調剤薬局の事業譲渡を検討されている方に知っておいてほしいこと

現在、調剤薬局のオーナーを務めている方の中には事業譲渡を検討されている方もいらっしゃるかと思います。しかし、そう簡単に事業譲渡ができるわけではありません。

そこで今回は、調剤薬局の事業譲渡を検討されている方に、改めて知っておいてほしいことをご紹介していきます。事業譲渡を検討されている方からよく見られる質問や事業譲渡の相場などについてもご紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

調剤薬局の事業譲渡を行う方は増えてきている

調剤薬局にオーナーとして務めている方の中には、将来的に事業譲渡を考えている、もしくはできるだけ早く事業譲渡したいという方もいらっしゃるでしょう。実はこうした事業譲渡は現在多くの調剤薬局で見られるようになっているのです。なぜ、調剤薬局で事業譲渡を行う方が増えてきているのでしょうか?

・多くのオーナーが事業譲渡の適齢期を迎えている

元々薬局というのは病院と併設されているもので、現在のように多岐に渡る調剤薬局があるわけではありませんでした。しかし、1980年に入ってからは国の方針で医療と薬業を分けて専門性を高めた方が良いという流れになったのです。

それからは病院と薬局は分かれていくことになります。すると、調剤薬局のオーナーは病院近くを中心に、それぞれで建てられていきました。

1980年に30歳でオーナーになった方も、2020年には70歳を迎えます。いくら人生100年と言われていても、オーナーの仕事は大変な部分もあるためお店を閉めようと考える方も多いでしょう。

ただ、調剤薬局は街に必要なお店でもあります。クリニックの近くに1軒しかないような調剤薬局だと、周辺地域の方やクリニックの医師から「できるだけ続けてほしい」と言われてしまい、悩んだ結果事業譲渡という形になるため、現在事業譲渡が増加しているのだと考えられます。

・薬価改定により経営が苦しくなる可能性が高い

2018年に薬価制度に関する抜本的改革が行われました。元々国が決めた薬価基準に従い、薬価が決められていたのですが、今回の改革によって卸価格を元に決定されるようになったのです。

また、これまでは2年に1度薬価改定が行われていましたが、2022年からは毎年行われることが決まりました。薬価改定で価格は下がる傾向にあるので、国民の負担は軽減されるようになります。

ただし、ここで頭を抱えることになったのは調剤薬局です。薬価改定で価格が毎回下がってしまうようなことになれば、経営状態が苦しくなってしまうのも無理はありません。まだ薬価改定の効果を受けていなくても、将来的に経営が苦しくなる可能性が高いと示唆している方が、大手企業への事業譲渡を検討するケースが増えてきているのです。

事業譲渡を検討されている方によく見られる質問

調剤薬局の事業譲渡が増えている理由についてご紹介してきましたが、事業譲渡を検討されている方の中には様々な疑問・不安を持っているという方も多いでしょう。続いては、特によく見られる質問についてをピックアップし、解説していきます。

Q1.事業譲渡の相手は大手調剤薬局グループばかりなのか?

A1.調剤薬局の事業譲渡というと、大手調剤薬局グループが中心となりますが、それ以外の企業へ事業譲渡する場合ももちろんあります。例えば、これから店舗を増やしていこうと考えている調剤薬局グループや、個人の薬剤師でオーナーを目指している方などが多く見られます。ただ、大手調剤薬局グループに事業譲渡するか、個人の薬剤師に譲渡するかでメリット・デメリットは異なりますが、資金面などを考えると、大手やこれから伸ばしていこうと考えている調剤薬局グループが案件として多いです。

Q2.事業譲渡をしたことで医師との交友が途切れてしまわないか不安…

A2.調剤薬局オーナーが勝手に事業譲渡したことで医師が怒ってしまい、トラブルに発展してしまうケースも多々あります。スムーズに事業譲渡を行うためには、やはり医師と連携を取っていくことも重要です。

オーナーだけではそういった連携が難しくても、現在は関係をサポートしてくれるサービスがあります。不安を持つ方は、後ほど詳しくご紹介するサービスを活用してみてはいかがでしょうか?

Q3.事業譲渡後の従業員はどのような処遇になるのか?

A3.例えば大手調剤薬局グループへの事業譲渡が決定したとします。一般的には事業譲渡が本格的に決定してから従業員へ告知されるのですが、事業譲渡されたからと言って全員辞めてもらうといった処遇になることはありません。

大手調剤薬局グループ側からしても新しく人材を雇うより、仕事や地域性を熟知している人材がいるのであればその人を雇った方が良いと考えているケースがほとんどです。事業譲渡されてから一定期間は急に仕事が変更されたり、勤務地が変わってしまったりすることもないでしょう。

Q4.事業譲渡を行った後、すぐに引退することは可能か?

事業譲渡を行ってからすぐに引退することは可能です。しかし、事業譲渡の期間中に全て済ませてから引退というのはかなり大変なことです。そのため、多くの方はオーナーは引退するものの、顧問などの役職について引き続き本格的な事業譲渡に向けて働いています。

もちろん、働いている期間中は顧問報酬などがしっかりと支払われるので安心です。特に医師との連携をスムーズにさせるためには、顧問として残った方が良い場合もあります。

Q5.1日にどれくらいの処方箋がないと事業譲渡できないのか?

A5.処方箋枚数だけで事業譲渡の可否は判断できません。例えば、処方箋枚数が少なく、赤字状態が続いていたり、現在すでに債務超過になってしまっている調剤薬局であっても事業譲渡が決まったケースもあります。

ただし、赤字や債務超過の場合はオーナーだけで事業譲渡の相手を見つけようとしても、譲渡につながる可能性は低いです。仲介サポートを担う企業が間に入ることで、本来であれば事業譲渡が難しいケースでも成約する可能性が高まります。

事業譲渡の相場はどれくらいになるのか?

従業員と共にこれまで築き上げてきた調剤薬局の事業譲渡を検討した場合、相場がどれくらいになるかも重要なポイントではないでしょうか?事業譲渡する際には、調剤薬局の相場の判断基準も事前に理解しておく必要があります。調剤薬局の事業譲渡の場合、一般的な価格相場は時価純資産価額・営業権・調剤技術料及び処方箋応需枚数などを踏まえて大きく変わります。

・時価純資産価額

時価純資産価額は現時点での企業価値を明確にするものです。調剤報酬証明書を作成するレセコンをはじめ、調剤機器や医薬品などは調剤薬局の資産として挙げられます。建物を含め、まずは調剤薬局の現時点での資産を踏まえ、将来性を問わず判断されます。

純資産は、それらの資産から負債を差し引いた額を表すのが特徴です。資産から負債を差し引いた純資産は、現在の価値に換算した企業価値とされるのです。調剤薬局で所有する資産によって、時価純資産価額は大きく変わってきます。

・営業権

営業権は、譲渡する店舗の営業利益を基に、将来的なリスクを差し引き、買収における付加価値をプラスして計算されます。営業権の企業価値は、1年分ではなく3〜5年先の利益も踏まえて計算されるため、事業譲渡価格が相場に対して反映されれば変動する可能性も高いのです。1年分の営業権に3年〜5年分をかけて算出しているので、反映されているかどうかしっかり確認しましょう。

・技術料・処方箋応需枚数
調剤技術料や処方箋応需枚数は、譲渡価格にも大きく関わってきます。調剤技術料を調べれば1ヶ月の売上が把握できますし、処方箋応需枚数の数が多ければその分従業員の数も多いと判断できます。

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