近年、M&Aは様々な業界で盛んに行われています。調剤薬局業界も例外ではありません。調剤薬局を経営している方の中にも、M&Aを検討する時期に入っていると感じている方も多いでしょう。

今回は、調剤薬局業界の業界構造やM&Aが盛んに行われている理由、今後の展望、調剤薬局の買収を行う際のチェックポイントについて解説しています。さらに、M&Aを行う際に心強い味方になるアテックについてもご紹介します。調剤薬局のM&Aを検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。

■調剤薬局業界の業界構造について

まずは、調剤薬局業界の業界構造から解説していきます。

・調剤薬局の定義とは?

調剤薬局は、医師が出した処方箋に基づいて薬を調合する場所です。開業するためには、都道府県知事から許可を得て、管理設置するなどの条件をクリアしなければいけません。

調剤薬局には「保険薬局」という別名もあり、健康保険法において保険診療の処方箋を受け付ける場所という意味があります。保険薬局を設置するためには、各都道府県にある地方厚生局に申請をする必要があります。

・調剤薬局業界はどのような構造になっている?

調剤薬局は大きく分けると個人経営、ドラッグストア併設調剤薬局、株式会社が母体の調剤薬局の3種類になります。近年はドラッグストアが調剤薬局を併設するケースも増えてきており、個人経営のところは厳しい状況になりつつあります。そのような状況下で、M&Aを検討するケースが多くなってきたというのが大きな流れです。

・調剤薬局が報酬を得る仕組み

調剤薬局は、調剤報酬を得ています。医薬品を患者さんに提供した報酬として得るものです。医療費の自己負担分が調剤報酬となり、残りは保険者が支払うという仕組みになっています。

調剤報酬は、制度の改正で変動します。最近の診療報酬の改正では、処方箋の受付回数や特定の医療機関からの調剤率によって調剤報酬量が引き下げられることが明記されました。この改正によって、門前薬局やグループを形成している薬局に影響が出ることが想定できるでしょう。

改正された背景には、後発医薬品への切り替え、かかりつけ薬局の推進などが大きく関係しています。後発医薬品への切り替えは、薬価の値下がりによる利益の減少を抑えるために役立ちます。2020年の改正は、地域にかかりつけ薬局を増やして薬剤師が薬の管理をできるようにすることにより、重複している医療費の増加を抑えることが目的となっているのです。

■調剤薬局業界でM&Aが盛んに行われているのはなぜか

薬価や調剤報酬の改正により、利益が落ち込むことが想定されています。それでは経営が立ち行かなくなるリスクが高いため、M&Aを目指した動きが活発化しているのです。続いては、M&Aが盛んに行われている理由をさらに深掘りしてご紹介します。

・厚生労働省がかかりつけ薬局への切り替えを推進している

厚生労働省は、かかりつけ薬局への切り替えを推進しています。それに伴って調剤報酬が引き下げられてしまう門前薬局とグループ薬局は、生き残りをかけた意向を目指しているのです。かかりつけ薬剤師の導入も積極的に行われています。

そのような状況にあるため、今後は個人経営のかかりつけ薬局をターゲットとしたM&Aがさらに加速するのではないかと予想できます。こうした背景から、個人や中堅グループの調剤薬局といった地域のケアを行える薬局が増加傾向にあるのです。大手や中堅グループの調剤薬局はスケールメリットによる利益獲得を望んでいるケースが多く、個人薬局などは買収の対象として魅力的に見えます。

・調剤報酬の改正が2年ごとから毎年へ変更された

以前は調剤報酬が2年に1回というスパンで行われていました。しかし現在は、毎年へと変更されています。今後はさらに厳しい基準が追加される可能性もないとは言い切れません。それを加味して、中堅グループも生き残りをかけた買収に力を入れるようになったのです。

