時代の流れと共に、各業界にはパラダイムシフト・改革が起こります。調剤薬局業界においても、様々な変化を遂げているのです。新型コロナウイルスの蔓延により、さらなる改革が進んでいることを、身をもって体感している人もいるでしょう。

今回は、調剤薬局経営をする中で起こるパラダイムシフト・改革についてみていくことにします。今後の調剤薬局業界がどのような変化を飛べるのか考察するためにも、知っておきたいポイントです。調剤薬局を経営している人、これから後継者として経営に携わろうとしている人は必見です。

■虫の目、魚の目、鳥の目で分析することがポイントに

日本経済における社会保障費は、かなり大きな割合を占めています。特に、調剤医療費の増加は数年前から大きく取り上げられるようになりました。調剤薬局が生き残るためには、既存の薬局で働いているような人や経営者がメインとなって対策を考えていかねばなりません。

調剤薬局は、日本薬剤師会が何か取り組みを発表したとしても、それぞれの県にある薬剤師会や支部、そしてそれぞれの薬局まで話が下りてくる頃には切迫感が薄れてしまいます。そのため、他の会社が同じような取り組みをやろうとした場合と比較してみると、スピード感が遅くなってしまうのが問題点です。

このように業界を分析する中で重要視すべき視点があるのです。それが、虫の目、魚の目、鳥の目の3つです。自分たちの足元をしっかりと見つめて地道に分析を重ねていくのが虫の目、潮流を逃さないようにするのが魚の目、俯瞰して対局を見つめるのが鳥の目となります。

虫の目で見てみると、それぞれの薬剤師が患者様に向き合って真摯に対応しているように見えるでしょう。しかし、それでもバッシングを受けてしまうことがあります。それは、大切な何かが欠落しているからだと考えられるため、魚の目と鳥の目でも分析をする必要があるのです。

■コロナ禍の調剤薬局に求められることとは?

新型コロナウイルスの蔓延により、さらに状況は変化しています。続いては、コロナ禍で調剤薬局に求められていることについてみていくことにしましょう。

デジタル化を本格的に進めていく



デジタル化を本格化させることは、調剤薬局業界においても重要視されています。オンライン診療においても、医療業界におけるデジタル化が円滑に進められていないという問題がありました。患者様がオンライン診療を利用したいと考えていたとしても、医療を提供する側の準備が整っていないなどの理由でうまく機能しなかったのです。

その結果、診療は電話、処方箋は薬局にFAXで送るという古めかしいやり方になってしまいました。薬の受け渡しに関しても、オンライン診療と標榜しておきながら、対面での受け渡すケースが大半を占めていました。

しかし、デジタル医療を提供するために必要な仕組みが整っていないわけではありません。医療機器などを手掛ける国内のメーカーは、電子処方箋などオンライン診療に対応できる技術を有しています。海外ではすでに導入されていることから、足かせになっているのは既存のルールや仕組みだと考えられるでしょう。

オンライン診療は、2018年から医療保険で認められるようになりました。スタートすることは可能ですが、そのためには厳しい条件をクリアしなければいけなかったため、ハードルはかなり高めでした。ハードルを少しでも下げるために、2020年の改定でマイナーチェンジされたのです。

マイナーチェンジされたことは進展ではあります。しかしながら、患者様が求めているレベルの医療を提供できないことがコロナ禍で浮き彫りになりました。今後は、患者様のニーズに応えられるように、更なるマイナーチェンジが必要な状況です。

ライフライン化を目指す



イタリアでは、ライフラインとなるのが調剤薬局ではなくドラッグストアです。日本の調剤薬局は、処方箋の調剤に偏っているため、一般医薬品や衛生商品の販売はドラッグストア任せという状況になっています。調剤薬局が、ドラッグストアのように一般医薬品などの販売を行ったり、M&Aなどでドラッグストアを運営している会社に買い取ってもらったりすることがより身近になれば、ライフライン化を目指すという目標もクリアできるでしょう。

