新型コロナウィルスの影響は、とても広い範囲に及んでいます。職を失ってしまったという人もいれば、時短勤務や勤務日数の削減によって収入が減ってしまったという人もすくなくありません。また、会社を経営している人の中には、経営難に陥ってしまったという人もいるでしょう。

このような影響は、薬局の経営にも及んでいるのです。今回は、新型コロナウィルスの影響で薬局経営に暗雲が立ち込めている現状や薬局経営は新しい形を取らなければいけない状況になっていること、日本薬剤師会は厚生労働大臣あてに要望書を提出したことなどについて解説していきます。さらに、経営難を抜け出すための対策の1つであるM&Aについても解説していくので、コロナウィルスが薬局経営に及ぼす影響にはどのようなものがあるか、どのような対策があるか知りたいという人は目を通してみてください。

■新型コロナウィルスの影響で薬局経営に暗雲が



新型コロナウィルスの影響は、観光業や宿泊業、外食業など多岐に渡る産業に及んでいて、大きな打撃を受けています。それだけではなく、医療業界においても外来患者の減少が顕著になり、病院や調剤薬局の減収が目立つようになっているのです。厚生労働省からは、2020年4月から7月までの調剤医療費は前の年の同じ時期と比べると、3.8%減となっていることが発表されました。そこでまずは、新型コロナウィルスによって薬局経営にはどのような暗雲が立ち込めているのかみていきましょう。

・厳しい状況にあるのは大手も個人も同じ

社会情勢の悪化によってマイナスな影響を受けるのは個人経営の調剤薬局が甥ように思われるかもしれませんが、大手企業が経営している調剤薬局でも同様です。外来患者の減少は個人病院だけではなく大病院にも言えることなので、門前薬局であるか否かもそこまで関係はないと考えられます。薬局を個人で経営しているオーナーが集まる場面では、いくらお金を借り得ているのかといった話題が頻繁に出ることからもその状況の厳しさをうかがい知ることができるでしょう。

・オンラインが普及していないことも原因の1つ

厚生労働省は、オンラインを活用した診療や服薬指導を推奨しています。しかし、オンライン診療や服薬指導はほとんど普及していないのです。医療従事者はオンラインを活用したサービスを知っていたとしても、患者側がそれを知らないことが原因の1つだと考えられています。

しかし少しずつ、オンライン化が進んでいる部分もあるため、今後は今よりもオンライン診療や服薬指導が一般的になる可能性も高いと考えられます。それでも患者の年齢層が高い場合などは対応が難しくなってしまうため、オンライン一本化することは難しいのではないかと考えることもできるでしょう。

・減収に対する対策ができていない薬局も多い

新型コロナウィルスによる減収対策ができていれば、時間の経過とともに建て直しができる可能性が高いです。しかし実際は、減収に対する対策ができていない薬局も多いため、将来的な不安が積み重なっているというケースが非常に多くなっています。派遣薬剤師の雇用を見直してコストカットしたり、在宅患者のフォローをしたりといった取り組みを行っている薬局はプラスに転じやすくなりますが、全ての薬局でそのような取り組みが行えるわけではありません。

減収に対する対策ができていないという状態が継続してしまえば、対策ができている薬局に圧倒されてしまうので、それぞれの薬局が強みを活かした対策を講じなければいけないという状況になっているのです。

■薬局経営は新しい形を取らないければいけない状況に



暗雲が立ち込めている薬局経営を良い方向へと転換するには、これまでの在り方を見直すことが重要なポイントになります。つまり、薬局経営は新しい形を取らなければいけない状況になっていると言えるでしょう。そのような中で、薬局はどのような取り組みを行っていくべきなのでしょうか。

・システムの効率化を図る

システムの効率化を図ることは、これからの時代を生き抜くために必要な取り組みだと言えます。薬剤師が行っている業務は専門性が非常に高いため、それを活かせるような環境作りを目指し、患者が感じる満足度を高める必要があります。しかし、需要の高さが相まって1人の薬剤師が行える業務には限界が訪れているという見方もあるのです。

そのような状況を鑑みると、薬をピッキングしたり、塗り薬を調合したりといった作業をより効率的に行えるようなシステム作りをしていかなければいけない状況になっているとも言えます。レセコンや服薬フォローといった面でもシステムの効率化を図ることができれば、業務をより効率的に進められるようになるでしょう。

・物販を行う

物販というのは、一般医薬品を取り揃えたり、健康食品・衛生用品などを販売したりすることを指します。物販を行うことで売上を伸ばすことにもつながりますが、処方箋がなくても薬局へ足を運ぶきっかけ作りができます。その中でコミュニケーションを取り、薬局のファンになってもらえれば処方箋を持ってきてもらうことにもつながると考えられるでしょう。

・在宅医療に力を入れる

在宅医療の在り方は都市部と地方で状況が異なるため、一概に力を入れた方がいいとは言い切れないケースもありますが、在宅医療に力を入れることで経営状況をプラスに転じられる可能性も比較的高いです。在宅医療の需要はだんだんと大きくなっているため、注力することで売上につなげられると考えられます。

しかし、在宅医療は24時間体制を取れる仕組み作りをしなければいけない、夜間の緊急対応ができるようにしなければいけないといったハードルがあります。薬剤師への負担が大きくなってしまうため、きちんと理解を得た上で参入を決めるようにしましょう。

ここで注目したいのは、そのハードルの高さです。ハードルが高いことから、参入しようとする薬局はまだそこまで多くありません。つまり、勤務している薬剤師からの理解を得ることができれば、今が参入の大きなチャンスなのです。このチャンスを逃さないためにも、在宅医療に力を入れるという方向性を前向きに考えてみると良いでしょう。

