調剤薬局の経営は、国の制度改定や消費税の増税などによって厳しい状況になりつつあります。経営環境が難しくなってしまったことから、手放さなければいけない状況に陥っている経営者も少なからずいます。そんな中で、M&Aをすることでこれまで育ててきた調剤薬局の事業承継を行おうと考えている人も増えました。

今回は、調剤薬局業界の現状や経営の難しさ、調剤薬局のM&Aが増加している理由、調剤薬局が生き残るためのポイントなどについてご紹介します。さらに、M&Aを検討しているオーナー向けに調剤薬局のマッチングサイトを運営しているアテックについても紹介します。調剤薬局のM&Aを検討している方は、ぜひ目を通してみてください。

■調剤薬局業界はどのような状況になっているのか

まずは、調剤薬局経営が厳しいとか難しいと言われている理由から見ていきましょう。

・市場が既に成熟している

近年、医薬分業やジェネリックの推進などによって調剤薬局業界は大きな成長を遂げてきました。しかし、大手や中堅の調剤薬局を運営している会社が新しく出店するペースは落ちている状況です。国が行っている社会保障費を抑制するための政策に影響もあり、調剤薬局の市場は成熟した状態になっていると考えられます。

規模が小さい調剤薬局は成長期で数が増えましたが、成熟した状態になった現在は店舗数が多すぎる状態になっています。ライバルも多く、飽和状態になっているので、かなり経営状況は厳しいと考えられるでしょう。

・個人経営はより厳しい状況に

調剤薬局は個人経営の店舗が非常に多くなっています。大手企業の寡占化が進んでいないのはこの業界ならではの特徴ですが、大手や中堅の調剤薬局が掲げている出店戦略によって個人経営の調剤薬局は非常に厳しい状況を強いられてきました。

さらに、ドラッグストアに調剤薬局が参入したり、コンビニや大手家電量販店も参入してきたりしているため、その競争率はさらに苛烈さを増しています。大手や中堅クラスの調剤薬局であれば太刀打ちできる力を持っていたとしても、個人経営の調剤薬局では太刀打ちできません。そのため、より厳しい状況へと陥っています。

大手チェーンの調剤薬局は、大手だからこその強みを生かして集客しています。例えば、コンビニと提携してコンビニで調剤や行えるサービスを提供したり、お薬手帳をスマホで管理できるサービスを提供したりできるのは、大手チェーンだからこそです。個人経営ではそこまでのシステムを導入することができないため、大きな差が出てしまうのは当たり前だと言えるでしょう。

・調剤報酬の改定がたびたび行われている

調剤報酬の改定はたびたび行われています。医療費を透明化したり、患者の負担費を軽減したりといった理由で改定が行われるのですが、それによって経営者が厳しい状況になってしまうケースも増えています。

これまでは大手の調剤薬局や中堅の調剤薬局を対象とした改定が主に行われていましたが、今後は小規模の調剤薬局にも大きな影響を与える改定が行われる可能性が高いです。なぜかというと、政府は調剤薬局の数を減らす方向で動いているからです。そうなってしまうと、より個人経営の調剤薬局は厳しい状況になってしまうでしょう。

・後継者不足が大きな問題に

個人経営の調剤薬局が抱えている問題の中には後継者不足もあります。経営者の子どもがすんなりと承継してくれれば良いですが、親の後を継ぐケースはかなり少なくなっています。親が調剤薬局を経営していたとしても必ず薬剤師になるわけでもありません。

また、薬剤師の資格を取得したとしても、親が経営で苦労している姿をみていると経営者になりたくないと考える人もいるでしょう。そうなると、経営者ではなく調剤薬局で働くという形を選ぶようになります。

そのような状況であっても、地域にとってはとても大切な役割を担っているため、簡単に閉業することもできません。そのため、高齢で調剤薬局の経営者を続けているという人もいるのです。特に、小規模の調剤薬局で多く見られる傾向です。

・医療費の削減で収益が減っている

調剤報酬の減額や薬価差益の縮小といった医療費の削減、消費税の増税、ジェネリック医薬品の在庫圧迫などが原因となり、調剤薬局の収益はさらに減っていくと考えられます。収益が減るということは、その分経営環境が苦しい状況になってしまうということです。それも、調剤薬局のオーナーにとってつらい部分だと言えるでしょう。

■調剤薬局経営は難しくて厳しい?

