調剤薬局は、様々な問題を抱えていて、経営が難しい状況になっているケースも珍しくありません。何らかの事情で経営を続けることが難しくなってしまった場合、閉業もしくは事業売却(譲渡)を検討するでしょう。せっかくこれまで育ててきた調剤薬局を閉業するのはもったいないため、可能なら売却か譲渡を選択したいと考える気持ちもよくわかります。

薬局の事業売却(譲渡)を成功させるためには押さえておかなければいけないポイントがあります。それを把握できていないと失敗に終わってしまう可能性が高いです。そこで今回は、調剤薬局業界を取り巻いている環境や調剤薬局の譲渡の仲介を行う会社の役割など、薬局の事業売却(譲渡)を成功させるために知っておきたいポイントをご紹介します。

■調剤薬局業界を取り巻いている環境について

売却や譲渡を成功させるには、現状を知ることが重要になります。まずは、調剤薬局業界を取り巻いている環境がどのようになっているのか確認しておきましょう。

・薬剤師不足が慢性化している

近年、大手企業は資本を使った採用戦略を積極的に取り入れています。そのような状況下で、中小規模の調剤薬局は薬剤師の確保に苦戦するといった状況に陥っています。さらに、派遣薬剤師の派遣費用が高くなっているため、継続した採用が難しいといったケースも見られます。

薬剤師不足は、薬学部が6年制になったことによる影響も大きいと言われています。6年制に移行してからも国家試験の合格率はそこまで高くなっていません。今後も同様の状況は続くと想定できます。

・相場は右肩下がりに

調剤報酬が改定されたことによって、調剤薬局が得られる利益は少なくなっています。それに伴い、調剤薬局のM&Aの相場は右肩下がりになると考えられるでしょう。

実際に、大手チェーンが提示する条件を断った調剤薬局のオーナーが、2年後に再度条件提示してもらったら半額になったというケースもあります。逆風が吹いている業界なので、より厳しい状況になる可能性も十分にあり得ます。

・求められる「調剤薬局のあるべき姿」

社会保障費は増加し続けている現状は、調剤薬局業界にとってかなり強い逆風となっています。社会保障費財政の健全化は、まだ見通しが立っていません。そのため、逆風は今後も吹き付け続けることになるでしょう。

そのような状況下で、「調剤薬局のあるべき姿」が強く求められる時代へと突入しました。処方元から処方箋を待つだけのビジネスではなく、かかりつけ薬剤師や在宅への移行が重要視されると考えられます。しかし、それらを実現するための人材確保や薬剤師の教育は容易ではないため、中小の調剤薬局にとって大きなハードルになる可能性は高いです。

■調剤薬局の譲渡について

調剤薬局の事業売却(譲渡)をスムーズに進めるためには、調剤薬局業界に詳しいM&A仲介会社や専門家のサポートが必要となります。適切なサポートを受けて成功させるためには、調剤薬局の譲渡や譲渡支援、事業譲渡と株式譲渡の違いを知っておくことがポイントになるのです。続いては、調剤薬局の譲渡をする際に知っておきたいポイントを解説していきましょう。

【調剤薬局の譲渡について】

調剤薬局の譲渡は、M&Aによって譲受を希望する企業や個人に事業や経営権を譲渡・承継させることです。M&Aは、事業譲渡と株式譲渡が主な手法として用いられます。それぞれにメリットとデメリットがあるため、どちらを選択するかが肝になります。

【事業譲渡のメリットとデメリット】

・メリット

売り手側が得られるメリットには、売却したい事業だけ譲渡できるという点が挙げられます。そして買い手側は、買収したい事業だけ選べるというメリットが生まれます。負債を除外でき、簿外債務なども引き取ってしまうリスクを軽減できるのは、買い手側にとって大きな魅力です。

・デメリット

売り手側と買い手側の意見が一致しないと、交渉がまとまるまでに時間がかかってしまう可能性があります。譲渡する内容によっては、手続きが煩雑になるので煩わしいと感じてしまうこともあり得るでしょう。また、事業譲渡だと調剤薬局の許認可を譲渡できないという点にも注意が必要です。

