今回の記事では、薬局が抱えている課題や薬局譲渡を成功させるためのポイントについて解説していきます。経営している薬局の譲渡を少しでも考え始めているのであれば、ぜひ参考にしてみてください。
目次
■薬局が抱えている問題とは?
薬局を経営している中で様々な問題が生じてきます。まずはその問題点から解説していきます。・薬剤師不足の深刻化
薬剤師不足は非常に深刻な問題となっています。特に地方では、薬剤師を確保するのが難しい状況です。都市部では薬局の数が多いという理由で薬剤師不足に陥っており、確保できずに経営を維持するのが難しくなっているケースも見られます。・経営者の高齢化
経営者の高齢化も、薬局が抱えている問題の1つとして挙げられます。中小規模の薬局で引き継ぎのタイミングを迎えている経営者もいます。しかし、将来性の不透明さなどから後継者となってくれる人材が見つからず、閉業を余儀なくされるケースも増えつつあるのです。・調剤報酬の改定
調剤報酬の改定も、薬局経営に大きな影響を与えます。高齢化が進んでいることから社会保険費を抑えようと、調剤報酬は2年に1回、薬価は毎年改定されています。薬局が得る調剤報酬はさらに少なくなると考えられ、市場規模も減少に向かうと予想されています。・大手企業の参入や大手グループの規模拡大
近年、大手企業が調剤薬局業界に参入したり、大手グループが規模を拡大するためにM&Aを積極的に行ったりするケースが増えています。中小規模の薬局は差別化などが難しく、飲まれてしまう可能性が高いです。顧客を大手の薬局に取られてしまうことも考えられます。■薬局譲渡を成功させるために知っておきたい秘訣とは?
これまで自信が育ててきた薬局を閉業してしまうのは悔しいものです。そのため、M&Aを行い譲渡するケースも増えています。続いては、薬局譲渡を成功させるために知っておきたい秘訣をご紹介します。・優先度が高い条件をはっきりさせる
薬局の譲渡には様々な条件が発生します。譲渡の金額やタイミング、譲受企業の規模、従業員の引き継ぎなどの条件から、優先順位が高いものを明確にしておきましょう。利害関係者や従業員のことを考え、どのような形で譲渡するのがベストなのか吟味してから決定してください。・薬剤師を確保する
薬剤師の人数が多い薬局の方が、譲受先も見つけやすいです。1日あたりの処方箋枚数に対し、基準を満たしているか確認しておきましょう。処方箋枚数のわりに薬剤師や調剤事務の人数が少ないと負担が大きくなりすぎてしまうため、譲渡しても上手くいかない可能性が高まってしまいます。・近隣住民からの評判は高めておく
近隣住民からの評判は、収益に大きな影響を与える可能性があります。そのため、評判が良くなるような運営を心掛けましょう。 買い手側からの心証を悪くしないようにするためにも、普段から評判が良くなるサービスを提供することが大切です。例えば薬について疑問点が浮かんだ時にすぐ相談できるような、身近な存在を目指すことで評判を高められます。・不利な部分も抜かりなく伝える
不利になる部分は伝えたくないと思ってしまうのは当然です。しかし、不利になるからと言って隠してしまうと、交渉が長引く原因になりかねないため注意が必要です。デューデリジェンス(経営状況や財務状況など調査)を行うとわかってしまうので、マイナスになりそうな部分もしっかりと伝えるようにしましょう。■薬局を譲渡する前に確認しておきたいポイントも要チェック
薬局の譲渡を考えているのであれば、いくつか前もって確認しておきたいポイントもあります。次に、どのようなポイントを確認しておけば良いのか解説します。【譲渡する相手は誰か】
・子どもなどの親族親族に後継者候補となる人物がいる場合は、最初の選択肢になるでしょう。親族に承継の意思があるか、早い段階で確認しておくことをおすすめします。早めの確認が必要となるのは、経営者側は親族に譲渡したいと思っていても、その親族には継ぐ意思がないケースも珍しくないためです。
・従業員
親族に後継者となる人物がいない場合、従業員が候補に挙がります。すでに勤務している役員や従業員であれば、どのような流れで業務を行うかなどを把握できているといったメリットがあります。
・第三者
親族にも従業員にも後継者となる人物がいないケースでは、第三者が承継することになります。薬局のM&Aをサポートしている企業に相談すると、譲受先探しをサポートしてもらえます。
【薬局を承継するメリットとデメリット】
薬局を承継することによるメリットとデメリットも把握しておく必要があります。ここでは、譲渡する側のメリット・デメリットをご紹介します。・メリット
譲渡する側は、対価を得ることができたり、スタッフの雇用を継続できたりするなどのメリットを享受できます。患者さんの引き継ぎもできるので、利用してくれた人に不安を与えずに済むという点もメリットとして挙げられるでしょう。
・デメリット
デメリットには、経営理念や方針が変わってしまう可能性があること、必要な資料の準備に手間がかかってしまうことなどが挙げられます。また、譲渡までに時間を要してしまう可能性があることもデメリットの1つです。
【法人譲渡と事業譲渡の違いについて】
薬局の譲渡は、法人譲渡と事業譲渡のいずれかを選択します。この2つの違いについても把握しておく必要があります。・法人譲渡とは
法人譲渡は、薬局が保有する資産と負債をそのまま引き継いでもらえる方法です。簿外債務のリスクがあるため、法人譲渡を敬遠するケースもあります。スタッフの雇用なども基本的に引き継がれるという仕組みになっています。
・事業譲渡とは
