患者へ提供する各項目の点数明示や適切な説明は、調剤報酬の仕組みを理解してこそ遂行できるのです。そんな中、2022年4月にも調剤報酬改定が実施されました。今回は、この改定でどのように変わったのか、今後調剤薬局や薬剤師が行っていくべきことなどをご紹介します。
目次
■調剤報酬改定が実施される理由
調剤報酬は、保険薬局が保健医療サービスを提供する対価として受け取っていることは多くの方がご存知でしょう。厚生労働省が定めている調剤報酬点数によって、全国各地どこでも同じ金額でサービスが提供される仕組みになっています。これには、調剤技術料・薬剤管理料・薬剤料・医療材料費などから表されています。
では、調剤報酬改定が実施される明確な理由をご存知でしょうか?調剤報酬改定は、今後の医療を見据えて実施されていますが、定期的に改定することで、より医療費の透明性を向上させ、患者の負担額軽減をするといった目的があります。
医療費の透明性向上
そもそも、医薬品を製造・開発している製薬会社では、製造原価・研究開発費に関する情報は企業秘密であることがほとんどです。なぜなら、自社が製品化している医薬品の製造原価や研究開発に関わる情報は、製品取引価格を提示する場合に有利になるからです。
しかし、調剤報酬をはじめとする医療費は透明性を高めることが求められています。そのため、薬価算定の際は非公開情報を踏まえた上で医療費の透明性を図る必要があるのです。調剤報酬改定では、こうした薬価算定に伴うプロセス・根拠などをより明確にすることで、適正で透明性の高い医療費算定を行えるようにしているのです。
患者の負担額軽減
調剤医療費は年々増加しており、患者の負担額軽減は国の大きな課題になっています。調剤医療費増加の背景には、医薬分業における院外処方への切り替えです。そのほか、入院外医療費が調剤医療費へ切り替わっていることも要因の1つです。
しかし、深刻化する高齢化や顕著な人口減少によって、今後はさらに患者の負担が大きくなる可能性があります。調剤報酬改定は、こうした患者の負担額軽減を目的に、デジタル化をはじめ社会経済の流れに対応しながらより効率的・効果的な質の高い医療提供体制を構築するために実施されています。
■2022年の調剤報酬改定基本指針とは
2022年は、2年に1度の調剤報酬改定が行われる年です。改定に先立ち、社会保障審議会は、「令和4年度診療報酬改定の基本指針」の資料を公開しました。その資料には、以下の4つの基本指針が明示されています。
【重点課題】コロナ禍でも対応できる効率的・効果的な質の高い医療提供体制構築
新型コロナウイルス感染症の影響で、地域医療連携推進を強化する必要があると考えられています。例えば、かかりつけ医療機関やかかりつけ薬局などの機能、在宅医療や訪問看護の質の向上・地域包括ケアシステム推進などがその方向性です。薬物治療連携を中心とした地域医療連携は、重点課題として取り組むべきだと言われています。
【重点課題】医療従事者の働き方改革推進
医師・看護師・薬剤師といった医療従事者の働き方改革もまた重点課題の1つです。医師・看護師・薬剤師のそれぞれの専門性がより高められるようタスクシフト推進が求められています。
薬剤師の専門性をより高めるためには、調剤後の関わり方やICT利活用で業務効率化を図る必要があります。近年需要が高まっているオンラインを活用した資格確認・服薬指導などの推進などです。
身近・安心・安全で質の高い医療の実現
医薬品の安定供給・かかりつけ薬局としての機能・薬局薬剤師業務の対人化への転換・病棟薬剤師業務など、より身近で安心、安全な質の高い医療実現は常に意識して取り組んでいくべき課題です。患者へ安定・安全な医療を提供するためには、薬品不足問題への対応はもちろん地域の薬剤師・病院薬剤師の連携推進も重要なポイントです。対物から対人へシフトしていくことも、より安心・安全な医療提供につながります。
国民皆保険の安定性・持続可能性向上
国民皆保険制度を維持していくこと、メンテナンスに取り組むことです。これには、医師・病棟薬剤師・薬局薬剤師の共同取り組みが求められます。
医薬品の適正使用等の推進も明記されています。最近では、複数の医薬品を服用することで体に害を及ぼすポリファーマシーも問題となっており、対策が求められるようになりました。医療従事者が連携して医薬協同におけるポリファーマシー対策に取り組むことも、国民皆保険の安定・持続へとつながります。
■2022年の調剤報酬改定ではどう変わった?
