複数の株主がいる場合は、前もって株を買い戻す
他の株主が譲渡に反発。裁判ざたになるケースも
M&Aの方法として「事業譲渡」「株式譲渡」「薬局経営代行」の3種類をご紹介しましたが、株式譲渡をするときには、一つ気をつけておきたいことがあります。複数の株主がいる場合は、必ず前もって株を買い戻しておくことです。
なぜなら、新オーナーの持ち株比率が低いと、他の株主にあれこれ口を挟まれて、思うように経営ができなくなるからです。最悪の場合、それが原因で、倒産することもあり得ます。
また、譲渡そのものにケチをつけられるケースも見られます。
父が開局した薬局の跡を継いだAさんは、その一例です。Aさんは、会社の株を50%持っていましたが、残りの50%はAさんのお父さんの時代から働いていた管理薬剤師のBさんが持っていました。もともとAさんはBさんと折り合いが悪かったのですが、Aさんが譲渡を決意し、譲渡先を探す旨を話したところ、Bさんの怒りが爆発。「あなたには任せられない」と別の譲渡先を探し出し、そちらに売ると主張したのです。しまいには、お互いに弁護士を立てて、一歩も引かない状態に。最終的には、弊社が間に入って、入札によって譲渡先を決め、譲渡代金を折半することで和解したのですが・・・・。株主が分散していると、このような事態が起こる可能性があるわけです。
もっとも、株の買い戻しを打診した時に、抵抗にあうことは十分に考えられます。買い戻しに応じてもらうためには、譲渡によって薬局を手放す理由を説明し、根気良く説得することが必要です。また、少し高めの値段で株を買い取ることで、相手が納得することもあります。
アテック株式会社 取締役社長 鈴木 孝雄
「薬局オーナーのためのハッピー・M&A読本」より