薬局を開業するために、どのような条件をクリアすれば良いのか、必要な資格、申請の方法などに疑問を抱く人も少なくありません。薬局の開業には許認可が必要になるため、思い立ったらすぐに開業することは不可能です。また、薬局とドラッグストアの違いについても知っておく必要があります。

そこで今回は、薬局とドラッグストアの違いや薬局を開業するための条件、開業するための申請方法、業前に取得しておくと役立つ資格についてご紹介します。また、独立して開業する方法「M&A」についても解説するので、これから薬局を開業したいと考えている人はぜひ目を通してみてください。

■薬局とドラッグストアの違いとは?

はじめに、薬局とドラッグストアの違いからみていきます。

一般的に薬局と称されるものには、保険薬局(調剤薬局)、ドラッグストア、○○薬店、××薬品といったものがあります。薬を取り扱っているという点では同じですが、調剤業務ができるかどうかに大きな違いがあるのです。

保険薬局(調剤薬局)は、保険診療で発行された処方箋に基づいた調剤業務をおこなえます。薬剤師を店舗管理者として置かなければいけません。

それに対して、ドラッグストアや○○薬店、××薬品といった店舗販売業の場合は、医薬品の販売はできます。しかし、調剤業務をおこなうことはできません。店舗管理者には、薬剤師もしくは登録販売者をおく必要があります。

店舗販売業をおこなう際に必要な登録販売者は、薬剤と違って取得しやすい資格です。登録販売者だけ在籍している場合は、第二類と第三類の医薬品だけ取り扱えます。薬剤師が在籍している場合は、安全に使用するために注意が必要とされる第一類の医薬品を取り扱うことができます。

保険薬局(調剤薬局)と店舗販売業では、取り扱える医薬品に大きな違いがあるのです。

■薬局を開業するための条件はある?

薬局を開業するための条件はどうなっているのでしょうか?ここでは、条件の有無について解説していきます。

薬局を開業するための条件の中に、薬剤師資格の有無があると思っている人も少なくありません。しかし、ただ開業したり、経営したりするだけであれば薬剤師資格を必ず有していなければならないわけではないのです。オーナーが薬剤師の資格を持っていない場合は、店舗管理者として薬剤師を置く必要がありますが、それをクリアできれば調剤薬局は開業できます。

また、薬剤師の配置以外にも、薬局開設許可や保険薬局指定を受けること、調剤室を設けることも条件に含まれています。基準薬局制度の認定を受けるためには、その他にもクリアしなければいけない条件があることも忘れてはいけません。基準薬局制度は日本薬剤師会によって作られたもので、地域医療の貢献に関する基準をクリアした場合に認定されます。

都道府県薬剤師会認定基準薬局の認定基準には、責任を持って処方箋を調剤する・一般用医薬品などを適切な方法で販売している・地域の医療・福祉・保健に貢献している・十分な知識や経験を有する薬剤師が在籍していることなどが盛り込まれています。その他にも、薬学生の実務実習を積極的に受け入れている・災害時の救援活動に関する協力体制を整えていることなどの条件も満たす必要があります。

■薬局を開業するための申請方法は?

調剤薬局を開業するためには、開業申請が必ず必要です。ここでは、具体的な請方法について解説していきます。

調剤薬局の申請をするためには、まず薬局の平面図を作成しなければいけません。医薬品安全課もしくは県の保健所などで図面による事前相談をおこないます。そして、医薬安全課や県の保健所窓口、県のホームページからダウンロードのいずれかで入手できる申請書類を記入します。

図面の修正があれば修正し、問題がなければ図面に基づいた工事が可能です。薬局医薬品製造業許可も合わせて受けるためには、検査設備利用証明書の交付を受けてから工事に取り掛からなければいけません。検査設備利用証明書は、指定試験検査機関を利用する場合に必要になります。

申請書類が整ったら医薬安全課もしくは県の保健所に提出します。書類に不備がある場合は再度提出しなければいけません。しかし、問題がなければ施設調査の日程が決定されます。

施設調査が完了したら、解説許可が得られます。その後、それぞれのエリアにある厚生局の保険医療機関指定申請書を提出してください。保険医療機関の認定が受けられます。

新規で調剤薬局を開業するためには、かなり時間がかかってしまいます。場合によっては修正が必要な場合もあるので、時間に余裕をもって準備してください。

■開業前に取得しておくと役立つ資格について

調剤薬局を開業するために特別な資格は必要ありません。薬剤師が開業する場合は、店舗管理者を別に置く必要もありません。つまり、特別に資格を取る必要がないのです。

しかし、これからの時代は薬剤師として処方箋の内容に則った調剤をしたり、薬歴管理をおおなったりするだけが仕事ではなくなります。超高齢化社会を目前としている現在、調剤薬局は健康をサポートするための役割、地域包括ケアシステムにおける在宅医療への参入、他の職種との連携も期待されています。

薬剤師という資格以外にも持っておいた方が良いと考えられる資格があります。では、具体的にどのような資格をもっておくべきなのでしょうか?

