調剤薬局の開業や独立をするためには、自己資金を用意しておかなければいけません。しかし、いったいどのくらいの資金が必要になるのか、どのような流れで準備を進めていけばいいのかといった点について疑問を抱いている人も少なくないはずです。

そこで今回は、調剤薬局業界の動向と資金繰りに関する考え方、M&Aを行うための資金と運営を始めるために必要な資金の目安、資金調達の方法について解説していきます。これから調剤薬局の開業や独立、M&Aを検討している人は、ぜひ目を通してみてください。

■調剤薬局業界の動向と資金繰りに関する考え方



まずは、調剤薬局業界の動向と資金繰りに関する考え方からみていくことにしましょう。

【調剤薬局業界の動向】

調剤薬局業界は、調剤報酬が下がっているという理由からも分かるように右肩下がりになっています。年収も想像しているよりも高くなく、みなし残業代込みが当たり前といった状況になっています。地方の場合は例外もありますが、苦しい状況になっていることは間違いありません。

近年、調剤薬局のM&Aや事業の廃止が増えていることからも、業界全体が厳しい状態にあり、個人では経営を継続するのが難しくなっていると考えられます。しかし、M&Aをするには多額の資金が必要になるため、資金が用意しやすい法人の方へ話が流れやすいという傾向があるのも事実です。もし薬剤師が独立したいのであれば、そのようなサポートを手厚く行っている仲介会社を選ばなければいけません。

【資金繰りに関する考え方】

開業資金を手に入れるためには、銀行などの融資を利用すれば良いと考える人が多いです。しかし、数千万円の資金が必要になるため融資してくれる銀行にはなかなか出会うことができません。信金がもっともハードルが低く、続いて地銀、メガバンクという順で融資のハードルが高くなっていきます。

それでは資金が用意できないと思うでしょう。そのような時に利用できるのが創業者支援機構です。創業者支援機構は、事業計画書を正しく作成し、プレゼンができれば自己資金が少なかったとしても、無担保で最大2,000万円まで融資してくれる団体です。国や地方自治体が運営しているため、安心して利用できるでしょう。

ただし、事業計画書がきちんと作成できなかったり、プレゼンが上手くできなかったりすると手持ち資金の倍までしか融資が下りないので注意しなければいけません。貯金が100万円しかない場合は200万円しか融資してもらえないということになるため、医薬品などの在庫を用意する費用も支払うことが難しくなってしまいます。

■M&Aを行うための資金と運営を始めるために必要な資金の目安



続いては、M&Aを行うための資金と運営を始めるために必要な資金の目安についてみていきましょう。

【M&Aを行うための資金】

M&Aを行うための資金には、適正な価値が存在しているのでそれを把握しておかなければいけません。それを算出するための計算式は以下の通りです。

調剤薬局の価値=EBITDA(営業利益+減価償却費)×3年分+商品在庫+固定資産

この計算式から分かるように、今後3年間で得られると予想される利益、そして現在調剤薬局が持っている資産に関しては、支払の必要があるということになります。赤字になっている場合は、営業権が実質タダのようになるという意味合いも持ち合わせています。

これらを踏まえて考えてみると、営業権の目安は0円~100万円、商品在庫の目安は100万円~500万円、固定資産の目安は0円~500万円となります。仲介会社によっては、プラスで紹介手数料が発生する場合もあるため、さらに多くの資金が必要になることも考えられるでしょう。

【運営を始めるために必要な資金】

運営を始めるために必要な資金には、いくつか押さえておくべきポイントがあります。ここでは、保険料による収入は請求してから2か月後に入金されるのでそれまでは自分自身で賄わなければいけない、薬剤師を雇わずにオーナーが1人薬剤師として勤務して事務員を1人雇う、売上げは毎月400万円で薬剤比率70%・技術料30%で計算するという前提条件に基づいて、どのくらいの資金が必要か計算していきます。

1ヶ月目は、生活費や薬剤費、事務員に対する給与、法定福利費、交通費、消耗品費、分包機などのリース代、水道光熱費、地代家賃などにプラスして、賃貸物件の保障費も必要になるのです。そのため、450万円ほどかかってしまう可能性があります。2ヶ月目以降は賃貸物件の保障費を支払わなくて良いですが、それでも350万円ほどかかってしまいます。

診療報酬はすぐに受け取ることができないため、最低でも1,000万円は資金を用意しておかないと厳しくなってしまう可能性が高いです。案件によってさらに多額の資金が必要になる場合もあるので、あらかじめどのくらいかかりそうか見積もっておくようにしましょう。

■資金調達の方法について



資金が必要な場合、融資を受けようと考えるはずです。具体的にどのような機関から融資を受けて資金調達ができるのか解説してきましょう。

【日本政策金融公庫】

日本政策金融公庫では、新創業融資制度という制度を用意し、これから開業したいと考えている人のサポートを行っています。日本政策金融公庫や提供している融資についてみていきましょう。

・日本政策金融公庫とは?

