今回は、調剤薬局経営の周辺環境はどのように変化しているのか、どのような課題を抱えているのか、どうすれば生き残ることができるのかといった点について解説していきます。生き残るためにM&Aなどの対策を考えている経営者や薬剤師は、ぜひ目を通してみてください。
■調剤薬局経営の周辺環境は大きく変化している
はじめに、調剤薬局経営の周辺環境はどのように変化しているのかという点からみていきましょう。
・「患者のための薬局ビジョン」が策定された
診療報酬や制度は2年ごとに改正されてきました。そのたびに調剤薬局は変化することを余儀なくされてきたのです。そんな中で、厚生労働省が「患者のための薬局ビジョン」を策定し、薬局の再編が急激に進められるようになりました。
「患者のための薬局ビジョン」というのは、患者本位で考えて医薬分業を実現するために策定されたものです。このビジョンは、超高齢化社会が訪れた時により質の高い医療体制や介護体制を維持するという目的を持っています。薬局や薬剤師は、服薬情報の一元化と継続的把握、24時間対応、在宅対応、医療機関などとの連携という機能を持つ必要があると定められているのです。
これを実現するための設備投資や人件費の増加は、調剤薬局の経営にとって大きな問題になると考えられます。それだけではなく、大手チェーンが参入したり、調剤報酬が大きく見直されたりすると、中小の調剤薬局はより苦しい状況になってしまうでしょう。そうなることを回避するには、収益を増やすための方法を考えなければいけません。
・基本に立ち返る必要性が高まっている
調剤薬局を経営するためには、使いやすいと感じてもらえるかが重要になります。
入りやすい雰囲気や気軽に相談しやすい雰囲気があるか、医療機関と連携はできているか、患者様の様子をきちんと把握できているか、ジェネリックなどに関する正しい情報提供ができているかといった点は大切なポイントです。そのため、これらができているか基本に立ち返って見直してみる必要があります。
運営においても、無駄な発注が行っていないか、定期的に棚卸ができているか、在庫管理はきちんと行われているか、経営状況の把握や分析はできているか、加点できるような調剤を行っているかといった点を見直す必要があるでしょう。さらに問題点があった時には、改善に向けた取り組みができているか否かも重要なポイントになるので意識しておく必要があります。
基本的な部分がしっかりとできていれば、経営力が高いということになります。調剤薬局の経営は今後さらに厳しくなっていくと予想されるため、それに耐えられるような体力を保つことができるかどうかが重要になると予想できるでしょう。
■調剤薬局が抱えている課題とは?
調剤薬局は今、様々な課題を抱えています。続いては、調剤薬局がどのような課題を抱えているのか見ていくことにしましょう。
・24時間対応が求められている
調剤薬局はこれまでとは違い、開局している時間外にも対応できるような体制になることが求められています。大手チェーンであれば対応できるかもしれませんが、家族経営の小規模な調剤薬局だとそれが難しくなってしまいます。
平成28年に行われた診療報酬の改定では、200床未満の病院や診療所を対象にした地域包括診療料が導入されました。これは、24時間体制で在宅診療を行う場合に発生する報酬です。診療報酬が高まる仕組みではありますが、届け出はわずか204の施設に留まっています。
24時間体制にした場合、新しく薬剤師を雇用しなければいけません。そのためのコストが発生するだけではなく、以前から働いている薬剤師の負担が増えることも懸念されているため導入が進まないのではないかと考えられます。
・在宅訪問のニーズも高まっている
近年、在宅医療を提供するための体制も整えられるようになってきました。在宅医療には薬剤師の存在も必要不可欠です。自宅や高齢者施設における薬の管理を行うというニーズが高まると予想されるからです。
しかし、在宅訪問を行うと訪問計画を作成したり、訪問記録の共有を医師や看護師などとしたりといった業務が増えることになってしまいます。そのため、薬剤師の人数が少ない小規模な調剤薬局の場合は参入を躊躇ってしまうケースが多くなってしまうのです。新たに薬剤師を雇用する余力がないと余計ハードルが上がってしまいます。
・服薬管理も重要な仕事の1つ
飲み忘れてしまった薬がたくさん残っているというケースも多く見られます。処方される薬の数が多い高齢者ほど飲み忘れてしまう確率が高いです。慢性疾患だと自覚症状が乏しいことが飲み忘れの原因になってしまったり、服薬しても効果が感じにくくなることが原因になったりして、勝手に服薬を中止してしまうケースもあります。
薬を飲み忘れたことによって症状が悪化してしまうだけではなく、併用しなければいけない薬を飲み忘れたことで重篤な副作用が生じてしまう場合もあります。そうなることを防ぐために、お薬カレンダーを活用したり、服薬コンプライアンスを向上させるための工夫を凝らしたりしているのです。それでも、のも忘れはあるので、服薬管理にはまだまだ課題が残されていると言えるでしょう。
・在庫管理も大きな負担に
後発医薬品の利用が促進されています。それによって、調剤薬局には多くの医薬品が常備されているのです。後発医薬品はとても種類が多くなっているため、その管理は薬剤師にとって大きな負担となっています。
大手チェーンの場合は、他の店舗と在庫を共有するなどの対応が可能です。しかし、中小の調剤薬局はそのようなネットワークを持っておらず、自分たちで抱えなければいけないという状況になっています。医薬品は安全に管理しなければいけないので、それもこれから解決策を考えるべき重要な課題だと言えるでしょう。
・ドラッグストアが力を付けている
ドラッグストアの中には、調剤薬局を併設しているところが増えてきました。スーパーにも負けないくらい安価な商品を販売している調剤薬局は、利用客の数も非常に多くなっています。福利厚生や働きやすさ、給与といった面から新卒の薬剤師や若手薬剤師は、ドラッグストアでの勤務を希望するケースも増えています。
ドラッグストアや大手チェーンの薬局に若い薬剤師、優秀な薬剤師が集まってしまうのは中小の調剤薬局にとって大きな痛手になってしまうのです。福利厚生などはどうしてもドラッグストアや大手と比べると劣ってしまうため、優秀で若い薬剤師を雇用しにくくなっているという点も大きな課題だと言えるでしょう。
■調剤薬局が生き残るためのヒントとは?
