しかし、オンライン服薬指導についてまだあまり詳しくない方も少なくありません。そこで今回は、オンライン服薬指導の概要や流れ、メリット、これからクリアすべき課題について解説していきます。オンライン服薬指導がどのようなものか知りたい方は、ぜひ目を通してみてください。
■オンライン服薬指導とは?
まずは、オンライン服薬指導がいったいどのようなサービスなのかみていきましょう。・オンライン服薬指導について
オンライン服薬指導は、スマートフォンなどの通信機器を使い、オンラインで服薬指導を行うサービスです。薬剤師が患者さんとスマートフォンやパソコンを通してオンラインでつながり、状態などを把握した上で処方薬の飲み方や注意点などの情報提供を行います。
このサービスは、医療機関や薬局といった医療資源が乏しい離島やへき地における遠隔診療のニーズに対応するために一部の地域限定でスタートしました。その後、2019年に成立した改正薬機法で全国での実施が可能となりました。
改正薬機法は、2020年9月の施行が予定されていましたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、時限的にオンライン服薬指導を解禁したのです。オンライン服薬指導をニーズに高まったことが理由です。「0410対応(0410通知)」と呼ばれる措置で、2020年4月に予定よりも前倒しで解禁されることになりました。
0410対応(0410通知)はあくまでも特例措置です。そのため、2023年7月31日に終了しています。特例措置が修了となったので、2023年8月1日からは改正薬機法に則って実施しなければいけません。
・0410対応(0410通知)と改正薬機法の違い
0410対応(0410通知)では、電話(音声のみ)の実施で「薬剤服用歴管理指導料」を算定できました。しかし改正薬機法では、映像と音声による対応が必須条件になっています。電話による服薬指導も継続は可能ですが、2023年8月以降の算定はできません。
映像と音声による服薬指導を行うことで、服薬管理指導料・在宅患者オンライン薬剤管理指導料・在宅患者緊急オンライン管理指導料が算定されることを薬局側はきちんと理解しておく必要があります。
■オンライン服薬指導の流れについて
オンライン服薬指導の流れは以下のようになっています。1.診療をする
まずは、病院や診療所で診療を受けます。診療を受けると、オンライン服薬指導もしくは対面服薬指導のいずれかを選択できます。患者さんがオンライン服薬指導を希望すると、病院や診療所はCLINICSというアプリに処方箋をアップロードするのです。
アプリに処方箋をアップロードすることで、患者さんが希望の調剤薬局に処方箋を送れるようになります。
2.処方箋の受付をする
患者さんがアプリで処方箋を受け取ったら、希望する調剤薬局を検索し、オンライン服薬指導の申し込みを行います。予約できるのは、処方箋発行日を含めた4日以内です。申し込みを受け付けた調剤薬局は、医療機関がアップロードした処方箋や保険証の画像、問診のデータを受け取り、受付を行います。
処方箋の原本は、後日受領しなければいけません。
3.オンライン服薬指導を行う
予約が完了したら、対面時と同じように処方箋の内容をチェックし、薬剤師や調剤事務のスタッフがレセプトの入力やピッキングを行います。薬の準備が整って受付の時間になったら、ビデオ通話を開始し、患者さんへの服薬指導が行われます。
4.支払いをする
服薬指導が完了したら、患者さんに負担額と配送料を伝えます。支払いに関しては、あらかじめ登録してあるクレジットカードが使用されます。
5.薬を配送する
支払いが完了したことを確認したら、薬を梱包し、配送業者に配送依頼をすれば完了です。
■どのようなメリットがある?