事業譲渡は、譲渡の対象となる資産を任意で選択できる方法です。負債の引き継ぎがないので譲受側の負担が小さい方法になります。雇用主が変わるのでスタッフ雇用は継続されず、新たに雇用契約を結ぶのが特徴です。
法人譲渡と事業譲渡には、上記の違いがあります。どちらを選択するかという点もしっかり話し合わなければいけないポイントです。
【開業形態によって異なる承継方法の違いについて】
薬局の開業形態が不動産所有なのか、それともテナント賃貸なのかによって承継の方法が異なります。不動産を所有している場合でも、所有者が経営者個人または法人なのかで異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。・土地や建物が個人所有となっているパターン
土地や建物が個人所有となっているパターンでは、売却もしくは不動産を賃貸して薬局事業だけ譲渡するという方法から選択します。売却ではまとまったお金が手に入りますが、継続した家賃収入は入りません。不動産を賃貸して薬局事業だけ譲渡する場合は、継続した家賃収入を得られますが、承継後も不動産の維持管理を行ったり、固定資産税などの維持費を支払い続けたりしなければいけません。
・土地や建物が個人所有となっていて法人に賃貸しているパターン
土地や建物が個人所有となっていて法人に賃貸しているパターンでは、法人と不動産を両方とも売却するか、法人だけ譲渡して建物は賃貸するか、という選択肢が生まれます。法人と不動産を両方とも売却と、まとまった資金が手に入りますが、先ほどと同じく継続した家賃収入は入りません。法人だけ譲渡して建物は賃貸する場合も、前述したケースと同様に継続した家賃収入を得られますが、承継後の維持管理や固定資産税などの支払いも把握しておかなければいけません。
・テナント賃貸のパターン
テナント賃貸の場合は、株式譲渡もしくは事業譲渡から選択します。
株式譲渡は、法人名義で賃貸借契約を締結していると賃借権や預け入れ敷金を含む権利気味が引き継がれます。しかし、賃貸借契約で法人の代表者を変更することが定められている場合もあるので確認を忘れないようにしましょう。また、連帯保証人が要る場合は薬局承継に伴って変更しなければいけません。
事業譲渡は前の契約者と結んでいる賃貸借契約を解約し、新たな経営者が契約を結び直します。薬局の承継に伴う賃貸借契約の再締結を行う場合、建物の所有者の同意が必要となります。契約名義人が変更されるので譲渡側の経営者に敷金は返金され、譲受側は敷金を預け入れになることも事業譲渡のポイントです。
■薬局を譲渡する際の手続きについて
薬局の譲渡を行う際の手続きについても確認しておく必要があります。最後に、どのような手続きが必要となるのか解説していきます。・薬局を開設するための許可
薬局の経営は許認可制となっているので、管轄の保健所や都道府県の行政手続きを行わなければいけません。譲渡する場合は、薬局の解説者が変わるとみなされるので改めて許可の申請を行う必要があります。まずは保健所で許可を得て、都道府県の厚生局で手続きを行うという流れです、申請から許認可が下りるまで約1ヶ月かかるので、時間的に余裕を持った申請手続きをするようにしましょう。 株式譲渡の場合は、株主が変わるだけです。そのため、このような行政手続きはほとんど不要になります。
・保険薬局指定に関する申請
保険薬局指定に関する申請も忘れてはいけません。保険薬局というのは、健康保険などの公的医療保険に基づいた処方箋の受付と調剤が行える薬局です。日本では国民皆保険となっているので、公的医療保険に基づいた業務が大半を占めています。保険薬局は厚生労働大臣から指定を受けます。保険薬局に指定されていないと保険薬局として業務を行うことができないため、経営も成り立ちません。
・生活保護法医療機関指定に関する申請
生活保護法医療機関指定に関する申請も行う必要があります。これは、生活保護法に基づいた業務を行う医療機関であると証明するための申請です。生活保護を受けている人が利用した時は公的医療保険料が免除になるため、医療機関は法律に基づいた医療報酬を別途受け取れます。生活保護医療機関に指定されていないと、生活保護受給者に対する調剤を行ってもメリットは得られません。患者さんが全額医療費を負担しなければいけなくなるので、デメリットの方が大きいと言えます。
・労災保険指定薬局に関する申請
労災保険は、労働者が通勤中や勤務時間中に傷病を患った時に適用となる保険です。被保険者は労働者、保険者は国となっています。労災と認定された場合は、労災保険で医療費を賄います。薬局が労災保険指定薬局になっていないと労災保険は適用されません。労災者に対する調剤業務を行うケースも珍しくないので、申請しておく必要があります。
・自立支援医療機関指定に関する申請
自立支援医療機関は、障害者総合支援法に基づいて治療を行ったり、医療費を申請したりできる機関を指します。自立支援には育成・厚生と精神通院の2種類があります。それらの治療を行うと、公的医療保険に上乗せされ国が治療費を負担するという仕組みです。上乗せされた治療費は、自立支援医療機関指定でなければ受け取れません。そのため、自立支援医療機関指定に関する申請も必要だと言えます。
この他にも、保険薬局機関の届け出や薬局製剤製造業許可申請、後発製剤調剤体制加算の施設基準に係る届などの各種許可の取得も必要です。しなければいけない手続きを抜かりなく行えるように、あらかじめリストアップして確実に対応できるようにしておきましょう。
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