そこで今回は、薬局数の推移と将来性、薬剤師が独立するメリット・デメリット、調剤薬局の経営を円滑に進めるコツ・注意点などを解説していきます。独立開業するためには、ノウハウなどを学びことがポイントになります。そのため、これから独立を検討している薬剤師の方は、ぜひ目を通してみてください。
目次
■薬局数の推移と将来性
まずは、業界の状況を把握するため、薬局数の推移と将来性からみていきましょう。・薬局数の推移は?
薬局の数は、年々右肩上がりになっています。2000年には約47,000店舗でしたが、2020年には約60,000店舗と大幅に増えているのです。20年で約13,000店舗も増えているのは、驚異的な伸び率だと言えるでしょう。高止まりしているわけではありませんし、減少傾向に向かっているわけでもありません。このことから、調剤薬局はこれからも需要が伸びていくと予想できます。
・調剤薬局の将来性
2020年に厚生労働省が実施した医療経済実態調査の結果を見てみると、保健調剤を行う調剤薬局1店舗あたりの売上は約1億729万円だとわかります。売上から人件費や医薬品費、税金などを差し引いた金額は、約950万円です。利益率を計算してみると約5.5%となります。 これだけ利益が出ているので儲かることは間違いありません。以前より厳しい状況にあるとも言われますが、それでもこれだけの利益が出れば十分でしょう。しかし、何も考えずに上手くいくことはないため、試行錯誤しながら利益を取りこぼさないようにする必要があります。・調剤報酬の改正は要チェック
調剤報酬は、定期的に改正が行われています。改正されることにより、医療費の透明性を高めたり、患者様の負担を軽減したりすることにつながります。特に患者様の負担軽減は大きな目的です。近年、国民1人あたりの調剤医療費は右肩上がりとなっていて、負担軽減を目指して国は取り組んでいます。今後は、さらなる高齢化と人口の減少により、さらに負担は大きくなると言われています。
しかし、調剤報酬の改正で調剤薬局側の負担が大きくなってしまうこともあるので、対応できるように早めの情報収集を心掛けてください。2022年の改正では、医療機能の文化や強化行って切れ目のない連携を進めること、デジタル化に対応した効率的かつ効果的な医療提供体制の構築を目指すことが基本指針として掲げられました。
改正の中で調剤薬局が影響を受ける可能性が高いのは、一定期間内であれば3回まで処方箋を反復利用できるリフィル処方箋、地域支援体制加算の細分化、新たな3つの報酬(薬剤調製料・調剤管理料、服薬管理指導)、オンライン服薬指導とオンライン資格確認システムの確認などが挙げられます。新たな加算も増えたので、対応できるようにすると収益を維持しやすくなります。
■薬剤師が独立するのはどう?
儲かる可能性も大いにある調剤薬局なので、独立を考える薬剤師も少なくありません。続いては、薬剤師が独立するメリットとデメリットをご紹介します。【メリット】
・努力次第で収入アップにつながる会社に雇用されていると、収入に上限が生まれます。しかし独立して経営者になれば、経営状況にもよりますが収入を大幅に増やせる可能性があります。自分自身でしっかりと働き、収入を増やしたいと思っている方におすすめの働き方です。
・裁量を持って仕事ができる
調剤薬局のオーナーになると、自分の裁量で仕事ができるようになります。患者様との向き合い方や薬剤師としての働きなどを自分で決められるのです。信頼できるスタッフが見つかれば、業務を任せることができ、自由度の高い働き方も実現できます。
・定年退職という概念がない
薬剤師は、経験年数によって知識やスキルが蓄積していきます。そのため、定年を気にすることなく働けるメリットは大きいと言えます。キャリアプランに関するメリットと生涯年収に関するメリットを享受できるのも、独立を考える薬剤師が増える理由だと考えられるでしょう。
【デメリット】
・収入が不安定になる大きな収入を手にできるチャンスもありますが、雇用されている時と比べると不安定になってしまう可能性も高いです。経営が上手くいかなければ、収入が激減してしまうリスクもあります。開業時に銀行から借り入れをするケースも多いため、金銭的なプレッシャーがきついと感じてしまうケースもあるでしょう。
・経営能力が必要
独立するには、薬剤師としてのスキルだけではなく、経営者としてのスキルも必要不可欠です。簿記の能力がなければ、経費計上などの計算も難しくなってしまいます。近隣の医療機関や薬剤師会との交流も必要なので、コミュニケーション能力も必要です。
・重い責任がのしかかる
会社で働いているうちは、会社や法律に守られています。しかし独立すると、すべて自分の責任になってしまうので、重圧に負けてしまう人もいます。従業員が少なければ簡単に休めず、負担が大きくなってしまう可能性も大いにあるでしょう。
薬剤師が独立するメリットとデメリットには、このような点が挙げられます。メリットだけではなくデメリットも把握しておくことにより、覚悟を持って独立を目指せます。覚悟がしっかりとできていれば、ちょっとやそっとのことで諦めるような事態にはならないでしょう。
■調剤薬局の経営を円滑に進めるコツ
調剤薬局のオーナーとして独立を考えているなら、経営を円滑に進めるコツを把握しておくと良いでしょう。次は、独立する前から知っておきたい経営のコツとはどのようなものなのか解説していきます。・処方箋を集める
調剤薬局の経営には、処方箋が必要不可欠です。2020年に実施された医療経済実態調査によると、薬局の収益は約97%が保健調剤によるものだとわかりました。したがって、処方箋を集めることができなければ、調剤薬局の収益が伸びる可能性がほぼなくなると言っても過言ではありません。処方箋を集めるには、かかりつけ薬局を目指すこと、地域に根差した薬局を目指すこと、物販に力を入れること、などのポイントを押さえる必要があります。かかりつけ薬局になれれば、リピーターの確保につながるので力を入れるべき点だと言えるでしょう。