オンライン服薬指導を導入することで様々なメリットを享受できます。続いては、どのようなメリットがあるのかみていきましょう。・患者さんの体力的負担や時間て負担を軽減できる
オンライン服薬指導は、体調が悪い中でも調剤薬局まで足を運ぶ必要がなく、処方薬ができるまで待つ時間もありません。家にいながら薬を処方してもらえるので、大きな負担軽減につながります。これは、患者さんにとって大きなメリットだと言えるでしょう。
・オンライン決済で支払いが簡単
オンライン服薬指導は、オンライン決済となっているので支払いも簡単です。クレジットカードを登録しておけば、すぐに決済できます。調剤薬局でもクレジットカード払いは可能ですが、カードを出すなどの手間がかかるのは避けられません。
・薬剤師の負担を軽減できる
近年、在宅医療が重要視されるようになってきました。それに伴い、薬剤師も医師や看護師と一緒に患者さんの自宅を訪問するようになっています。しかし、毎回訪問に同行するのは薬剤師にとって大きな負担になってしまうだけではなく、業務も滞ってしまいます。
薬剤師の人数をあまり確保できない地方の調剤薬局において、業務が滞るのは致命傷になりかねません。そのような時にオンライン服薬指導を取り入れれば、薬剤師の負担を大幅に軽減できます。業務の効率化にもつながるので、メリットは大きいと言えるでしょう。
・感染症の拡大予防
オンライン服薬指導は、オンライン診療や在宅医療と組み合わせて行われます。医師の診断から薬の処方までオンラインで完結させたり、在宅医療とオンライン服薬指導で完結させたりすることで、医療機関内で発生する感染症のリスクを軽減できます。これは、患者さんと医療従事者双方にとってのメリットです。
・医療費の抑制が見込める
オンライン服薬指導が普及すると、医療機関への受診や薬物治療が身近になります。そしてそれは、受診率や薬物治療率の上昇につながると考えられます。さらに、慢性疾患の重症化防止につながるとも考えられるため、普及するメリットは非常に大きいです。
薬剤師からアドバイスしてもらえる機会も多くなります。そうすることで、服薬アドヒアランスが良好になり、残薬問題も解消され、結果的に医療費の抑制につながると考えられているのです。
服薬アドヒアランスは、患者さんが自分自身の病気にしっかりと向き合い、積極的に治療に参加することを意味します。以前は服薬コンプライアンスという言葉が使われていましたが、コンプライアンスは受動的なものなので、能動的な意味を持つアドヒアランスという言葉が使われるようになりました。
■オンライン服薬指導の課題
オンライン服薬指導には、まだ多くの課題が残されています。オンライン服薬指導の課題にはどのようなものが挙げられるのかみていきましょう。・患者さんの表情を細かい部分まで確認できない
オンライン服薬指導は画面越しの対応になります。そのため、どれだけ患者さんをしっかり観察したつもりでも、細かい表情の変化に気が付かない場合も往々にしてあります。体調の変化をチェックするのはもちろんですが、患者さんに対する理解度も深まりにくくなってしまうでしょう。
また、高齢で耳が遠い患者さんや難聴などを患っている患者さんの場合は、コミュニケーションの取り方を工夫しなければいけません。どのような患者さんでもスムーズに対応できるような工夫を凝らさなければいけない点も、課題の1つだと言えるでしょう。
・ITリテラシーの程度が違う
オンライン服薬指導では、パソコンやスマートフォンを利用します。そのため、患者さん側のITリテラシーも求められるのです。高齢者や通信機器の使用に慣れていない方は、ITリテラシーが不足しがちで、オンライン服薬指導をスムーズに導入できない可能性が高いです。
導入の可否を判断するには、普段の対面服薬指導をする際、患者さんに通信機器の使用経験などをヒアリングするのがおすすめです。そして、一人ひとりのITリテラシーに合わせた対応を工夫することがポイントになります。手間はかかってしまいますが、円滑な導入に向けて行うべき工程だと言えるでしょう。
・医薬品の配送に費用やタイムラグが生じる
