
・ファンド系企業Aが薬局Jを株式取得で傘下に収めた事例
譲渡側の薬局Jは、浜松市を中心におよそ10店舗の薬局を運営しています。譲受側のファンド系企業Aは、薬局分野で中小規模の企業を傘下に収めることにより、地域包括ケアシステムの担い手として十分な力を持つグループへと発展させるためのサポートを行っています。
薬局Jの子会社化もその一環として行われたものです。2021年7月にグループ会社を通じて薬局Jの株式を取得して傘下に収めました。
調剤薬局M&Aは、2021年にもこのようにたくさん行われています。実施する目的は様々ですが、やはり調剤報酬の改定などによって拍車がかかっているのは明白です。M&Aを行うと、譲渡側も譲受側もメリットを受け取れるので、双方にとって良い結果につなげやすいことが積極的に実施される大きな理由なのです。
■調剤薬局M&Aのことならアテックにお任せを!
調剤薬局M&Aを実行するためには、しっかりと準備する必要があるほか、専門的な知識も必要です。きちんと相手企業をリサーチしておかないと失敗のリスクも高まります。M&Aを成功させたいのであれば、長年にわたって調剤薬局のM&Aをサポートしてきたアテックにご相談ください。【アテックについて】
アテックは、1991年に創業して以来、たくさんの実績を残しています。日本初の調剤薬局M&A仲介会社としてスタートしたため、独自のノウハウも豊富に有しています。薬局のオーナーと独立を考えている薬剤師のマッチングを行い、後継者不足解消に貢献しているのです。
そんなアテックは、調剤薬局業界に精通しています。専門的な知識を駆使しながら売却を成功させるために必要なサポートを随時提供いたします。
【ファーママーケットについて】
アテックは、ファーママーケットという名のマッチングサイトを運営しています。このサイトは、薬局を譲渡したい経営者と独立を考えている薬剤師を結び付けるためのもので、数多くのマッチングを成功させてきました。自分の力で譲渡先や譲受先を見つけるのは簡単ではないため、ファーママーケットを利用するメリットは非常に大きいです。
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