調剤薬局の生き残りはとても厳しい状況になりつつあります。そのような状況下でもなんとか生き残るための方法を見つけ出したいと考える調剤薬局のオーナーは少なくありません。どうすれば調剤薬局が生き残れるのか、そのヒントについて解説していきましょう。
・地域薬局としての役割を担う
1つ目のヒントは、地域薬局としての役割を担うという点です。これまでは、大型病院の近くに店舗を構える門前薬局が主流となっていました。門前薬局は、薬のスペシャリストとして医師が出した処方をダブルチェックするだけではなく、スムーズな薬の受け取りができるような体制を整えるといった需要を満たすための調剤薬局です。
重要な役割を担っている門前薬局ですが、「患者のための薬局ビジョン」では門前ではなく地域への立地を推進しています。なぜかというと、車いすだったり、高齢で薬局まで足を運ぶのが難しかったりする人の負担が大きいという指摘があったからです。それだけではなく、病院へ行くほどでもないけど相談に乗ってもらえるような場所が欲しいというニーズも高まりを見せているため、より地域に密着した調剤薬局は必要だと考えられるようになったのだと考えられます。
また、在宅医療のニーズが高まっていることも地域薬局としての役割を担う必要性を高めていると考えられます。2021年8月には地域連携薬局と専門医療機関関連薬局から最適な方を選択できるようになりました。それも、薬局の在り方を大きく変える要因の1つになるでしょう。
それだけではなく、2020年4月からスタートしているオンライン服薬指導も調剤薬局の在り方に大きな影響を与える要因になります。自宅にいても薬局と連絡を取りやすくなるため、立地に依存している調剤薬局は苦しい状況になる可能性が高いでしょう。
・健康ステーションとしての役割を担う
2つ目のヒントは、健康ステーションとしての役割を担うという点です。「患者のための薬局ビジョン」の中に、調剤薬局が健康サポート機能を持つということが盛り込まれています。
健康をサポートする取り組みは多岐に渡ります。例えば、健康に関する情報をまとめた冊子を作ったり、多く見られる相談とその解決策を説明したポスターを薬局内に作成したりといった方法が考えられるでしょう。処方された薬を受け渡すだけではなく、市販の薬や健康サポート食品を販売して利益を高めている調剤薬局もあります。
また、調剤業務だけではなく介護に関する相談を受け付けている調剤薬局も存在しています。薬剤師や調剤事務のスタッフがケアマネージャーの資格を取得し、介護に関する相談にも的確なアドバイスや提案ができるような体制と整えているのです。介護に関する不安や悩みをどこに相談したら良いのか分からないというケースも少なくないため、調剤薬局がその窓口を担えるようになると安心感が高まるという人も増えることでしょう。
・在宅医療への対応力を強化する
3つ目のヒントは、在宅医療への対応力を強化するという点です。調剤薬局における処方箋の伸び率は鈍化傾向にありますが、居宅療養管理指導に関しては増加傾向にあります。居宅療養管理指導というのは、要支援や要介護に認定されていて、通院が難しい人を対象にしたサービスのことです。
このサービスを利用する人の自宅に、医師や看護師、薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士などが訪問し、健康管理や療養中の様々な指導などを行います。住み慣れた自宅で安心して過ごせるようにするためのサポートだと言えるでしょう。調剤薬局では、薬の効果を確認したり服薬チェックをしたりするために週に1回訪問する、介護付有料老人ホームなどの高齢者施設と積極的に連携するなどの取り組みを行う必要が出てきます。
2021年4月以降に行われる介護報酬の改定にも要注目です。居宅療養管理指導を担う職種の中でも、調剤薬局に務めている薬剤師への給付が伸びています。要支援や良い介護になると薬局に足を運ぶことが難しくなってしまうため、ニーズが急速に伸びていくのではないかと考えられるからでしょう。
■調剤薬局や薬剤師の将来性を確保したいならアテックへ
調剤薬局を取り巻く状況が変化している中で、オーナーは今後の在り方を考えなければいけない状況になっています。経営している調剤薬局や雇っている薬剤師の将来を潰さないためにもなんとかしなければいけないと思っている人もいるでしょう。そのような場合は、調剤薬局のM&Aを行っているアテックまでお気軽にご相談ください。
アテックは、1991年に創業した調剤薬局のM&A仲介会社です。創業してから今まで、多くの調剤薬局オーナーをサポートしてきました。独立したいと考えている薬剤師とのマッチングを行うことで、双方のニーズに応えられるような結果を導き出してきたのです。「21世紀の薬局を元気にする!」というスローガンを掲げ、薬局と医療機関が発展できるような事業を行っています。
そんなアテックが運営しているのがファーママーケットというマッチングサイトです。ファーママーケットでは、調剤薬局を譲渡したいと考えているオーナーと買収を検討している人を結び付けています。買収を検討している企業だけではなく、独立を考えている薬剤師も登録しているため、オーナーの希望に合う経営をしてくれる後継者を見つけやすい環境が整っているマッチングサイトだと言えるでしょう。
調剤薬局が生き残るためには、今後の動向を踏まえて検討しなければいけません。どうしたら良いか分からない、自分の力では解決が難しそうだと感じているなら、ぜひアテックまでご相談ください。