調剤薬局業界は、高齢化の急速な進展と、医薬分業の流れを受けて、市場規模は7.8兆円、成長率は9.3%と急速に拡大してきました。門前薬局やクリニックモール、ドラッグストアなど様々な形態の薬局が巷には溢れています。
一方、薬剤の価格引き下げや調剤報酬額の下落に加え、競争の激化もあり、調剤薬局の利益率は年々低下傾向です。今年4月の薬価改定・来年10月の消費税増税など業界を取り巻く環境は厳しさを増しています。
そうした中、薬局のM&Aの動きは、続いています。
前述した薬価や報酬額の引き下げ、競争の激化に加え、オーナーの高齢化・後継者不足によるものなど様々な理由で、大手チェーンだけでなく、中小チェーンの間でもM&Aが増加しています。
今後の薬局経営を考える中では、M&Aによるチェーン強化やグループ化、または事業の売却・譲渡を含めた選択肢を視野に入れている経営者が多くいるというのが現状でしょう。
それではM&Aはどんなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
今回は買い手(譲り受け)の側に立って分析してみます。
1.薬局をM&A(譲受)するメリット
買い手にとってM&Aの目的は様々です。買い手側の事情もあれば、売り手の状況にもよるものもあります。
事業規模拡大は、知名度の向上・仕入先との交渉力強化・リクルーティングなどの効果が得られます。自社単体では限界があった物流の効率化や、マーケット補完など相乗効果が見込めるケースがあります。
また新規で出店することに比べ、店舗用地確保・人材確保など立ち上げ時のリスクを軽減させ、準備期間も大幅に短縮させることができます。
・事業規模(市場シェア)拡大
・人材や技術の獲得
・ブランド力向上
・コスト削減
・補完効果
2.薬局をM&A(譲受)するデメリット
薬局だけに限りませんが、M&Aでは簿外債務引継ぎのリスクが伴います。事前調査やデューデリジェンス(資産査定)を通して企業価値の見極めを行うのですが、完全に把握しきれる訳ではありません。
また運営が始まってからも、従来のスタッフと買い手側のスタッフとの関係もリスク要因のひとつです。従来の取引先や、病院・開業医・医局との関係もあり、これらの関係の中でのキーパーソンの外部流出は想像以上に大きな影響があります。
・立ち上げリスク軽減 ・簿外債務引継リスク
・スタッフ間の不協和リスク
・人材流失リスク
いかがでしたでしょうか。
今回は薬局のM&Aの概要と、買い手側のメリットデメリットについてまとめてみました。
次回以降では、相場の動向などのトピックをはじめとして、各論的なトピックをとりあげ、より深く薬局のM&Aについて解説していきます。