【認定薬剤師】

認定薬剤師は、薬剤師として生涯に渡って研鑽することを認定する資格です。取得の難易度はそこまで高くありません。

かかりつけ薬剤師指導料やかかりつけ薬剤師包括管理証の算定要件に含まれています。薬局の経営にも大きく関係するため、優先的に取得した方が良い資格だと言えます。

研修会や学会で所定の単位を取得することで申請可能となる資格です。新規申請の場合は40単位、更新申請の場合は30単位の取得が必要となります。試験や口臭などを受ける必要はありません。

研修会や学会への参加が難しい場合は、e-ラーニングなど別の方法で単位を取得することもできます。簡単に取得できる資格なので、まずは認定薬剤師から取得する人も少なくありません。

【ケアマネージャー】

ケアマネージャーは、介護保険制度におけるケアマネジメントをおこなうために必要となる資格です。介護支援専門員が正式名称となっていますが、ケアマネージャーやケアマネと呼ばれることが多いです。

ケアマネージャーの資格を取得すると、介護を必要としている本人や家族から相談を受け、適切な介護保険サービスを使えるようにするためのケアプランを作成できるようになります。要介護認定の関する業務、給付管理に関する業務などをおこないます。

この資格を取得するためには、1年に1回おこなわれている試験に合格しなければいけません。介護福祉関連の資格の中では難易度が高い資格として知られています。また試験を受けるためには、介護支援専門員実務研修を受講し、指定された業務を5年以上かつ900日以上経験することが条件とされているため、受験するハードルも高いです。

【薬物療法専門薬剤師】

薬物療法専門薬剤師は、薬物療法に関する多岐に渡る知識や技術、臨床能力を有する薬剤師の養成を目的として生まれた資格です。他の医療従事者と連携して薬物療法を実施し、治療を受けている人に対して大きな利益をもたらす存在だと期待されています。

薬物療法専門薬剤師の資格を取得するためには、日本医療薬学会の会員として5年以上継続している、薬物療法に関する研修歴が5年以上ある、薬物療法の講習会を過去5年間で50単位以上履修していることなどの条件があります。また、症例報告や学会発表、学術論本などの実績も必要です。条件も比較的厳しく、試験にも合格しなければいけないため、取得の難易度はかなり高くなっています。

【サプリメントアドバイサー】

サプリメントアドバイサーは、サプリメントや保健機能食品を一般消費者に対して啓発するための資格です。予防医学やセルフメディケーションに対する関心が高まっている現在、注目されている資格の1つとなっています。専門的な知識を活かし、それぞれの状況に合わせた適切なアドバイスをおこない、健康的な生活を送れるようにサポートできるようになります。

サプリメントアドバイサーの資格を取得するためには、通信教育の受講が必要になるケースが多いです。NRNRサプリメントアドバイザーの場合であれば、日本臨床栄養協会の会員になり、通信教育の受講や日本臨床栄養教会学術大会への参加で研修単位を取得する必要があります。必要な単位を取得したら認定試験を受け、合格するとサプリメントアドバイサーを名乗れるようになります。

【日本糖尿病療養指導士】

日本糖尿病療養指導士は、糖尿病の治療をおこなっている人の体質や罹患期間、合併症などを考慮し、それぞれに適したケアを提供できるようになる資格です。栄養指導や糖尿病教室などがおこなえるようになります。薬剤師でこの資格を取得する人も多いですが、看護師や理学療法士といった医療従事者も取得できます。

資格を取得するためには、所定の条件を満たしている医療機関で過去10年以内に2年以上継続して糖尿舞踊患者の療養指導業務に従事していなければいけません。また、その期間中に1,000時間以上の糖尿病患者の療養指導をおこなっていることも条件に含まれています。さらに、講習会を受講したり、糖尿病療養指導の自験例を10例有したりといった条件もクリアしなければいけません。

上記の条件をクリアするだけではなく、認定試験に合格しないと取得できない資格です。働いている場所によっては条件クリアが難しいとされています。しかし、試験自体の難易度はそこまで高くないとされています。

これらの資格を取得することで、開業後におこなえる業務の幅も広がるため、取得するメリットは大きいです。他の調剤薬局と差別化するためのポイントにもなります。

■薬局を開業するメリット・デメリット

調剤薬局を開業するなら、どのようなメリット・デメリットがあるのかも知っておく必要があります。では、どのようなメリットとデメリットがあるのかみていきましょう。

【メリット】

・定年にとらわれることなく働き続けられる

開業すると、リタイアの時期を自分自身で決められるようになります。一般的に定年退職をする時期になったとしても仕事を続けたいと思えば続けられます。また、後継者がいるなら早期リタイアも可能です。

自分自身の将来設計に合わせた生活が送れるという点は、開業した場合ならではのメリットです。

・自由な働き方ができる

開業すると自分自身のライフスタイルに合わせた自由な働き方ができます。自分自身がバリバリと現場で仕事をこなしても良いですし、あくまでもオーナーとして経営だけするというやり方もあります。勤務するより自由な働き方を選べるという点も、開業する大きなメリットです。

【デメリット】

・経営が安定しない場合がある

個人の調剤薬局は、社会情勢の変化による影響を受けやすいです。そのため、経営が安定せず、思っていたような結果が得られない可能性もあります。それを考慮した経営計画を立てる必要があります。

・公私混同してしまう可能性がある

経営者になると仕事とプライベートの境目が曖昧になってしまうことも珍しくありません。そうなってしまうと、上手くいかなくなってしまう可能性が高いです。そのため、仕事は仕事、プライベートはプライベートでしっかりと割り切れる人の方は向いていると言えます。

■薬局を開業するならM&Aという方法も知っておこう

調剤薬局の開業方法は、新規だけではありません。M&Aという方法もあります。

M&Aは、後継者を探している調剤薬局のオーナーと独立を考えている薬剤師などが事業の売買をおこなうものです。M&Aは、後継者問題の解決、経営基盤の強化、事業領域の拡大など様々なメリットがあります。

調剤薬局のM&Aは、アテックが運営するファーママーケットというマッチングサイトの利用がおすすめです。アテックはこれまでに多くの後継者候補と後継者を探している調剤薬局のオーナーをマッチングしてきました。独立を考えているなら、ぜひこのような方法も視野に入れ、アテックまでお気軽にご相談ください。
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