医療機関の一つとして地域住民にとって欠かせない存在となっている調剤薬局は、現在に至るまで全国各地に店舗が拡大しています。しかし、近年調剤薬局は、国の制度改正により現在厳しい経営状況に置かれているため、廃業・閉店を検討している経営者も少なくありません。

実際に店を畳んでしまうというケースも増えており、経営者たちが頭を抱えている状態です。そこで今回は、調剤薬局が経営困難になってしまう理由屋現状、廃業・閉店を検討する際に注意すべきことについてご紹介します。

また、経営回復にはどのような手段を選べば良いかについてもみていきましょう。

■調剤薬局とは

薬剤師が医師の診断を受けて、処方箋の指示に基づいて薬を調合させ、患者にその薬を渡す薬局のことを指します。一般的な薬局で販売されている市販の薬も症状を緩和させる作用がありますが、調剤薬局で取り扱っている薬は、より得られる効果に期待できます。

しかし、処方された薬の服用には副作用が伴うため、処方箋にある指定された服用量を守らなかった場合、命に関わる事態を引き起こしてしまう可能性もあります。そのため、調剤薬局では安全に薬を服用できるように、保険薬剤師という薬のエキスパートが、患者一人ひとりの症状・悩みに合わせながら薬を調合したり、アドバイスをしたりしています。

病院や診療所の隣に薬局を構えている光景をよく目にしますが、そんな調剤薬局の現状とは一体どのようなものなのでしょうか?以下では、調剤薬局が抱えている課題についてご紹介します。

■調剤薬局の現状とは

ここ数年間で薬局は大幅に増え、現時点で約60,000件まで増えている状況です。近年、ドラッグストア内に薬剤室が設けられた「調剤併設型ドラッグストア」という新たなスタイルも増加しており、私たちにとってより身近な存在となりました。

また、地域住民の健康を守るためにサービスの幅を拡大しており、患者にとって非常に良い環境となっています。私たちが健康な状態で生活するために欠かせない存在となっている調剤薬局ですが、制度改正によって厳しい経営状況を強いられているのが現状です。

では、具体的には一体どのような課題を抱えているのでしょうか?

・調剤報酬額の改定

現在、2年に1度調剤報酬改定が施行されていますが、医療費の削減が求められる今、経営は非常に苦しい状況となっています。厚生労働省が令和2年に発表した「令和元年度 調剤医療費用の動向」によると、令和元年は7兆4,746億円でした。

現在、店舗数はコンビニエンスストアを上回っており、薬局は爆発的に増えています。それに伴い、調剤医療費用がかかってしまっているのが現状です。

少しでもコストカットをするため、制度改正により国が薬局に対して支払う報酬が年々減り続けています。当然のことながら、採算が取れなくなってしまうと廃業や閉店に追い込まれてしまいます。

・慢性的な人材不足

薬局の増加に伴い、働き手が必要になりますが、急スピードで店舗数が増えているため、調剤薬局業界は慢性的な人材不足に頭を抱えています。人材不足になってしまう主な原因は、調剤併設を採用し始める大手薬局チェーンが増加したこと、地方での人材確保が困難であることです。

大手薬局チェーンは著しい成長を遂げており、新卒を大量に採用していますが、その陰では中小企業が人材を確保できずに廃業・閉店に追い込まれています。このような規模拡大が与えるダメージは非常に大きいです。

また、保険薬剤師になるためには薬科大学に行かなければいけません。東京・大阪といった都心部であれば問題ありませんが、地方は薬科大学がない地域も多く、人材の確保が難しい状況になっています。

・後継者問題

経営者の高齢化に伴い、経営を引き継ぐ後継者を決めなければいけません。現在の経営者は引退年齢に差し掛かっているため、このまま経営を続けることは困難です。

しかし、制度の改定により環境が整っているとは言えないため、事業継承ができずにそのまま継続している方もいます。また、経営者の子供がそのまま引き継ぐというケースも減っており、この業界では後継者問題が一つの大きな課題となっています。

■廃業・閉店するにあたりしなければいけないこと

制度の改定や経営者の高齢化、人材不足など、原因は様々ですが廃業・閉店するのであれば各種手続きが必要になります。ここでは、廃業・閉店前にしなければいけないことについてご紹介します。

・不動産契約解除と廃業届

まずは、店舗として構えていた不動産との契約を解除しなければいけません。一般的な賃貸物件であった場合、3ヶ月前に解約を申し出ることが可能です。そのため、店を畳むことを考えているのであれば、早めに不動産契約の確認をしてください。

次に、様々な機関に対して廃業届を提出しなければいけません。実際に提出する書類は非常に多く、中には廃業・閉店後10日以内に出さなければいけない書類もあります。

基本的には、社会保険事務局には3枚、保健所には6枚、市区町村の各保険センター・地域保健課には2枚、各労働基準監督署には1枚、薬局所在地の市役所・区役所には1枚の、計13枚の書類を提出する必要があります。

・医薬品の在庫処分

医薬品は買い手が見つからない場合、在庫を全て廃棄処分しなければいけません。そのため、他の薬局で引き取ってもらったり、メーカーに返品したりと、早い段階で引き取り手を探しておく必要があります。また、有効期限切れや開封済みを除く医薬品は買取業者への売却が可能です。

・各種設備の解約

水道や電気などの設備は、店を畳む1ヶ月前には解約しなければいけません。また、高額な設備はリース契約になっていることを確認し、対応してください。

・従業員や患者への対応

薬局を閉店する場合、在籍していた従業員は解雇という形になるため、社会保険労務士に相談しておくことが大切です。また、従業員の雇用を守ることは経営者としての責任であるため、再就職先の斡旋を行わなければいけない場合もあります。

