2018年度調剤報酬改定は、大手調剤薬局チェーンとって、大変厳しい内容となりました。
大手チェーンへの”狙い撃ち“ともいえる内容で、経営に対する影響も大きいものです。
関係する改定内容は以下の通りです。
【調剤基本料1(41点)の算定ができない】
・グループ全体の処方箋受付回数が月4万回超40万以下で
処方箋集中率が85%超の薬局 または
特定の医療機関との間で不動産の賃貸借取引がある薬局
→調剤基本料3-イ(20点)
・グループ全体の処方箋受付回数が月40万回超の薬局で
処方箋集中率が85%超の薬局 または
特定の医療機関との間で不動産の賃貸借取引がある薬局
→調剤基本料3-ロ(15点)
・特定の医療機関からの処方箋受付回数が月4000回超の薬局(①②を含む)
①同一グループに属する別の薬局で、調剤の割合が最も高い医療機関が同一の場合、別の薬局の処方箋を含めた受付回数が月4000回超
②薬局のある建物内の医療機関からの処方箋はすべて合算
→調剤基本料2(25点)
・かかりつけ薬剤師指導料の算定実績などにより調剤基本料1を算定できる「特例除外」の廃止
・新設の地域支援体制加算(35点)の算定には8項目の実績が必要
保険調剤薬局は、調剤報酬による収入が8割以上を占める構造であり、基本調剤料の引き下げの影響は大きいです。調剤基本料1が算定できないと単価が大きく下がります。
グループ全体の処方箋枚数が40万回を超えるのは大手調剤グループ10社レベルのクラスですが調剤基本料3-ロは15点で大手チェーンは特に打撃となります。
また処方箋集中率が95%から85%に引き下げられたことで、従来の門前薬局から一部街中に分散して出店する戦略をとっていたチェーンにとっても引き下げの対象にかかってしまいます。
また最近増加しているクリニックモールへの出店に対しても、今回は高めのバーで影響は少ないものの、今後対象枚数が下がれば、報酬引き下げとなる懸念があります。
今回の改定を受け、大手調剤薬局グループは生き残りをかけ、ビジネスモデルの転換を迫られています。
すでに大手チェーンのなかには、外来診察がない土曜日の営業を定休日とするなどの動きもみられます。また不採算店の閉鎖、門前からの撤退など、今後もコストの見直しは進んでいくことが予想されます。
こうした環境の変化は、薬局のM&A市場の動向にも影響を与えます。これまで積極的なM&Aを展開してきた大手チェーンの動きは鈍化が予想され、代わって相対的に増加が見込まれるのは4万回以下、または4万回超40万回以下の中堅グループによるM&Aです。
調剤薬局業界は、高齢化の急速な進展と、医薬分業の流れを受けて、市場規模は7.8兆円、成長率は9.3%と急速に拡大してきました。また創業者の高齢化などを背景に薬局のM&Aも市場規模が拡大しています。
今後はこうした中堅グループがどのような相乗効果を求めながら、M&Aを展開し、地域の医療を守っていくのか、動向が注目されます。