買収の対象となる調剤薬局の傾向も顕著になっています。それは、調剤基本料1の条件に該当する調剤薬局です。

・経営者の高齢化で個人経営の調剤薬局が売りに出されている

個人経営の調剤薬局は、経営者が高齢化しつつあります。後継者候補が見つからなければ、廃業するか、どこかに買い取ってもらうかの2択から選ばなければいけません。廃業するためにもコストがかかりますし、雇っているスタッフの再就職先がすぐに見つかるとも限らないのでM&Aを選択するといったケースは珍しくないのです。

・大手調剤薬局も売りに出している

大手調剤薬局は経営的にも不安がないように思えるでしょう。しかし、調剤報酬の引き下げなどの影響が大きく、それ以前と同じような利益を得ることが難しい状況になっています。業界で生き残る従業員の雇用を維持するためにも、一部店舗を売却するという施策を取っているのです。

■今後、調剤薬局業界はどうなる?

2015年10月に厚生労働省は、「患者のための薬局ビジョン」を発表しています。このビジョンは、厚生労働省が描く調剤薬局の将来像です。続いては、どのような将来像が描かれているのかご紹介します。

・2025年までに目指す薬局業界像とは?

厚生労働省が発表した「患者のための薬局ビジョン」によると、2025年までにすべての薬局をかかりつけ薬局にするとされています。かかりつけ薬局には、ICTを活用した服薬状況の一元管理や継続的な把握、24時間対応、在宅対応、医療機関など関連機関との連携を担うことなどが求められています。いずれも患者さんの視点から見た時に、効果を発揮しやすい薬物療法を実現するための取り組みなのです。

2025年には団塊世代の多くが75歳になります。つまり、医療制度への負担が大きくなる時期にあたると言えるでしょう。かかりつけ薬局やかかりつけ薬剤師がうまく機能する仕組みがそれまでに構築されていることを厚生労働省は望んでいることがわかります。

・地域連携薬局と専門医療機関連携薬局が重要に

2019年11月に成立した医薬品医療機器法(通称:薬機法)の改正で、2021年8月から地域連携薬局と専門医療機関連携薬局の認定がスタートしました。特定の機能を有する薬局が都道府県知事の認定で名乗れるようになったのです。薬局による特徴の違いがはっきりするので、患者さんが自発的に薬局を選んで、ニーズに合う医療を受けやすくなると期待されています。

地域連携薬局は、入院や退院、在宅医療など、地域の医療機関と連携して対応できる仕組みを整えた薬局です。地域の患者さんが安心して治療を受けられるようにサポートするという役割を担います。

専門医療機関連携薬局は、専門的な薬剤管理が必要な患者さんに対して医療機関と連携しながら、高度な薬学管理や調剤に対応できる薬局です。現段階では、癌だけが対象になっていますが、今後は他の病気が追加される可能性も大いにあるでしょう。

今後は、この2つに該当しない調剤薬局が淘汰されていく可能性が非常に高いです。そのため、どの薬局も基準をクリアできるような機能を導入しなければいけないと考えているのです。

・在宅医療が今後を左右する

高齢者は年々増加していて、在宅医療を受けている患者さんの数も増加傾向にあります。薬剤師も在宅医療を支える柱として重要視されているため、対応できるような仕組み作りも重要です。個人宅に薬を届けたり、適切な管理をサポートしたりするだけではなく、治療を積極的に受けられるようにするための取り組みが必要になることが間違いないでしょう。

・オンライン服薬指導が身近になっていく

コロナ禍において、様々な場面でオンライン化が進められてきました。これまでは対面で行うのが当たり前だった服薬指導も例外ではありません。オンライン服薬市道は、離島やへき地など医療アクセスが悪いエリアに限定されていたのですが、薬機法の改正で一定の要件のもと、全面解禁されました。

2020年は新型コロナウイルス感染症の感染拡大もあり、4月10日に厚生労働省から電話や情報通信機器を用いた診療などの時限的・特例的な取り扱いに関する事務連絡が出されています。これは「0410対応」と呼ばれているもので、電話や情報通信機器を用いた診療を受けていない患者さんも医師にオンライン服薬を希望することを伝えると、全ての薬局で対応可能になるという内容です。