■2022年の調剤報酬改定からわかる調剤薬局のパラダイムシフト・改革

2022年の調剤報酬改定により、さらに調剤薬局経営は変化することになります。続いては、調剤薬局業界においてどのような変化が起こるのか、2022年の調剤報酬改定を踏まえてみていきましょう。

調材料が廃止となり薬剤調製料が新設される



これまでは、調剤報酬に基づいて加算されていたため、応需した処方箋の枚数によって売り上げが決まっていました。つまり、定額制ということになります。調剤報酬の改定により、様々な見直しが行われたのです。

後発医薬品調剤体制加算は、後発医薬品の調剤数が著しく低い薬局に対する調剤基本料の減算規定が見直しとなりました。減算となる点数が2点から5点へ見直されたことによって、対象となる調剤薬局の範囲が拡大されています。

調剤基本料は、大規模なグループ薬局に対する見直しが行われています。調剤基本料が13点となる薬局は、「同一グループの処方箋受付回数が月40万回超または店舗数が300以上であって、集中率が85%を超える」もしくは「処方箋集中率が85%超」に変更されました。同じ規模のグループ薬局で「処方箋集中率が85%以下」の場合は、32点となる新設調剤基本料が追加されています。

地域医療との連携が見直される



かかりつけ医・かかりつけ歯科医・かかりつけ薬剤師の機能の評価、質の高い在宅医療・訪問看護のための確保、地域包括ケアシステムの推進のための取り組みなども2022年の調剤報酬改定では重要なポイントになります。地域支援体制加算が見直されたことからも明確です。地域支援体制加算の施設基準のひとつである「在宅薬剤管理の実績」は年間24回以上に見直されました。

施設基準を満たしている調剤薬局は、調剤基本料1を算定している薬局の場合は地域支援体制加算1(39点)もしくは地域支援体制加算2(47点)を加算できます。その他の調剤薬局の場合は、地域支援体制加算3(17点)もしくは地域支援体制加算4(39点)を加算可能となります。

医療従事者の働き方に関する見直しも



医療従事者が有する高い専門性を発揮できるような職場環境を維持できるような取り組みを行った場合、それも評価してもらえます。業務を効率化させるためのICTの利活用に伴う見直しも2022年の調剤報酬改定に盛り込まれています。

2022年の調剤報酬改定では、服薬管理指導料が新設されました。服薬管理指導料は、情報通信機器を使って服薬指導を行った場合にも要件を満たすとされています。そして、対面で行った場合と同じ点数を算定できるようになっています。

在宅で診療を受けている患者様に対して情報通信機器を活用して服薬指導をした場合の評価も見直されました。在宅患者オンライン薬剤管理指導料として、月に4回59点が算定されます。末期の悪性腫瘍を患っている患者様に関しては、1週間に2回かつ1ヶ月に8回指導を行った場合に算定となります。

さらに、オンライン資格確認システムを活用している保険薬局に関する加算も新設されました。このシステムを活用している保険薬局で調剤をした患者様に対し、1ヶ月に1回まで3点を加算できるのが新設された電子的保健医療情報活用加算です。

■調剤薬局が乗り越えるべき課題と解決方法

調剤薬局が生き残るためには、乗り越えるべき課題がいくつもあります。具体的にどのような課題があるのかみていきましょう。

調剤薬局が乗り越えるべき課題



調剤薬局が生き残るために乗り越えなければいけない課題からご紹介します。

・安定した調剤薬局経営を目指す

調剤報酬の改定により、調剤薬局の経営は厳しい状況になりつつあります。調剤基本料や技術料などの報酬点数が減少することにより、売り上げも右肩下がりになってしまいます。それでは、今までのように経営を続けるのは難しい状況に陥ってしまうでしょう。

安定した薬局経営を目指すのであれば、国が課題としているかかりつけ薬局を目指したり、対人業務の充実を発揮したりすることが必要です。それが実現できれば、安定的な経営を実現しやすくなります。

