薬剤師が独立を考えた時、調剤薬局の新規開局・開業もしくはM&Aのいずれかを検討するのが一般的です。どちらを選択した場合でも、自分自身がオーナーとなるので雇われていた時よりも大きな責任を背負うことになります。そのため、どちらが自分に合っている方法なのか、しっかりと考えなければいけません。

そこで今回は、調剤薬局の新規開局・開業とM&Aの違いについて解説していきます。薬剤師として勤務していたけど今後独立を考えている人は必見です。

■調剤薬局の新規開局・開業について



まずは、調剤薬局の新規開局・開業について解説していきます。

【不安要素が大きい】

調剤薬局を新規開局または開業する場合、M&Aと比較すると不安に感じるかもしれません。まずは、新規開局や開業した場合の不安はどのような部分にあるのかみていきましょう。

・軌道に乗るまで赤字が累積する可能性

処方箋の枚数などを想定した上で開業しますが、運営が軌道に乗るまでは時間がかかってしまいます。ある程度、運営が安定するまで赤字が累積するケースが考えられます。大手の調剤チェーンであっても、見込み違いの出店をしてしまえば、開業から1年ほどで撤退を検討する場合もあるでしょう。

大手チェーンでも赤字が累積する可能性があれば、個人で独立する場合はリスクがさらに高いと考えられます。独立して間もない時期は、資金にも余裕がないので赤字対応が難しい場合もあるでしょう。赤字の期間が長く続くほど、精神的にも追い詰められてしまいます。

・投資回収ができない

想定していた処方箋の枚数が応需できないと、投資回収なでが長くなってしまいます。立地条件が良い、ドクターが有名、大学病院の医長などに期待して開業しても、処方箋枚数が伸びないケースもあります。半年ほど経っても1日あたり10枚~20枚しか応需できないといった事例も少なくありません。

これは、当初の見込みが甘かったことが原因ですが、実際に開業してみないとわからない部分もあります。一概に見込みの甘さだけを責めることはできません。わからないリスクを背負ってまで開業する意味を感じるかもしれません。

【ドクター・資金・人材が重要】

調剤薬局の新規開局・開業は、リスクが大きく、不安要素も簡単には払しょくできません。これらの不安を解消するには、ドクター・資金・人材という3つの柱が重要です。大手調剤チェーンであれば、資金力もあるのでドクターの情報収集や土地探しなどは有利ですが、個人だとこのような情報は得にくいでしょう。

しかし、大手と比較すると立ち回りは個人で開業した場合の方がしやすいです。初期段階で経営を支えてくれる人材の確保を怠らなければ、立ち回りのしやすさを活かした調剤薬局経営が実現できるでしょう。

ドクターに関する情報を集めるには、病院やクリニックを出入りしている卸業者が情報源やヒントになる場合があります。独立を考えているドクターの中には、門前薬局の経営者を探している人もいるからです。これらを考えると、ドクターに関する情報収集も必要でしょう。

しかし、思ったような情報が得られない、なかなか出会えないと悩んでいるなら、調剤薬局の新規開業をサポートしているコンサルティング会社に相談するのがおすすめです。人脈などがなく、情報収集に手間取っているなら専門家の手をいち早く借りるのが良いでしょう。

【調剤薬局の新規開業・開局において必要な許可・免許】

調剤薬局を新たに開業・開局するためには、大きく分けると3つの手続きが必要となります。どのような手続きを行うのかご紹介します。

・薬局開設許可

薬局開設許可は、新規開業するために必要です。しかし、この許可を得るだけでは保険適用となる調剤はできません。さらに、麻薬処方箋によって調剤された麻薬の譲り渡しも薬局開設許可だけではできないので注意してください。

・保険薬局の指定

保険薬局の指定を受けると、保険適用の調剤も可能となります。薬剤師が保険薬剤師の登録をしていない場合はできません。保険薬剤師の登録が済んでいないなら、地方厚生局に登録を申請し、研修に参加する必要があります。

・麻薬小売業者の免許

麻薬小売業者の免許は、麻薬処方箋の取り扱いをする際に必要です。調剤薬局を既に開設していることが前提条件となります。この免許には有効期限があり、免許が交付された日から翌々年の12月31日までとなります。

■調剤薬局のM&Aについて



薬剤師が独立を考えた時の選択肢の1つに調剤薬局のM&Aがあります。続いては、調剤薬局のM&Aについて詳しく解説していきましょう。

【M&Aとは?】

M&Aは、Merger and Acquisitionの頭文字をとった言葉です。合併と買収という意味になります。会社自体を売買するケースもあれば、特定の事業を売買するケースもあります。企業を永続させたり、発展させたりするための事業承継の手法として用いられています。

M&Aに対してネガティブな意味合いで使用されることがあるので、あまり良いイメージを抱かない人もいるでしょう。しかし、近年はポジティブなM&Aが盛んに行われていて、調剤薬局業界においても成長戦略の一環として行うケースが増えています。

【M&Aは事業承継の1つ】

事業承継には、いくつかの選択肢があります。それが、親族内承継・従業員承継・M&Aによる承継です。それぞれの特徴について解説していきます。

・親族内承継

親族内承継は、その名の通り親族に引き継いでもらう方法です。子どもや身内などに後継者がいる場合は、この方法を採用します。調剤薬局に関しても例外ではなく、親族に承継したいと考えているオーナーも多いです。

親族内承継をした場合、オーナーから近しい人が引き継ぐことになるため、周りからの理解も得やすいです。地位はもちろんですが、自社株の引き継ぎも可能となっているため、所有と経営が分離しにくいのもメリットです。