オンライン服薬指導を行った場合、処方された薬を患者さんの自宅まで郵送します。配送手段は、特に定められていませんが、大切な薬を扱っているので安全性や利便性を確保できる方法が望ましいです。調剤薬局によっては、配送できるエリアを指定し、スタッフが配送したり、代金引換の宅配を利用したりするパターンもあります。
2023年12月現在、患者さんの自己負担に上限が決められておらず、都道府県の薬剤師会ごとに解釈が異なっています。そのため、全国で一律の対応はできていません。そのため、オンライン服薬指導を導入するのであれば、医薬品の配送手段や発生する実費の扱いを十分に検討しなければいけないでしょう。
また、受診してから薬を受け取るまでにタイムラグがあることも、考慮すべきポイントです。したがって、配送に費用がかかること、タイムラグがどうしても生じてしまうことは、患者さんにきちんと説明し、同意を得なければいけません。
・処方箋やおくすり手帳を移行しなければいけない
オンライン服薬指導を行うのであれば、おくすり手帳や処方箋も電子化する必要があります。電子処方箋や電子おくすり手帳は、オンライン服薬指導に適した様式になっているためです。
電子処方箋を導入するには、オンライン資格確認が必要になります。オンライン資格確認は、患者さんがどの医療保険に加入しているのか、自己負担額の割合はどのくらいか、などを確認できるシステムです。つまり、患者さんに関する保険や薬などの情報が電子処方箋管理サービスで確認できる状態になります。
電子処方箋が導入されると、患者さん側は複数の医療機関や薬局にかかっていても安心して薬を受け取れたり、オンライン診療や在宅医療を受けやすくなったりします。調剤薬局側は、正確な情報・データを確認できるようになったり、紙処方箋管理の負担が軽減されたりといったメリットを享受できます。そのため、電子処方箋の導入はデメリットばかりではありません。
オンラインおくすり手帳は、スマホで薬の管理ができます。スマホを普段から使っている方であれば、問題なく使いこなせるでしょう。しかし、スマホの扱いに慣れていない高齢者などは戸惑ってしまう可能性が高いです。
■調剤薬局の体制を変えるにはM&Aという方法も
オンライン服薬指導を行うには、設備を整えるなどの工夫が必要です。既存の設備は対面服薬指導向けとなっているので、スムーズな移行が難しい可能性も大いにあります。今から新しいことを始めたら経営が上手くいかなくなってしまうのではないかと考える調剤薬局オーナーもいるでしょう。現在の経営に何らかの不安を抱えている場合、新たな取り組みを行うには人手が足りないと感じている場合などにおすすめなのが、調剤薬局M&Aです。最後に、2024年以降の調剤薬局M&A事情について考察していきます。
近年、小規模な調剤薬局は大手の薬局に店舗を売却するケースが増えています。買収したいと考える企業もいずれは手いっぱいになってM&Aを停止する可能性もありますが、2024年はまだまだ需要があると考えられます。
しばらくの間は、大手薬局法人の競争が激化し、市場再編が進むと考えられます。そして、調剤薬局の数は徐々に減っていくと考えられるでしょう。
■M&Aに関する相談はアテックへ!
オンライン服薬指導の導入などの変化に対応するのが現在の設備やスタッフでは難しいと考える調剤薬局オーナーもいるでしょう。そのような時に検討すべきなのがM&Aです。M&Aを行う場合は、専門的な知識が必要になるので、適切な相談先を見つける必要があります。M&Aを行っている会社はいくつもありますが、調剤薬局M&Aを行うならアテックへの相談がおすすめです。アテックは、1991年に創業して以来、多くの調剤薬局M&Aを成功させてきました。これまでの経験で培ってきたノウハウを活かしたM&Aを行っているのです。
またアテックは、ファーママーケットというマッチングサイトも運営しています。このマッチングサイトは、調剤薬局を売りたいオーナーと独立したい薬剤師を結び付けてくれるサイトになります。将来に対する不安を抱き、若い薬剤師に跡を継いでもらいたいと考えているのであれば、利用を前向きにご検討ください。