・共同購入を行う

現状では、個人経営の薬局が医薬品卸の会社に対して強気に交渉することが難しくなっています。それによって、以前と比べると薬価の差益を出しにくくなっているのです。そのような状況の中で推奨したいのが共同購入です。

共同購入というのは、薬局と医薬品卸を行う会社の間に他の会社が入って、薬価の交渉などを行ってくれるというサービスです。共同購入をすることで、個人経営の薬局でも大手チェーン薬局と同じような価格で取引できるというメリットを享受できます。近年ではそのメリットを知った個人経営の薬局がボランタリーチェーンなどに加入するケースが増えています。

薬の仕入れ価格は、利益に直結するためとても重要な要素になるので、いかに低くするかが肝になると言っても過言ではないでしょう。ボランタリーチェーンなどに加入する場合、加盟料や手数料がかかってしまいますが、それ以上の利益が出ることが前提になっています。そのため、薬局の経営を良い方向へと向けていくには共同購入を視野に入れてみても良いでしょう。

■日本薬剤師会は厚生労働大臣あてに要望書を提出



日本薬剤師会は、新型コロナウィルスの影響で経営が厳しくなっている薬局を立て直し、必要な薬を患者や国民に届けるための要望書を厚生労働大臣あてに提出しています。その要望書にはどのよう内容が盛り込まれているのかみていきましょう。

・薬局経営の財政を支援

医療機関の足を運ぶ外来患者数が減少すれば、必然的に調剤薬局の売上も比例して減少します。また、処方日数が長期化することによって、薬剤費は上がっても技術料は頭打ちになってしまうのです。処方日数が長期化すれば薬局に足を運ぶ回数は必然的に少なくなってしまい、実収入となる技術料は減少するため薬局経営には大きな打撃を与えることになってしまいます。

それだけではなく、処方日数の長期化によって薬局が医薬品を購入するためのコストが高くなり、キャッシュフローが悪化します。それによって、資金不足に陥ってしまうというケースもあるのです。

これまでに整備されていた支援策は、売上高の減少がなければ利用できないものが多いです。そのため、売り上げの大半を薬剤費が占める薬局は、技術料による収入減、キャッシュフローの急激な悪化といった理由で支援策を利用することができないという状況になっています。それを鑑み、日本薬剤師会では薬局が持つ機能を維持するための財政支援を求めているのです。

・薬局に勤務しているスタッフが感染した場合の対策

感染が疑われる場合は自宅待機をしなければいけませんが、その間の穴埋めが難しいという状況もあります。そのような状況を打破するために、薬剤師の派遣や閉鎖しなければいけない場合に他で患者を受け入れてもらえるように調整するといった仕組みを構築したいと日本薬剤師会は考えているのです。そのためには、都道府県庁やハローワークと連携し、薬局の機能を維持できるようにしなければいけないため、そこにかかる費用も支援してもらいたいと日本薬剤師会は要望書の中に記しています。

・医薬品を安定的に確保できるようにしてもらいたい

医薬品を安定的に確保できるようにしてもらいたいという要望も、日本薬剤師会の要望書の中に盛り込まれています。ジェネリック医薬日は中国やインドで生産されているケースが多いため、生産が滞った場合は薬が足りないという状況になりかねません。それでは必要な人の手元に必要な薬が届かないといった事態になってしまう可能性もないとは言い切れないため、このような要望も提示しているのでしょう。

・薬価改定の延期に関する要望

薬価は2021年4月に改訂が行われる予定となっていますが、日本薬剤師会ではこのタイミングで薬価の改定を行うべきではないと考えています。なぜかというと、患者数の減少や処方日数の長期化によって、日本国内の医療提供・医薬品流通が正常な状態ではないと考えられるためです。そのような状況の中で適切な判断が下せるとは考えにくいことから、薬価改定の延期を求めているのです。

・オンライン決済システムの導入に関する支援

医薬品の長期処方だけではなく、配送をしなければいけないケースも増えています。その中で、オンライン決済システムを導入するというニーズが高まっているのですが、導入にかかる経費は高額になってしまいます。さらに、使用するためには手数料も生じるため、簡単に導入することができないという状況になっているのです。

調剤報酬は肯定されているため、その負担がかなり大きいと感じる薬局オーナーも少なくありません。そのため、少しでも安価で使いやすいシステムを提供するという支援を日本薬剤師会では求めています。

・マスクや消毒液の不足に関する要望

マスクや消毒液は、不足しがちな状況になっています。感染対策のためにマスクや消毒液は必要で、必要だと考えられる施設に対して配布している自治体もあります。しかし、薬局に配布される量に差があり、入手ができていない地域もあるのです。薬局という場所でもマスクや消毒液は必要不可欠なので、マスクや消毒液の不足に関する要望も日本薬剤師会は要望書に盛り込んだのでしょう。

■経営状況を改善させたいならアテックに相談を



薬局経営が上手くいかなくなった場合、様々な対策を考えるでしょう。数ある対策の中には、M&Aという方法があります。これは売却することを指すのですが、それによって経営をプラスに転じさせることができたり、オーナーは売却益を得られたりといったメリットを享受できます。

アテックは、日本初の調剤薬局M&A仲介会社として創業し、これまでに多くの実績を残してきました。ファーママーケットというマッチングサイトを運営し、薬局を売りたいオーナーと買いたい薬剤師や企業の経営者を結び付けてきたのです。薬局の経営が難しくなり、手放したいという気持ちがあるなら利用を検討してみても良いでしょう。

アテックではこれまでに多くの実績を残しているので、どのようにすべきか迷っているという段階で相談することもできます。これまでの実績から得たノウハウや知識を活かし、それぞれの状況に合わせて適切なアドバイスや提案をしているのです。将来を見据えてどうすべきか決めたいのであれば、ぜひご相談ください。
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