調剤薬局の経営は、大手や中堅であればそこまでではないかもしれませんが、小規模な調剤薬局の場合はさらに厳しくて難しい状況になると考えられます。政府は全ての薬局がかかりつけ薬局の役割を持つように求めています。かかりつけ薬局になるためには、万が一の緊急事態に対応できるような体制を整えたり、在宅医療にも対応できる体制を整えたりといった準備が必要です。

個人が経営している小規模な調剤薬局は既に経営が厳しい状態になっているため、そこまで手が回らないというケースも少なくありません。そのため、大手の調剤薬局や中堅の調剤薬局を運営している企業の傘下に入るという選択肢が出てくるのです。

そのような状況を踏まえて、大手や中堅の調剤薬局を運営している会社では、新規出店の戦略からM&Aによる経営戦略へと移行しはじめています。大手や中堅の調剤薬局を運営している会社に加われば、厳しい現状から抜け出せる可能性が大幅に高まります。このことから、M&Aにおける買い手の需要はかなり高いことが分かるでしょう。

■なぜ調剤薬局のM&Aが増加しているのか

続いては、調剤薬局のM&Aが増えている理由について譲渡したい側と買収した側の視点から見ていきましょう。

【譲渡したい側の理由】

・経営を続けていくのが難しい

調剤薬局のM&Aを考える最も多い理由は、経営を続けていくのが難しいというものです。高齢化による健康的な問題や従業員の離職などによる人材不足が経営の継続を困難にしています。

厚生労働省が平成28年に行った「医師・歯科医師・薬剤師調査」によると、60歳以上の薬剤師は全体の17.4%となっていました。年齢を重ねるごとに体が衰えていくため、調剤薬局を譲渡したいと考えるようになるのです。

・閉業できない事情がある

経営が難しいのであれば、閉業をするという選択肢もあります。しかし、譲渡を検討している調剤薬局の中には、閉業できない事情があるケースもあるのです。

調剤薬局の中には病院や診療所のそばに店舗を構えているケースもあり、医療機関と連携することで顧客を獲得しています。そのような調剤薬局は、自分たちの都合だけで閉鎖をすることができません。そのため、M&Aを検討し後継者を探そうとします。

・閉業したくないという意思がある

店舗の閉業を避けたいという意思を持っている調剤薬局オーナーもいます。経営者としては、店舗を残して第三者に経営権を譲り、これまでの実績を継承してもらいたいと考えているのです。

地方では、唯一の調剤薬局が閉業の危機に陥っているケースもあります。そのような場合、これまで通っていた顧客を遠くの調剤薬局に通わせることになってしまいます。中には車の運転ができない人もいるでしょうし、バスも1時間に1本あるかないかという地域もあるので、閉業したくないという意思を持っている調剤薬局オーナーも多いです。

【買収したい側の理由】

・新しいマーケットを効率よく開拓できる

調剤薬局のM&Aを行うことで、新しいマーケットを効率よく開拓するきっかけになるため、積極的に行いたいと考える企業もあります。新しく市場に参入したり、他の業種から参入したりする場合は、かなりの費用と時間が必要になってしまいますが、M&Aでは負担を減らしながら新しいマーケットの開拓ができます。

また、顧客もすでについているので、売上の計上も早い段階から見込みやすいというメリットもあります。事業を軌道に乗せるための時間も短縮できるという点も大きなメリットだと言えるでしょう。

・人材確保ができる

調剤薬局のM&Aは、人材確保の観点から見ても大きなメリットがあります。薬剤師は求人を出してもなかなか採用できないケースも少なくありません。特に、小規模の調剤薬局はその傾向が顕著です。