しかし、後継者になりたいと考えている人がいない場合は、親族内承継のハードルが一気に高くなります。親族間の対立が生まれる可能性が高いのも、親族内承継が持つデメリットです。後継者となる人物に経営者としての素質が乏しかったり、経営経験が浅かったりすると、運営などに関する不安が大きくなる可能性があります。

・従業員承継

従業員承継は、従業員が後継者となる事業承継方法です。会社の役員に承継するケースも多いため、会社内承継と呼ばれる場合もあります。これまで共に歩んできた仲間に対して承継するため、安心して任せられる方法だと感じるかもしれません。

しかし、地位を引き継げたとしても株式の取得ができなければ、所有権を取得できません。株式を後継者となる従業員が買取する必要があるため、この購入金額が問題になるケースもあります。金融機関から借入もできますが、この場合新しいオーナーが連帯保証人になります。

従業員承継であれば、親族に後継者がいなくても経営を続けられるのがメリットです。経営状況を知った人に引継げるという点も魅力でしょう。後継者の教育のかかる時間を減らせるため、あえて従業員承継を選択するケースもあります。

その一方で、承継する従業員に資金力がないと株式を取得することが難しいです。また、会社の借入金は連帯保証になることもデメリットとして挙げられます。

・M&Aによる承継

親族や従業員に後継者となる人材がいない場合、M&Aによる承継が有力な方法です。M&Aは、調剤薬局業界において従業員への承継よりも割合が多くなっています。従業員への承継が難しいと判断された場合、M&Aという選択肢が事業承継の方法として有力です。

M&Aは、事業を承継するだけではなく、今後の事業の拡大が見込めます。さらに、創業者利益を獲得できる、廃業にかかるコストを削減できるなどのメリットもあります。創業者利益の獲得と廃業コストの削減は、調剤薬局のオーナーにとっても大きな効果をもたらすでしょう。

しかし、想定していた売却価格にならなかったり、交渉に時間がかかってしまったりするケースもあります。将来的な利益を見越して価値が決められるのがM&Aなので、診療報酬の改定などの影響を受けて価格が下がる場合も考えられます。しかし、M&Aによる承継は従業員承継よりも選ばれていることから、魅力を感じる人が多いということです。

■調剤薬局のM&Aをするならメリット・デメリットを把握しておこう



調剤薬局のオーナーになりたいと考えた時、新規開局・開業よりもM&Aをした方がリスクを軽減できると考える人が多いです。確かにM&Aは、事業拡大などにも取り入れられる方法なのでそのように捉えることもできます。しかし、メリットだけではなくデメリットもあるので、どちらも把握しておくと安心です。

【売り手のメリット・デメリット】

・メリット

売り手のメリットには、後継者問題を解決できること、創業者利益を得られること、安定した経営を実現できることが挙げられます。後継者問題は調剤薬局業界でも問題視される機会が多く、解決へと導けるのが大きなメリットです。

・デメリット

デメリットには、交渉が難航してしまう恐れがあること、取引先や顧客からの信頼度が下がってしまう可能性があることなどが挙げられます。買い手については、取引先などの理解を得るのが難しい場合もあります。

【買い手のメリット・デメリット】

・メリット

買い手のメリットには、事業拡大を実現できること、薬剤師不足を解消できること、患者の囲い込みができることなどが挙げられます。事業の拡大をするために新たなエリアにある調剤薬局を買収でき、そこで働いている薬剤師の雇用を継続すれば人手不足の解消になります。新規開業ではなく買収であれば、今まで通っていた患者がいるので、売上を想定しやすいです。

・デメリット

デメリットは、売り手から来た人材が反発してしまうこと、売り手側の顧客や取引先が混乱してしまう可能性があること、簿外債務があったことに継承後に気付くことなどが挙げられます。簿外債務の内訳は、未払となっている残業代や買掛金、債務保証、リース債務、未払の社会保険金、賞与引当金、退職給付引当金、訴訟リスクなどです。

■調剤薬局のM&Aならアテックへ!

薬剤師が独立を考えている中で、M&Aをしたいと考えた時にどうすればいいのかわからない場合もあります。そのような時は、専門的な知識を持つ人に相談するのがおすすめです。調剤薬局のM&Aを検討しているなら、アテックへお気軽にご相談ください。ここでは、アテックの特徴について紹介します。

・アテックについて

アテックは、1991年に創業して以来、調剤薬局のM&A仲介会社として多くの実績を残してきました。日本で初めての調剤薬局のM&A仲介会社です。薬局を売りたいと考えているオーナーと独立したいと考えている薬剤師のマッチングを行っています。

双方にとって理想的なマッチングができるようなサポートをするのがアテックの役割です。1991年に創業した老舗だからこその実績もあり、多くの後継者候補が登録しています。もちろん、売りたいと考えているオーナーも多く登録しているため、高いマッチング率を保持しています。

・アテックが運営するファーママーケット

アテックは、現オーナーと後継者候補になる人材のマッチングサイト・ファーママーケットの運営をしています。多くのM&Aをサポートしてきたアテックならではのノウハウが詰め込まれているため、理想に近いマッチングを実現できるのがポイントです。理想とする相手とマッチングするのが難しいからこそ、このようなマッチングサイトを利用するのがおすすめです。

M&Aは専門知識がないとうまくいかない場合もあります。M&Aを成功させたいなら、アテックまでお気軽にご相談ください。ファーママーケットを利用すれば、効率的に進められるようになるため、時間がかかってしまいがちなM&Aも負担に感じにくくなるでしょう。
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