調剤薬局にとって、調剤報酬改定が与える影響が大きいことをご存知でしょうか?調剤報酬改定は、国が定期的に改正するもので、現在多くの中小・個人経営の調剤薬局が経営難を不安視しています。

そもそも、なぜ調剤報酬改定は定期的に行われる必要があるのでしょうか?また、実際に調剤報酬改定によって調剤薬局経営にどのような影響が出るのか、見ていこうと思います。

■調剤報酬改定が必要とされる理由



そもそも調剤報酬は、健康保険法に基づいた診療報酬の1つのことで、医科報酬・歯科報酬と同じ扱いとなっています。国民全員が公平に医療サービスを受けられるよう、国が医療に関する様々な価格を決めています。

調剤報酬は基本的に2年に1度の頻度で改正されており、変化する社会情勢に合わせて医療費の透明性確保や患者負担額軽減などを目的に実施されるものです。つまり、調剤報酬改正で国民が安心して医療サービスを受けられるような仕組みづくりの一環という訳です。

・透明性確保

様々な医薬品が製造・開発される中で、製造原価・研究開発費等の情報は多くの場合企業秘密とされ非公開情報となっています。それらの情報が開示されてしまうと、医薬品の取引価格算定で競合が有利になる可能性があるからです。

それでも薬価算定の流れをはじめ、薬価算定の理由などを明確化すれば透明性が高まります。企業秘密を守りつつも、医療費の透明性を高めることで、患者が安心して利用しやすくなります。

・患者負担額軽減

調剤医療費は、医薬分業によって入院外医療費から調剤医療費に変わっているため、負担額が年々増加しているのが現状です。さらに、高齢化や人口減少に伴い、患者の調剤医療費負担額は増す可能性が高いと言われています。全国民が十分な医療サービスを受けられるようにするためにも、患者の負担額軽減は、国を挙げて取り組むべき重要課題とされています。

■調剤報酬改定による影響は?



では、調剤報酬改定によって、調剤薬局業界はどのような影響を受けることになるのでしょうか?具体的には、調剤薬局の経営難・大手チェーンの締め付け・薬剤師不足などが挙げられます。

・特に中小・個人調剤薬局の経営が厳しい

厚生労働省は、令和元年に「調剤業務のあり方」の見直しを公表しています。その内容には、これまで薬剤師のみが行っていた業務の一部を、薬剤師以外の従業員が行えるようにするといった記載がありました。

例えば、ピッキング作業や医薬品の数量チェック・棚入れ・郵送などです。これらの調剤業務はこれまで薬剤師が行っていましたが、調剤報酬改定によって調剤補助員が行えるようになっています。

しかし、結果的に薬剤師の調剤業務量が削減されたことになり、薬剤師の技術料が減額される可能性が高くなっているのです。技術料減額となれば、収益性が低下して経営が厳しくなる調剤薬局も出てくるでしょう。

・調剤薬局が減らされる?

近年、調剤薬局業界では大手チェーンの参入が著しく、店舗数が急拡大しています。最近では、ドラッグストアに処方箋の受付や調剤業務を行うケースも増えてきており、全国でおよそ6万軒もの薬局が存在すると言われています。

国は、多過ぎる薬局を6万軒から3万軒まで減らす必要があるとして、特に急拡大を続ける大手チェーンの減益を図っています。実際に、平成30年の調剤報酬改定では、大手の調剤薬局が減益となりました。

また、国のかかりつけ薬局増加促進のため、病院前に点在する調剤薬局に対して調剤基本料引き下げをおおなっています。今後は、大手チェーンだけでなく、中小・個人調剤薬局にも影響が出ることが懸念されています。

・深刻な薬剤師不足緩和

少子高齢化でどの業界でも人材不足が大きな問題になっていますが、それは調剤薬局でも同様です。特に薬剤師不足が深刻で、慢性的な人で不足に陥っています。

そんな薬剤師不足緩和措置として、国は育児・介護を行っている者に対して、「週4日以上かつ24時間以上」の勤務を認めています。結婚・出産・育児・介護などで仕事との両立が厳しかった女性に対し、ワークライフバランスを考えた緩和措置となりました。

■そもそも調剤薬局の経営は難しい?