また、通院していた患者にも店が閉まることを知らせなければいけません。あまりにも早い段階で告知してしまうと、客足を遠のかせてしまうことになるため、1ヶ月前が大体の目安です。

店を閉めることで患者が近くの薬局に流れることが考えられるため、あらかじめ最寄りの薬局に廃業・閉店する旨を伝えておくことがおすすめです。

■廃業・閉店する際の注意点

様々な種類の薬品を扱う調剤薬局を廃業・閉店させるためには、何ヶ月も前から準備をしなければいけないため、相当な時間を要することが分かります。また、提出しなければいけない書類も多く、思っている以上に手間と時間がかかることから、面倒だと感じる方もたくさんいます。

在庫を片付けるために大幅に値下げをして売ることできないため、処分作業にも時間がかかってしまいます。さらに、調剤薬局はあくまでも医療機関であり、地域の社会資源であるため、簡単に廃業・閉店するわけにはいきません。

店を畳んでしまうことによって、かかりつけ医として通院している患者は新たに薬局を探す必要があります。調剤薬局の廃業・閉店は経営者だけではなく、従業員や患者、最寄りの薬局など、多くの人々に影響を与えてしまうのです。

以上のことを踏まえると、廃業・閉店は注意すべき点がいくつもあり、高いリスクが伴うということが分かります。

■M&Aを検討する

廃業・閉店に至る原因は様々ですが、経営状況は安定していながら、後継者問題によって頭を抱えている方もいます。そのような場合は、M&Aによる企業売却を検討するのがおすすめです。

調剤薬局はM&Aを利用することによって、事業継続が可能になる業種です。近年、業界の拡大に伴いM&Aが積極的に行われています。もともとM&Aでの規模拡大に動きがある業界ですが、これまで以上に注目されており、効率的な経営手法として捉えられています。

調剤薬局はほとんどが中小企業であるため、従業員の人員不足や経営者の高齢化など、これまでに様々な課題を抱えていました。しかし、M&Aを利用すればこのような問題は全て解決できるため、その後も事業を継続して行っているというケースも増加しています。

では、一体なぜM&Aを利用した事業継続が増加しているのでしょうか?

・売り手と買い手が増加中

M&Aが急スピードで成長を遂げたのは、売り手と買い手の大幅な増加によるものです。双方にメリットがあることから、人気が高まっている経営手法であり、現在多くの人々が利用しています。

高齢化が進む売り手側は、買い取ってもらうことによって後継者問題は解決できますし、買い手側は一から店舗を作らずに済むため、手間も省ける他コストカットにもなります。また、医療機関は信頼関係が非常に重要であるため、買い取るという選択をすると有利です。

・譲渡価格が上昇している

自らが経営する薬局に、一体どれほどの企業価値があるのか気になる方も少なくありません。基本的に譲渡価格は、利益を上げる力を表した「営業権価格」と、資産を時価に評価し直した「時価純資産価格」の2つによって決まります。

近年、需要が高くなっていることから譲渡価格は上昇しており、10年前と比較すると3~5割上昇しています。

・赤字経営でもM&Aは利用できる

厳しい状況に置かれていることで赤字経営になっている方も少なくありません。しかし、業績が悪化して赤字経営だったとしても、M&Aの利用は可能です。ここでは、赤字を出していても適用される3つのケースをご紹介します。

1つ目は、十分な資金がない調剤薬局です。問題点は資金不足であるため、運営できる資金があると利益を得られるということであれば、資金援助をしてくれる企業が買収してくれる可能性があります。

2つ目は、素早く対応できるかどうかということです。もちろん、買い手側も赤字は背負いたくないため、できる限りマイナスが少ないうちにM&Aを行うことが重要になってきます。

企業の受け渡しが完了するまでに、数ヶ月から1年ほど時間を要するため、赤字だったとしてもしばらくの間は経営を継続しなければいけません。 そのため、M&Aで事業継続を検討しているのであれば、なるべく早い段階で対応してください。

3つ目は、制度改正後も高い基本調剤料を得ていることです。2018年、制度改正によって該当していた基本調剤料が除外されてしまうといったことがありました。そのため、このような条件をクリアしていれば赤字でも有利です。

■調剤薬局の廃業・閉店を検討しているならアテックへ

近年、「薬局経営代行」として注目を集めているM&Aは、売却した後も売り手である経営者が所有権を保有し続けられるという特徴があります。多額のお金が動くこともないため、税金を最小限に抑えられることも魅力的です。

廃業や閉店を余儀なくされる原因は様々ですが、店を畳むには相当な手間と時間がかかってしまいます。先ほどご紹介したM&Aを行う場合には、専門的な知識が必要になります。

しかし、調剤薬局を経営している中小企業のほとんどはM&Aの経験や知識が乏しい状況にあります。そんな時は、企業売却を検討しているのであれば、ぜひお気軽にアテックにご相談ください。

経営技術総合支援企業であるアテックは、1991年に日本初となる調剤薬局のM&A仲介会社として創業されました。以来、様々な薬局の経営者とマッチングし、M&Aのサポートを行っています。業界事情に詳しく、専門の知識を兼ね備えたアテックであれば、企業を売却する際も安心です。

より気軽に需要と供給をマッチングさせるために、アテックでは「ファーママーケット」というサイトを運営しています。このサイトは、薬局を譲渡したい経営者と独立・売却を検討している方をマッチングさせるという役割を果たしており、これまでに多くのマッチングに成功しています。

それぞれの条件に合わせて適切な交渉ができるような仕組みが整っているため、利用者からの満足度も高いです。アテックではこれまで多くの企業をマッチングさせた実績があり、経営者のハッピーリタイアを実現させています。調剤薬局の経営に不安を感じている方や、引退する年齢を迎えようとしている方は、ぜひアテックにご相談ください。
メールマガジンの登録