2022年に行われた調剤報酬改定によって、具体的にどのようなことが変更されたのでしょうか?ここでは、調剤報酬改定の変更点をご紹介します。
リフィル処方箋導入
リフィル処方箋は、医師が繰り返し使用可能と判断した場合、一定期間内であれば同じ処方箋を最大3回まで使用可能とした処方箋を言います。継続的な薬学的管理指導を行う必要があるため、同一の薬局で全ての薬を調剤することが前提とした処方箋となっています。リフィル処方箋には調剤日や次回調剤予定日などが記載され、総使用回数の調剤が完了したリフィル処方箋は調剤済み処方箋として保管しなければなりません。
地域支援体制加算の見直し
調剤基本料算定をはじめ、地域医療の貢献に関わる体制づくり・実績などに応じて地域支援体制加算の見直しが実施されました。従来は、地域支援体制加算は38点でしたが、施設基準区分に従い下記のように変更されています。地域医療において、薬局・薬剤師の貢献を細分化することで、より評価しやすくなりました。
・地域支援体制加算1:39点 ・地域支援体制加算2:47点 ・地域支援体制加算3:17点 ・地域支援体制加算4:39点
薬剤調整料の新設
薬剤師の対物業務・対人業務をより明確化するため、調剤料が廃止となり、新たに対物業務の評価として薬剤調整料が新設されました。これまで、処方日数ごとに点数が区分されていた薬も、1剤一律24点が固定となり、処方日数に応じた加算が付く形になっています。改定後、内服用滴剤・浸煎薬・湯薬及び頓服薬などの内服薬に関しては以下の通りとなっています。
・7日分以下:4点 ・8日分以上14日以下:28点 ・15日以上28日以下:50点 ・29日以上:60点 ・それ以外:4点
調剤管理料・服薬管理指導料の新設
対人業務に相当する薬剤服用管理指導料は、調剤管理料へ変更となりました。調剤管理料は、処方内容の薬学的分析や調剤設計、薬歴管理などを評価する形になっています。
また、これまで薬剤服用歴管理指導料として評価されていた服薬指導などの業務評価には、新たに薬剤管理指導料として新設されました。算定要件には、患者の薬剤使用状況等を継続的かつ的確に把握し、必要な指導を実施することとされています。新設された服薬管理指導料は以下の通りです。
・原則3日以内に再度処方箋を持参した患者:45点 ・特別養護老人ホームに入所している患者に訪問:45点 ・情報通信機器を用いて服薬指導した場合:45点 ・それ以外の患者:59点
オンラインを活用したICT化
オンライン服薬指導やオンライン資格確認などに関する見直しや新設等も行われています。例えば、オンライン服薬指導では、ルールの見直しとして情報通信機器を用いた服薬指導の評価が見直しされました。服薬管理指導料でも紹介したように、45点もしくは59点に改定されています。
また、オンライン資格確認として、このシステムを通じて患者の薬剤情報もしくは特定健診情報を取得し、その情報を活用して調剤等を実施する場合、調剤管理料の「電子的保健医療情報活用加算」が新設されています。なお、電子的保健医療情報活用加算は3点です。
■改正後に調剤薬局や薬剤師が対応すべきこと
2年に1度行われる調剤報酬改定は、今後大幅な変更が予想されています。その理由として、2025年には段階世代が後期高齢者となり、医療費がこれまで以上に大きくなると予想されているからです。
また、薬剤師の業務量減少に伴う技術料引き下げや後継者問題の表面化などの問題もあり、調剤報酬改定は薬局を減らす方向で行われているのではないかと言われています。では、調剤薬局や薬剤師は、今後の調剤報酬改定に備え、どのような対応をしていく必要があるのでしょうか?