【株式譲渡のメリットとデメリット】

・メリット

株式譲渡の手続きは、売買契約のみとなっています。そのため、他の方法と比べると手続きは面倒ではありません。事業や資産の選別もする必要がないので、所要時間も短くできます。

売り手側にももちろんメリットがあります。それは、会社をすべて売り渡すことです。すべて売るので、株式譲渡の方が売却益が大きくなりやすいのです。

・デメリット

売り手側にとって大きなデメリットはありません。しかし買い手側は、簿外債務のリスクをはらんでいます。契約前の念入りなデューデリジェンスは簿外債務を防ぐためのものです。 ■調剤薬局の譲渡の仲介を行う会社の役割とは? 調剤薬局の事業売却(譲渡)を成功させるには、仲介を行う会社の役割も把握しておく必要があります。では、仲介会社がどのような役割を担っているのか、解説していきます。

・譲渡先の紹介や選定

調剤薬局の適切な譲渡先を探すためには、大きなネットワークが必要です。M&Aの仲介を行っている会社は、それぞれが専門家のネットワークを有しています。そのネットワークの中で適した譲渡先があるか選定し、紹介してくれるという流れです。

譲渡先は、地域や規模、希望額などを加味して選定されます。候補が絞り込まれたら、対象となる企業の基本情報などをチェックし、交渉するか否かを判断します。交渉の進め方やスケジュールなどはM&A会社と相談してから決めるので、知識がなくても問題ありません。

交渉は精神的な負担も大きくのしかかります。しかしこれまでの経験を活かしたアドバイスや提案をしてもらえます。しかし、サポート内容は依頼先によって異なる場合があるので、しっかりとリサーチしてから決めるようにしましょう。

・企業価値の評価

企業価値の評価も、事業売却(譲渡)において重要な意味を持ちます。適切な事業価値に基づいた交渉が必要不可欠だからです。上場企業なら株価で時価総額を確認できますが、中小企業の場合は様々な方法を用いて企業価値を算定します。

しかし、算定の方法や指標によって、結果が変わるので専門性が求められるのです。そのような理由から、調剤薬局の譲渡の仲介を行う会社が担う役割は大きいと言えるでしょう。

・譲渡先との交渉

M&Aの仲介を行っている会社は、譲渡先との交渉も進めてくれます。交渉する際は譲渡目的や優先順位を加味し、冷静に進める必要があります。しかし実際は、不安や不満、焦りなどが表に出てしまい、感情的になってしまうケースも珍しくありません。

交渉が難航してしまったり、長期化したりすると、上手くいかなくなる可能性も高くなってしまいます。そうなることを防ぐためにも、M&Aの仲介を行っている会社からのサポートを受けることは重要になります。

・手法に関するアドバイス

調剤薬局の事業売却(譲渡)で利益を最大化させるには、適切な手法を選択することもポイントになります。さらに、緻密な戦略を立てることも忘れてはいけません。M&A仲介会社は、それを実現するためのアドバイスも行っているため、どのような手法が最適解なのか見極めやすくなります。

・トラブルのない契約書の作成

調剤薬局の事業売却(譲渡)を仲介している会社は、交渉内容の整理だけではなく契約書の作成も行っています。契約書の内容が適切であれば、トラブルの回避にもつながります。

調剤薬局は日常の業務が忙しく、資料の作成や交渉を進め、契約書を作成する時間を捻出するのが容易ではないというケースも多いです。M&Aの専門部署があれば問題ありませんが、中小規模の調剤薬局ではそのような部署がないところが大半でしょう。そのため、M&Aの仲介を行っている会社にサポートを依頼するのは、日常業務に支障を与えないためにも重要だと言えるのです。

調剤薬局の譲渡の仲介を行う会社は、このような役割を担っています。事業売却や譲渡は、専門的な知識がないと難しい場合もあります。そのため、専門家に頼るのはおすすめです。

■調剤薬局の事業売却(譲渡)を検討すべきケース

調剤薬局の事業売却(譲渡)を検討すべきケースも把握しておくと、タイミングを見計らって行動に移しやすくなります。最後に、どのようなケースで事業売却や譲渡を検討すべきなのかみていきましょう。