日本政策金融公庫は、一般の金融機関が行っている業務を補完するという目的で立ち上げられました。資金調達の支援や災害などが起こった際の金融などを行っています。これらの業務を通じて、国民生活の向上に寄与することを目指しています。

・日本政策金融公庫の取り組み

日本政策金融公庫が行っている取り組みは、創業支援がメインとなっています。創業支援には、創業前支援、創業時支援、創業後支援という3つがあります。それぞれがどのような支援になっているのか解説していきましょう。

創業前支援は、これから創業しようと考えている人向けの支援です。必要な情報を集めたり、相談窓口で相談したりできます。また、メルマガなどの紹介も行っています。

創業時支援は、創業をする際に必要なサポートを行う支援です。創業をする時に知っておきたい情報を手に入れることができます。創業計画書の作成方法を教えてもらったり、創業時に活用できる融資制度の提案を行ったりもしています。

創業後支援は、創業してから必要となる情報発信などを行う支援です。販路を開拓するなど、創業したばかりでは難しい部分のサポートができるサービスの紹介をしています。

・日本政策金融公庫の新創業融資制度

日本政策金融公庫では、新創業融資制度という制度を用意しています。この制度は、金利が低いという魅力を持っています。しかし、誰でも融資を受けられるわけではないので注意が必要です。

この制度を利用するのであれば、創業資金の1/10以上の自己資金が必要だと考えられています。しかし実際は、1/3以上の自己資金があった方が融資してもらえる可能性が高まるので、多いに越したことはないと言えるでしょう。

自己資金だけではなく、薬剤師としてこれまでにどのような経験を積んできたのか、事業計画書は正しく作成されているかといった点も審査ではチェックされます。つまり、薬剤師としての経験値が不足していたり、事業計画書の内容が不適切もしくは不十分だったりしたら、審査に落ちる可能性が高くなってしまうのです。

【商工中金】

・商工中金とはどのような団体か

商工中金から融資を受けるというケースも最近は増えています。商工中金というのは、中小企業組合と政府の共同出資によって作られました。そのため、安心して利用できる団体だと言えるでしょう。

そんな商工中金では、説部資金や長期運転資金などに利用できる一般的な融資だけではなく、国や地方公共団体の施策によって作られた貸付制度の取り扱いも行っています。さらに、組織化や組合共同事業支援に活用できる融資、業界団体の制度融資、地方公共団体の融資制度なども取り扱っているため、幅広いニーズに応えられる団体なのです。

・幅広いニーズに対応できる体制を整えている

また商工中金は、シンジケートローンやABL(アセット・ベースト・レンディング)、私募債受託、売掛債権流動化などの金融手法を活用しています。そのため、高度化や多様化が著しい資金調達ニーズに応えられる団体だと考えることもできるでしょう。

シンジケートローンは、資金調達の質を向上させたり、効率化させたりできます。ABL(アセット・ベースト・レンディング)は、不動産担保に依存しすぎない融資の手法として注目度が高まっています。そして私募債受託は長期的な資金調達が可能になり、売掛債権流動化は当該信託受益権を商工中金が得ることで資金の提供を行うという形になっています。

この様に幅広いニーズに応えられるのは、商工中金ならではの強みだと言えるでしょう。

【銀行】

銀行でも創業融資を受けることが可能です。具体的にどのような融資を受けられるのかみていきましょう。

・信用組合

信用組合では、創業者をサポートするためのローンを用意しているケースが多く見られます。第一勧業信用組合のかんしん未来ローン、城南信用金庫のApproach、いちい信用金庫の創業支援隊といったローンが創業者向けに用意されているものになります。

・都市銀行や地方銀行

これまでに事業経験がある場合は、都市銀行や地方銀行からの融資を受けられる可能性が高くなるので利用を検討してみても良いでしょう。銀行から融資を受けるには、決算書を実績として提示することが重要なポイントになります。もし、自分だけで手続きをするのが不安な場合は専門家に依頼することをおすすめします。

【ノンバンク】

ノンバンクから借入をするという方法もあります。銀行や日本政策金融公庫などから融資を受けることが難しい場合は、ノンバンクからの融資を検討してみましょう。金利の高さが不安に感じるという人もいるかもしれませんが、不動産や調剤報酬などを担保にすれば無担保よりも金利を抑えることができます。

ノンバンクからの融資を受ける場合は、金利だけに着目してはいけません。金利は低かったとしても、事務手数料などが発生して結果的に支払いの負担が大きくなってしまうことがあるからです。そのため、諸費用や違約金などもあらかじめ確認しておくようにしましょう。

【地域中小企業応援ファンド】

あまり聞きなれないかもしれませんが、地域中小企業応援ファンドというものもあります。これは、地域活性化のために必要な事業に対する事業へ助成金を支払っているファンドです。地域資源を活用した創業などをする際に利用できるため、利用できる可能性はあると言えます。

【地方自治体の融資制度】

地方自治体が融資制度を用意しているケースもあります。その制度を活用することもできるでしょう。ただし、融資の限度額が自己資金額とされていることが多いため、自己資金が少ない場合は期待よりも少ない金額しか借りられない可能性があることを念頭に置いておく必要があります。

【カードローン】

創業に必要な資金が少し足りない程度なら、カードローンを利用しても良いでしょう。他の融資が難しくてもカードローンであれば借りられる可能性があります。しかし、ビジネスローンは創業時に利用できない場合があるので注意が必要です。

■M&Aを前向きに考えるならアテックへ



自分自身で創業や開業をするのではなく、M&Aを行いたいと考えるケースも多いです。その方が設備面などのメリットを享受できるからです。M&Aを行うのであれば、調剤薬局のM&Aを専門的に行っているアテックへご相談ください。

【アテックとは】

アテックは、日本で初めて調剤薬局のM&Aを行う会社として創業されました。これまでに多くの案件を成功させてきたという実績を有しています。中立で公正な立場でオーナーの理想を叶える、老舗ならではの実績で後継者候補が多く登録している、スピーディな問題解決を実現できるといった強みを持っている会社です。

【アテックが運営するファーママーケット】

アテックはファーママーケットというマッチングサイトを運営しています。このマッチングサイトは、調剤薬局を譲渡したいと考えているオーナーと買収したい人・企業をつなぐために作られました。最近は、調剤薬局を買収したいと考えている人からの問い合わせも増えています。

将来を見据えた事業をスタートしたいのであれば、ファーママーケットの利用やアテックへの相談をしてみても良いでしょう。
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