・質の高い対人業務を行えるようにする

厚生労働省では、対物中心から対人中心への移行も求めています。そのために、患者様に対する適切な薬物治療の提供や医療費削減の担い手となれるような薬剤師を目指してほしいと考えているのです。2019年4月2日に厚生労働省が発表した「0402通知」では、調剤薬局事務員が調剤補助業務を行い、薬剤師がさらに対人業務に専念できるような環境を整えることを推奨しています。

したがって、薬剤師は以前よりも服薬指導や訪問調剤に力を入れていく必要があると言えます。そして、医療の質事態を高めていく一女を担えるような存在になってほしいと考えているのでしょう。

将来的に安定した経営を実現するには



調剤薬局が抱えている課題を解決し、安定した経営を目指すために知っておきたいポイントは以下の通りです。

・地域活動に参加する

地域に密着した調剤薬局の需要は、今後高まっていくと予想されます。地域に密着したサービスを提供するには、存在を認知してもらうことは重要になります。そのためには、地域活動に積極的に参加するのがおすすめです。

町内会で実施するような勉強会や中核病院における多職種合同勉強会を実施するといった方法があります。地域包括支援センターと連携し、わかりやすい薬に関するリーフレットを作るのも良いでしょう。患者様に対して総合的な医療を提供できる地域形成につながります。

・ICTを導入する

前述したように、ICTの導入も調剤薬局の経営を安定させるためのファクターとなります。厚生労働省によって策定された「患者のための薬局ビジョン」には、ICTを利活用した服薬情報の一元化や継続的な把握が盛り込まれているのです。

AIによる調剤支援や医薬品の管理、オンライン服薬指導などの最先端技術を駆使した調剤薬局作りも求められています。そのためには、薬剤師自体の質をアップさせることも必要不可欠です。質の高い医療を提供していくためにも、調剤薬局がICTなどを積極的に導入し、変化を受け入れていかなければいけません。

・在宅医療に注力する

医療費の削減に貢献するという観点から見ても、在宅医療に注力するのは重要です。外来の処方箋を受け入れることももちろん継続しなければいけませんが、これからは個人在宅や施設在宅など薬局外で医療に貢献できるような取り組みも始められるようにしましょう。在宅医療は、地域包括ケアシステムの中で薬剤師が携われる業務のひとつとなっています。

残薬の調整や医師に対する処方の提案、ケアマネージャーなどへの情報提供など、幅広い場面で薬剤師の知識が役立ちます。チーム医療をより円滑に進めるためにも、薬剤師の存在は大きいのです。

■パラダイムシフト・改革への対応力を身に付けたいならアテックに相談を!

パラダイムシフトや改革に対する対応力を身に付けた調剤薬局を目指すためには、そもそもの在り方を変えなければいけないケースもあります。将来のことを考えたM&Aを行い、経営している調剤薬局を残したいと考える人もいるでしょう。そのような場合は、アテックへの相談がおすすめです。

1991年に日本初の調剤薬局のM&A仲介会社として設立されたのがアテックです。設立されてから現在まで、多くの実績を残しています。調剤薬局の後継者探しなどをしているオーナーにとって心強い味方になっているのです。

調剤報酬の改定などに対応できるマネジメントをするためには、専門的な知識が必要となる場面も少なくありません。既存のやり方では上手くいかずに経営が右肩下がり担ってしまう可能性も高いです。そのような状況を抜け出すためには、病院・薬局の経営ノウハウの販売や経営指導及び業務委託、医療コンサルタント・情報提供サービス、薬局のM&A、売買及び営業権の売買、薬剤師の独立開業支援事業を担っているアテックのサポートを受けるのが最適な方法だと言えるでしょう。

アテックでは、調剤薬局の経営者と独立したいと考えている薬剤師をマッチングするファーママーケットというサイトも運営しています。ファーママーケットでは、双方の条件に合うマッチングを行っているため、将来的にどのような存在になりたいのかというビジョンも実現しやすくなります。
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