また、地域のイベントに参加し、おくすり相談会などを行うのもおすすめです。イベントの参加者が薬局のファンになってくれれば、顧客数は増えていきます。また、ニーズが高い物販を販売すると、それも集客につながるので試してみる価値は大いにあります。
・加算を逃さない
保健調剤の収益を高めるためには、加算をしっかり取ることもポイントになります。1つずつ見ると微々たるものかもしれませんが、塵も積もれば山となるものです。小さな積み重ねがいずれ大きな差になることを覚えておきましょう。後発医薬品調剤体制加算や地域支援体制加算を取れるような体制を整えたり、トレーシングレポートを積極的に作成して服薬情報等提供料を取ったりしましょう。算定可能な加算を増やせば、収益のベースアップにつながります。
・施設営業を行う
周辺にある医療機関や施設に営業をかけるのもおすすめです。調剤薬局の存在を知ってもらえば、患者様に紹介してもらえる可能性が高まります。薬局の特徴などを記載したリーフレットを病院内においてもらえないか打診してみるのも良いでしょう。・人件費の削減を目指す
調剤薬局における人件費は、約20%を占めていると言われています。医薬品の費用より少ないですが、侮ってはいけません。調剤薬局の経営がいまいちだと感じる時は、固定費の1つである人件費の削減を目指してみてください。正社員を増やした方が良いのか、パートでも問題なさそうか、などを見直してみましょう。ただし、過度な人員削減は残されたスタッフの負担になってしまうため、それも加味して人員調整を行うことがポイントになります。
・薬価差益を上手く利用する
薬価差益は、仕入れ値と薬価の価格差を意味します。薬価差益は以前と比べると少なくなっているので、大きな収益にはつなげにくいです。そのような状況下で薬価差益を少しでも多く確保するためには、ボランタリーチェーン(チェーン店のような仕組みを作るビジネスモデル)や共同購入を利用するのがおすすめです。薬価差益は微々たるものに感じるかもしれません。しかし、積み重なると薬局経営に大きな影響を及ぼします。そのため、対策を講じることは調剤薬局の経営を円滑に進める際に重要です。
このようなコツを把握していれば、万が一の時に備えた対応がしやすくなります。そしてそれが、円滑な経営に結びついていきます。調剤薬局のオーナーとして独立を考えているなら、念頭に置いておきましょう。
■調剤薬局を経営する時の注意点
調剤薬局の経営は、利益を残すことを考えなければいけません。最初の頃は、そのために色々なことに手を出してしまう可能性も大いにあります。しかし、やみくもに取り組んでも上手くいくとは限らないため、調剤薬局を経営する時の注意点も把握しておくことをおすすめします。・人材紹介会社に任せっきりにしない
調剤薬局で働くスタッフを集めるため、人材紹介会社を利用するケースは少なくありません。人材紹介会社を使うこと自体が悪いわけではなく、頼り過ぎてしまうと経営を圧迫してしまいかねないので注意が必要です。人材紹介会社を利用すると、簡単にたくさんの求職者とマッチングできます。採用までスピーディーに進められるという点も、利用することで得られる大きなメリットです。
しかし、人材紹介会社を利用すると他の採用方法よりコストがかかります。採用にかかるコストが割高になってしまうのはデメリットだと言えるでしょう。そのため、人材紹介会社に任せきりにするのではなく、コストを抑えられるハローワークや自社サイト、SNSなども有効活用しながら採用活動を行うのがおすすめです。
・M&Aは採算を考える
経営中の調剤薬局を成長させるためにM&Aを検討するケースは珍しくありません。後継者がいない場合に後を継いでもらったり、会社を買収したりすることにより、経営基盤の強化ができます。しかし、とにかくM&Aをすればいいというわけではありません。M&Aを行うためには、着手金や中間金などを含めると1,000万円以上かかってしまうケースもあります。経営状況によっては、思ったように利益が出ずに後悔してしまう可能性もないとは言い切れないでしょう。
M&Aを考えているのであれば、採算が取れるかという点を加味して決めるようにしましょう。採算が取れる見込みがあるなら、M&Aは前向きに検討して問題ないと言えます。
調剤薬局を経営する中で、このようなコツを押さえておくと失敗して後悔するリスクを軽減できます。絶対に失敗しないという保証はできませんが、リスクは軽減できるでしょう。採用活動は自分でも積極的に行うようにしたり、採算が取れるようなM&Aを目指したりして、円滑な調剤薬局系を実現させましょう。
■独立して安定した経営を目指すならアテックへ!
薬剤師が独立し、安定した経営を目指すのであれば、知識や経験は必要です。経営者としての知識も必要なので、自身が持てないと感じてしまう方もいるでしょう。そのような時は、アテックまでお気軽にご相談ください。アテックは、1991年に創業して以来、独立したいと考える薬剤師のサポートを続けてきました。アテックが運営するファーママーケットを利用すれば、後継者を探す調剤薬局オーナーとのマッチングができます。理想の調剤薬局に近い条件の店舗を見つけられる可能性も大いにあるため、利用を前向きに考えてみてください。
ファーママーケットは、売却したい側と買収したい側のニーズを的確に汲み取ったサービスです。買収以前のノウハウやスタッフも引き継げるため、ゼロからスタートするよりも成功の確度は高いです。中立かつ公正な立場で薬局オーナーの理想を実現できるようなサービスを提供しているため、利用して後悔することはまずないでしょう。
もしも、調剤薬局のスタッフからオーナーへとステップアップを考えているなら、ぜひアテックまでご相談ください。ファーママーケットでは、理想に近い条件の調剤薬局をご紹介します。