調剤報酬改定で厳しい経営状況になっている調剤薬局も少なくありません。調剤報酬改定で人手不足緩和が期待される一方で、懸念材料は山積みなのです。

その1つが、経営者の高齢化です。現在、調剤薬局業界では経営者の高齢化によって後継者をどうするかという問題を抱える所が増えてきています。事業そのものには問題なくても、後継者がいないとなると事業存続が厳しく、最悪の場合廃業になりかねません。

続いて、大手チェーンの規模拡大も、中小・個人調剤薬局にとっては大きな問題です。調剤報酬で大手チェーンの減益が進められていても、ドラッグストアの調剤薬局業界参入が加速や、第1類医薬品をはじめとする薬局医薬品の取り扱い開始などによって、中小・個人調剤薬局は経営が厳しくなっているのです。

また、薬剤師不足緩和措置が掲げられているとはいえ、今後も薬剤師不足は続くとみられています。薬剤師不足の主な原因は、薬学教育の6年制開始や調剤薬局を併設したドラッグストアの増加、女性のライフイベントに伴う休職などです。

薬学教育6年制が開始されてから、薬学系の大学・学部・学科は拡大しました。しかし、4年制から6年制になったことで薬剤師を目指す若者が少なからず減少しています。

また、医薬分業や高齢化によって、特に地方においては薬剤師不足が深刻化しています。国の緩和措置で薬剤師不足緩和が期待されてはいるものの、薬剤師は全体の6割が女性ということもあり、ライフイベントに伴う休職や退職もまだまだ多いのが現状です。

定期的に行われる調剤報酬改定も、調剤薬局を経営する側にとっては厳しい改定となるケースが多いです。大手チェーンが急拡大したことで、増えすぎた調剤薬局を減らす取り組みが行われています。しかし、今後は大手・中小・個人調剤薬局に関わらず、薬局の数そのものを減らす方針にする可能性も高いです。

医療費の透明化や患者の負担額軽減など、国民が適切な医療サービスが十分に受けられるように行われる調剤報酬改正ですが、経営者にとっては益々厳しい状況になることが予想されているのです。

■厳しくなる調剤薬局経営!生き残るためには



調剤報酬改定は、調剤薬局の経営者にとっては事業存続危機にもなり得ます。調剤薬局経営は今後さらに厳しくなるのではないかと言われている中、生き残るためにはどのような対策を講じれば良いのでしょうか?

・医療機関との連携強化

かかりつけ薬局の推進が求められる中、調剤薬局は医療機関との連携強化が重要です。調剤薬局は、処方箋で調剤業務を行う薬局医薬品が大きな収入源となっています。医療機関との関係を高めることにより、売り上げアップにつながるのです。

例えば、入院等で病院から薬を処方された場合、患者が普段どんな薬を飲んでいるのか病院側は把握できていないため、その都度確認する必要があります。病院と調剤薬局の連携が密に取れていれば、この患者が普段どのような薬を飲んでいるかが事前に把握できるでしょう。

大きな病院前にある調剤薬局ならば、近隣の調剤薬局との差別化を図るチャンスにもなります。多くの医療機関から、連携を強化するメリットを感じてもらえるように、かかりつけ薬局として患者の疑問や不安に応え、医療機関との関係性を深めていく必要があります。

・地域支援体制加算取得

平成30年の調剤報酬改定で、「地域支援体制加算」と呼ばれる制度が新設されました。地域支援体制加算制度は、地域医療に貢献する調剤薬局に対して調剤報酬点数の加点を行うという特別な制度です。

一人ひとりの患者の管理・薬の服用指導や、在宅や夜間休日などの対応など、患者の様々なニーズへの対応が対象となります。近年、調剤報酬改定では、対物業務の技術料引き下げと同時に、対人業務に対する評価が高くなる傾向にあります。対人業務充実を図り、地域支援体制加算を取得することが、生き残りの鍵になるかもしれません。