・調剤薬局事業だけ手放したい

いくつかの事業を展開していて、その中で調剤薬局事業のみ手放したいと思っているなら事業売却(譲渡)は有効な手段です。幅広く事業を展開している場合だと、他の事業に力を入れたくなる場合も考えられます。そのような時に調剤薬局事業のみ売却や譲渡すれば、会社経営を効率化できます。

調剤薬局事業の売上が思ったほど伸びていない時も手放したいと考えるタイミングです。不調な事業を手放せば、その分業績が良くなります。会社自体は残るので経営戦略として事業売却を検討する経営者は多いです。

・後継者問題を解消したい

調剤薬局の中には、後継者問題で悩んでいるところもあります。身近に後継ぎとなる人材がいない場合も、事業売却をすればすぐに解決できます。事業売却によって第三者に事業を引き継いでもらえるためです。

調剤薬局のM&Aをサポートしている会社であれば、後継者問題に悩む経営者と次期オーナーのマッチングも多く行っています。そのため、売却後の不安なども相談してみると適切な答えが返ってくるはずです。

・調剤薬局の一部だけ手放したい

複数の調剤薬局を経営している場合、その中の一部だけ手放したいと考えるケースもあります。事業売却は、売る範囲を自由に決定できるので、売上が好調な調剤薬局だけ残すことも可能です。不調なところだけ手放せば、経営資源を調子は良い調剤薬局や他の事業に回せるのはメリットとなります。

経営している中でばらつきがある場合は、採算が取れていないところだけ選別して売るのも方法の1つです。収益が良くなかったとしても、買い手側の目的によりますが高値で売却できる可能性も大いにあります。

・従業員などに迷惑をかけることなく引退したい

経営者が引退するとそこで働いていた人が職を失うことになります。また利用していた人も困ってしまうでしょう。そうなることを防ぎながらオーナーが引退するためにも、事業売却は最適な方法です。

今後の生活を考えた時、これまで経営してきた調剤薬局事業を辞めなければいけないタイミングがいずれ訪れるものです。そうなった時、これまで頑張って仕事をしてくれた従業員や利用してくれた人に迷惑をかけたくないと考える人は少なくありません。

調剤薬局が廃業した場合、スタッフは新たな仕事先を探さなければいけません。利用者は、信頼できる調剤薬局を探すことになります。それらを不安に感じていると、気持ちよく引退できないでしょう。

しかし、事業売却を行えばそのような不安を払拭できます。事業売却をすると、オーナーが引退してからも調剤薬局事業は継続するからです。そのため、安心してリタイアし、老後生活を満喫できます。

・廃業のコストをかけたくない

廃業のコストをかけたくない場合にも、事業売却は有効な方法です。調剤薬局を廃業する場合、設備や医薬品を廃棄するためのコスト、テナントを元の状態に戻すための原状回復費がかかります。つまり、事業をやめるには多額のコストがかかってしまうのです。

廃業にかかるコストは事業の規模によりますが、15坪で100万円ほどと言われています。廃業にも費用がかかるので検討しているのであればお金を準備しなければいけません。

コストがかからない事業売却を行えば、売却益を手にできます。そのため、金銭的なメリットはかなり大きいです。しかし、利益には法人税が加算されるので専門家に相談しながら進めることをおすすめします。専門家に相談しながら事業売却を行うことにより、税金を最低限に抑えられる可能性もあるためです。

■事業売却(譲渡)を成功させたいならアテックへ!

事業売却や譲渡を成功させるためには、専門家に相談しながら進める必要があります。専門的な知識が必要にあるからです。どこに相談したらいいのか迷っているのであれば、調剤薬局のM&A仲介を専門的に行っているアテックがおすすめです。

アテックは、1991年に創業して以来、多くの調剤薬局M&Aを成功させてきた実績を有しています。アテックが運営しているファーママーケットというサイトでは、調剤薬局を売却したいオーナーと独立を考えている薬剤師のマッチングを行っています。このようなサービスを利用すれば、理想とする後継者に出会いやすくなるため、利用を前向きに検討してみてください。
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