薬剤師の採用
現在、調剤薬局業界では薬剤師不足が深刻化しています。薬剤師の数が増えても、ドラッグストアの調剤業務進出で需要増加に追い付いていないことや、薬学部の6年制により国家試験合格率低下などが要因です。
今後、調剤薬局が生き残るためには、優秀な薬剤師を積極採用していく必要があります。サービスの質を高めることが調剤薬局存続の大きな鍵となります。
医療機関との更なる連携
医療機関と調剤薬局との密な連携も今必要とされていることの1つです。医薬分業によって、医療機関と薬局との連携が薄くなり、患者に対する対応が二度手間になるケースも少なくありません。医療機関の薬剤師が、かかりつけ薬局でどのような薬が処方されているか把握できるようにするといったように、密な連携を図ることで、効率性向上、サービスの質向上につながります。
地域支援体制加算取得
地域支援体制加算は、2018年の調剤報酬改定で新設された制度で、個々の患者の管理・指導・在宅・夜間休日など、様々なニーズに対応できるようにした薬局に対し、地域医療に貢献していると評価し調剤報酬点数の加点を行うものです。このような対人業務は、徐々に高い評価がされるようになってきています。
近年は、対物業務よりも対人業務を評価するシフトしているのが現状です。今後を見据え対人業務の充実を図ることも、対物業務の技術料引き下げへの対応策につながるでしょう。
M&Aの実施
大手チェーンへの傘下に入ったり、経営者を目指す薬剤師に託したりするなど、M&Aで調剤薬局の経営をつないでいく方法もあります。近年では、M&Aを通じて店舗数の拡大を続ける大手チェーンもたくさんあります。中小の調剤薬局は経営が厳しい所も多く、大手チェーンの傘下に入ることを生き残り戦略としている傾向があるのです。
また、後継者不足が深刻していることで、引退したくてもできない状況に置かれている薬剤師も少なくありません。こうしたケースでは、調剤薬局経営者を目指している薬剤師に事業継承し、地域医療を支えていってもらう形を選択する場合があります。このように、M&Aを活用することも賢明な選択肢の1つになっているのです。
■薬局M&Aを検討しているならアテック・ファーママーケットへ
度重なる調剤報酬改定により、経営が厳しくなっている調剤薬局も少なくありません。今後を見据えて、M&Aを検討しているなら、仲介会社の利用をおすすめします。株式会社アテックは、薬局経営総合支援として日本初となる調剤薬局M&Aの専門会社です。
アテックでは、ずっと続けてきた薬局をこれからも残していきたい、経営者を希望する優秀な薬剤師に思いをつないでほしいといったオーナーの声を形にするため、調剤薬局に専門特化しています。スタッフは、調剤薬局経営経験者、薬剤経験者が多数おり、調剤薬局業界の実情や現場を熟知しています。オーナーの立場に立ち、最善の選択ができるようサポートしているため、ハッピーリタイアを実現できるよう努めているのです。
また、アテックでは誰かに薬局を引き継いで欲しいというオーナー側と、既存の薬局を引き継ぐことで独立したいと考えている薬剤師や店舗拡大を考えている大手チェーンなどの買い手をマッチングできるサイト「ファーママーケット」も運営しています。これまで続けてきた地域医療に欠かせない薬局だからこそ、その思いをつないでくれる相手を選びたいと思うものです。こうしたマッチングは、アテックならではのサービスです。
調剤報酬改定の影響や、生き残り戦略としてM&Aを検討しているなら、ぜひアテックにお任せください。ご相談やご質問等など、お気軽にお問い合わせください。