しかし、M&Aを行えば勤務している薬剤師を引き継げるため、人材の確保が容易になります。

■調剤薬局M&Aの種類



調剤薬局のM&Aには、3つの種類があります。最後に、どのような種類があるのかご紹介しましょう。

【事業譲渡】

事業譲渡は、買い手が株式ではなく事業の全てもしくは一部を譲り受けるという方法です。いくつかの調剤薬局を経営している法人が一部の店舗だけを譲渡する際などに用いられます。営業権のみ譲渡する場合もこの方法が用いられ、事業譲渡によるハッピーリタイアを実現しているオーナーは少なくありません。

そんな事業譲渡のメリットは、売り手に譲渡の対価が入ったり、税金対策がしやすかったりすることが挙げられます。また、必要な部分だけ譲り受けることができ、簿外債務を引き継ぎ心配がないというメリットもあります。しかし、譲渡する側にとって不要な在庫や借金が残ってしまうというデメリットがあることは忘れないようにしましょう。

【株式譲渡】

株式譲渡は、自社の株式を買い手に売却することによって、法人の経営権や資産、負債などを全て譲渡する方法です。営業権や店舗、賃貸権はもちろんですが、医薬品などの在庫、調剤機器などの設備など全ての権利が売却されます。さらに、売掛金や買掛金などもそのまま引き継がれます。

株式譲渡のメリットは、オーナーに譲渡の対価が入ったり、簡単に譲渡企業の存続が出来たりといったものがあります。しかし、株式譲渡は買い手が不要な資産や借金も引き継ぐことになるといったデメリットがあることも忘れてはいけません。さらに、買い手側は譲渡側の簿外債務も引き継いでしまう可能性があるという点もデメリットに含まれるでしょう。

【薬局経営代行】

最近増えている方法として、薬局経営代行という方法があります。薬局経営代行は、薬品の在庫だけを譲り、営業権や備品、設備、レセコンなどはオーナーが引き続き所有するというやり方です。つまり、営業権などを新オーナーに貸し出して賃貸料を得るという方法になります。

事業譲渡や株式譲渡とは違い、旧オーナーが調剤薬局の所有権を保有し続けます。そのため、大きなお金が動かないため、税金を低く抑えられることが可能です。

そんな薬局経営代行のメリットには、調剤薬局を手放さずに済む、賃貸料が入ってくる、税金対策ができるといったものが挙げられます。買い手側も譲渡代金を要しなくて済みますし、開局のハードルが低いというメリットを感じられるでしょう。

■調剤薬局のM&Aを検討しているならアテックに相談を

調剤薬局の経営が難しくなった時に、M&Aを検討する経営者は少なくありません。しかし、M&Aは思い立ったらすぐに実行できるほど簡単なものではないため、どうすれば良いのか分からないまま時間が過ぎてしまうというケースもあるでしょう。そのような場合は、アテックのように調剤薬局のM&Aに詳しい仲介業者を頼るのがおすすめです。

アテックは、1991年に日本で初めての調剤薬局M&Aの専門会社として設立されました。中立で公正な立場からオーナーの理想を最大限に実現できるようなサポートを行っています。アテックでは、オーナーの手取り額を最大化できるように共に考えてくれるため、オーナーにとってアテックに相談するメリットは大きいと言えるでしょう。

また、これまでに多くの実績を残していて、現在も多くの後継者候補が登録しています。独立をしたいと考えている薬剤師も登録しているため、理想の後継者に出会える可能性が高くなっています。調剤薬局を専門として事業承継のサポートをしてきたアテックだからこそ応えられる要望もあるため、多くの人がサポートを受けたいと考えているのです。

そんなアテックは、ファーママーケットというマッチングサイトを運営しています。ファーママーケットは、調剤薬局を譲渡したい人と買収したい人を結び付けるためのマッチングサイトです。登録数はかなり多いため、条件に合う案件を見つけられる可能性も高いでしょう。

調剤薬局のM&Aでどうすべきか迷っている、後継者がなかなか見つからないといった悩みを抱えているのであれば、ぜひアテックへの相談やファーママーケットの利用を検討してみてください。アテックは調剤薬局の事情に関してきちんと理解しているため、的確なアドバイスをしてもらえます。
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