医療機関と調剤薬局の双方で体制が整えば、オンライン服薬指導はさらに普及していくことが予想されます。若い世代を中心に広まっていくことも加味し、導入を進める必要性は高いと言えます。

・ドラッグストア併設の調剤薬局が今より主流に

ドラッグストアに併設した調剤薬局は、ここ数年で一気に増えています。大手の調剤薬局チェーンと並ぶ規模になっているドラッグストアも出てきました。ドラッグストアに併設することで、休診日でも処方箋を受付可能となったり、夜遅くまで受付ができるようになったりするため、患者さんにとってメリットが大きいことも要因だと考えられます。

処方までの時間は、買い物に時間を使えるというのもドラッグストアならではのメリットです。患者さんが求めているニーズも多様化していて、ドラッグストア併設の調剤薬局も選択肢の1つとして主流になりつつあるのです。今後はさらに需要が高まり、今より主流になる可能性もないとは言い切れません。

■調剤薬局の買収を行う際のチェックポイント

調剤薬局を買収する側は、サービスの質が高いところを選びたいと考えています。その際にチェックしているポイントがあります。現在経営している調剤薬局がそのポイントに当てはまっていれば、M&Aが成功する可能性が高くなるので確認しておきましょう。

・集中率

集中率は、月計表で確認できます。特定の医療機関からの処方箋が集中しているケースは、そこまで評価されないというのが現状です。つまり、近隣に医療機関が多い調剤薬局の方が、M&Aで買収する側から興味を持ってもらえる可能性が高いということになるでしょう。

・薬剤師の年齢と後継者の有無

薬剤師の年齢と後継者の有無も、買収する側がチェックしておきたいと考えるポイントです。調剤薬局業界は薬学部が6年制になったことを機に、慢性的な人手不足が問題視されています。サービスのクオリティが高い調剤薬局でも薬剤師の高齢化が進んでいれば、将来性が感じられなくなってしまうので、敬遠される恐れがあります。

また、後継者の有無も非常に重要です。後継者がいないと経営の継続が難しくなってしまうことが大きな要因となります。他から後継者を見つけてくる方法もありますが、可能な限り内部で対応できるのが理想的だと考えられるからです。

・管理薬剤の年齢と意向

買収を行うのであれば、管理薬剤の年齢と意向も重要なポイントになります。管理薬剤師というのは、医薬品や従業員を管理する立場の薬剤師です。若手の管理薬剤師は大手志向が強い傾向にあり、個人経営の調剤薬局で管理薬剤師を勤めている人は年齢が高めといったケースも往々にしてあります。

年齢だけではなく、意向も確認しておかなければいけません。M&Aを行うと経営者が変わるためです。ついてきてくれるのであればM&Aで買収されても問題ない可能性が高いので、前向きに考えても良いでしょう。

・立地条件

M&A後に経営が安定するかどうかは、立地条件に左右されます。近隣にはどのような医療機関があるのか、薬局までアクセスしやすいか、などを買収する側は確認します。

大病院の前に店舗を構えている調剤薬局で近くに空き地となっている場所があれば、競合が参入する可能性が高いです。競合が参入した場合、将来的に競争が激化することになりかねません。したがって、そのような立地だと敬遠されてしまう可能性が高くなってしまいます。

■M&Aを検討しているならアテックへ

後継者不足などで悩み、廃業ではなくM&Aを考えている調剤薬局の経営者は、どこに相談すればいいのかわからないというケースも少なくありません。そのような時に利用していただきたいのがアテックです。アテックは、1991年に創業して以来多くの調剤薬局M&Aをサポートしてきたという実績を有しています。

ファーママーケットという調剤薬局の経営者と独立したい薬剤師のマッチングサービスも行っています。理想的な後継者候補に出会うためのきっかけにもなるので、M&Aを考えているなら利用を前向きに検討してみてください。

調剤薬局業界では、M&Aが盛んに行われています。廃業するにもコストがかかってしまうので、それなら売却しようと考えるケースも多いためです。M&Aを効率的に進め成功への足掛かりにしたいのであれば、アテックまでお気軽にご相談ください。
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