・積極的な薬剤師採用

薬剤師が慢性的な不足から、優秀な薬剤師を積極的に採用する必要があります。ドラッグストアの調剤業務進出によって、最近では特に都市部を中心に薬剤師の争奪戦が起こっていると言われています。

地方では薬剤師不足が深刻な状況になっていますが、高齢者の比率が高いエリアであれば、在宅医療に携わる機会もあり、薬剤師としてのスキルアップを図ることができます。特に地方の調剤薬局経営者は、そうしたメリットを活かし、サービスの質を高めるために優秀な薬剤師を積極採用が求められるでしょう。

・大手チェーンの傘下に入る

中小・個人調剤薬局において経営が厳しく、後継者問題も抱えている場合には、大手チェーンの傘下に入るというのも方法の1つです。調剤報酬改正で調剤薬局経営が厳しくなる状況の中、大手チェーンもまた生き残りをかけて業界再編を目指しています。

地域に根差した調剤薬局を傘下に置くことは、大手チェーンにとっても大きなメリットになります。店舗数を拡大している大手チェーンの傘下に入り、生き残りを図るのも賢明な判断と言えるでしょう。

■経営転換を図るなら薬局M&Aも視野に



今後、調剤薬局経営を存続させるために薬局M&Aが活発化するのではないかと言われています。薬局M&Aは、その名の通り調剤薬局の譲渡・継承のことです。

少子高齢化は進む中で、経営者の高齢化や後継者不在は事業存続において大きな問題です。薬局M&Aでは、専門家や仲介会社のサポートを受け最適な譲渡先を探すことができます。譲渡先としては、上述した大手チェーンのほか、新規参入の企業が主です。

地域に根差した調剤薬局は、医療機関や患者からの信頼も厚く、かかりつけ薬局として優遇されていることが多いでしょう。新規参入の企業であれば、大手チェーンよりもさらに地域との関係性が薄いだけでなく、知名度もありません。薬局M&Aで買収することで、地域に根付いたかかりつけ薬局を経営できるのは大きなメリットです。

また、薬局M&Aを検討している調剤薬局経営者にとってもメリットがあります。後継者が見つかるだけでなく、創業者利益として収入が得られるという点も大きいでしょう。また、これまで一緒に働いてきた従業員の雇用存続を守ることもできます。

■薬局M&Aならアテック・ファーママーケットがおすすめ



より良い薬局M&Aを行うためには、積極的な情報収集と信頼できる専門家や仲介会社を見つける必要があります。中でも国内で初めて薬局M&Aの専門会社として設立した薬局経営総合支援アテックは、経営者の意向に沿ってハッピーリタイア実現に向けた取り組みを行っています。薬局M&A専門の会社として歴史も実績もあるため、安心して任せることができるでしょう。

アテックでは、事業継承候補者の登録者数が多く、大手チェーンや新規参入企業はもちろん、独立希望の薬剤師紹介も可能となっています。調剤薬局経営経験のあるスタッフや薬剤師のスタッフが在籍しているため、経営者に寄り添って対応してくれます。

また、アテックは調剤薬局を譲渡したい経営者と独立や買収を希望している経営者や薬剤師をマッチングするサイト「ファーママーケット」も運営しています。独立を希望している薬剤師の条件には、開局希望地をはじめ総予算や熱意などが記載されているので、譲渡したいと思える人を見つけることができるかもしれません。

将来を見据えて最適な譲渡先を見つけるためにも、ファーママーケットは役立てられているのです。譲渡側は仲介料が無料なので、まずは気軽に相談してみると良いでしょう。

定期的に改正される調剤報酬は、調剤薬局業界にとっては経営存続が困難になるケースが少なくありません。近年では、厳しい状況を乗り切るために、薬局M&Aを利用する経営者も増えてきています。

アテックやファーママーケットなどの信頼できる会社を活用して、事業継承を考えてみるのも方法の1つです。経営する調剤薬局の将来が不安という方も、まずはアテックに相談してみてはいかがでしょうか?
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