全国の薬局数は5.8万か所(平成28年末)あり、前年比362か所(0.6%)増加しています。
これだけの数の薬局がありますが、薬局の中には経営が上手くいっている薬局もあれば上手くいってない薬局もあります。
一般的に
売上 :単価(日)×数量(日)×営業日数
粗利益 :売上―仕入
調剤薬局の場合は単純化すると
売上 :調剤医療費×処方箋枚数×営業日数
調剤医療費:調剤技術料+薬剤料
粗利益 :売上―(薬剤料×0.9)
薬剤料は、単価が高くても仕入値が高い場合も多く、実際は薬価差(薬価―納入価)が少なければ利益はほとんど期待できません。薬価差としては8~10%程度です。
調剤技術料も薬局でコントロールできる項目ではありませんので、実質は処方箋枚数で粗利益が決まってくることになります。
調剤薬局では薬剤師一人当たり40枚という上限が設定されており、いかにコンスタントに処方箋枚数を確保するのかがポイントです。処方箋を発行する病院やクリニックとコミュニケーションをとっていくことが失敗しないためには必要不可欠です。
想定した調剤技術料(1枚あたり2240円)と処方箋枚数(薬剤師一人あたり30~40枚)によって賄える範囲(粗利益)で、従業員を雇い、家賃(販管費)を払っていく必要があります。経営者として細かく見ていく範囲は限られてしまいますが、人を雇ったり、出店場所を確保する場合は、大まかにでも粗利益と経費のバランスを考えなければなりません。
では経営が上手くいかない薬局としてはどのようなケースがあるのでしょうか。
①調剤報酬の低下
医療費総額抑制の流れの中、改定のたびに経営環境は厳しくなっています。特に門前薬局については調剤基本料見直しの影響が大きくなっています。また薬価についても高額医薬品を中心に下落圧力が強くなっています。また後発医薬品も価格の下落が止まらず、メーカー自体も製造を中止するところもでてきています。こうした流れに対応できずにじり貧になるケースがあります。
②主要取引先の変化
病院の建て替えや移転、経営統合等により、従来と環境が全く変わるケースがあります。病院移転先の近くに移転するにも費用が捻出できない、競合に好立地を奪われるなどのケースもあります。また診療報酬改定の流れから大病院の外来患者の抑制傾向が強まっており、従来のようには処方箋枚数が確保できなくなっています。
③困難な人材確保
薬剤師の確保が困難になっています。大手調剤チェーンやドラッグストアでの大量採用や、都市部の大病院への人材集中が顕著です。紹介会社に高い手数料を払って採用するケースもあり、経営を圧迫しています。また経営者本人が高齢化しており、体力的にも厳しくなっている実態があります。
薬局のM&Aが増加している背景にはこうした問題があります。とくに経営者自身が高齢化している場合、今後ずっと様々な課題に正面から立ち向かっていく気力や体力に自信が持てなくなっていることがあります。そのために、経営者にとっての最後の大仕事としてまだ元気なうちに後継者問題に取り組まれている方が多いのでしょう。