薬剤師として働く方の中には、将来独立・開業を視野に入れて働いている方は多いでしょう。
独立・開業の理由は様々ですが、勤務薬剤師に比べて意思決定の自由度の高さから選ばれています。
しかし、「経験があるから何とかなる」という考えで独立・開業を行い、失敗するケースは少なくありません。
失敗を回避するためにも、薬剤師が独立・開業を成功させる上で考えたいポイントを確認していきましょう。
目次
薬局の独立・開業が厳しい現状
今、日本の薬局店舗数はコンビニエンスストアを上回るとされています。
なので、限られた処方箋を薬局同士が取り合っている状況です。
特に大手調剤薬局は好立地な場所に多く、さらに処方箋を得るためのビジネスモデルも確立されています。
その理由から小規模の新規薬局の場合、策を講じずに参入しても安定した経営を実現することは難しい状況です。
勤務薬剤師の時を比べて収入を得られるだろうといった安易な理由で薬局を開業する考えは止めた方が良いでしょう。
では、他の薬局と差別化できる特徴があれば良いと考えるかもしれませんが、それだけで経営が順調になるわけではありません。
優れた特徴があっても、その地域の利用者のニーズに合わなければ顧客の確保には至りません。
なので、薬局の独立・開業にあたり、立地や経営スキル、強みなど様々なことを考えて計画していく必要があります。
開業候補地での顧客のニーズを考える
薬局を開業するためには土地や店舗が必要です。
駅に近い、土地や建物が広い、周辺に高齢者が多いなど色々な条件から開業候補地を選定していきます。
独立・開業を成功させるには立地条件以上に、患者需要予測に基づいてマーケティングを行うことが大事です。
地域に応じて薬局の在り方はそれぞれ異なり、薬剤師が求められることも変わってきます。
なので、開業候補地の顧客のニーズに合わせて経営を行っていくことが重要です。
例えば、地域住民の年齢層が高齢の場合、高齢者の来院が中心となります。
そうなれば座った状態でも投薬可能なカウンターの設置や薬の宅配サービス、在宅治療サービスが求められるでしょう。
子育て世代が多い地域なら、感染症が流行した時に備えて患者の隔離部屋があると便利です。
また、子連れで訪れられるように授乳室やキッズスペースなどがあると立ち寄りたくなるでしょう。
開業候補地が駅に近い場合は、仕事帰りにビジネスパーソンが立ち寄ると考えられます。日中、なかなか薬局に立ち寄れないビジネスパーソンは多いので、夜遅い時間帯まで営業するといった工夫が必要です。
このように立地に応じて顧客のニーズは変わってくるので、それに合わせてマーケティングを行っていくことが成功のポイントと言えます。
どこで経験を積むかも重要
薬剤師になったばかりで独立・開業は難しいので、一度どこかの薬局で働き、現場を通じて経営を学んでみることをおすすめします。
そうなると、経営者と距離が近い個人薬局や小規模の薬局を選ぶでしょう。
確かに、経営者が身近にいれば考え方やノウハウを得られやすいメリットはあります。
しかし、それ以上に重要なのは経営センスの有無ではないでしょうか?
個人もしくは5店舗で展開している薬局と10店舗以上を超える薬局を比較した場合、経営センスがあるのは後者です。
なぜなら、10店舗以上の経営となるとセンスや感覚だけではなく、理論的に行動する能力がないと会社は立ち行かなくなるからです。
規模が大きくなるほど競争は激しくなりますが、その中でのし上がっていく経験も経営者として必要です。
なので、必ずしも個人薬局が良いというわけではありません。
また、薬局の種類によっても知識が偏ってしまう可能性があります。
例えば、在宅専門ならそれに特化した経営ノウハウと経験に偏ってしまうと懸念されます。
開業候補地に応じて薬局のニーズも変えていく必要があるので、幅広い知識と経験を得た方が良いでしょう。
規模が大きな薬局は様々なサービスを展開していることが多いので、幅広い知識を学べるチャンスが多いと考えられます。
経営のことを学ぶだけなら、薬局だけにこだわらず他の業界を見るのも良いでしょう。
薬局で勤務したから独立・開業は簡単と思わず、幅広い視野を持ち、長い時間をかけて経営知識を身に付ける努力が大切と考えます。
個人在宅業務は医師に依存しない方がいい
高齢者社会により介護施設の需要は高まっていますが、在宅で行う場合は個人在宅も視野に入れてみましょう。
施設在宅は施設を中心のサービスとなりますが、個人在宅なら施設だけではなく個人宅のサービスも提供可能です。
高齢者の全てが施設を利用するわけではないので、幅広くサービスを提供するなら個人在宅の方が良いと言えます。
一般的に薬剤師の在宅業務は医師からの処方箋などによる指示で行われます。
積極的に在宅業務を取り組むクリニックが限定されている地域の場合、医師指示型に依存すると薬局は参入しにくい傾向があります。
また、薬局主導型の在宅業務も難しくなるでしょう。
さらに医師指示型は訪問範囲が広くなるので、利益率を下げてしまい、営業損失を計上する可能性も考えられます。
医師指示型に依存しすぎず、薬局提案型や他職種提案型といったパターンもバランス良く取り入れる考え方が求められます。
薬局の強みが何かを考える
薬局の収益は調剤業務以外に、OTC販売、在宅医療、薬価差益などが主軸となりますが、この中で利益につながる項目は何でしょうか?
収入源につながる強みを把握すれば、その項目を通じて収益を伸ばすことができるでしょう。
安定化を狙う場合は他の項目を強化する対策が求められます。
薬局の収益と支出を把握するためには、会計やファイナンスに関する知識が必要です。
これらの知識は開業後の資金調達や税務計画にも欠かせない知識なので、最低でも簿記3級レベルの知識は欲しいところです。
薬剤師の独立は仲間作りも重要
薬剤師一人で独立・開業を行うには限界があるので、仲間作りも大切です。
その仲間とは開業の際にパートナーとなってくれる人物や取引先が当てはまります。
開業する際は従業員の確保や医薬品の卸なども必要ですが、全て1人で行うのは困難でしょう。
そうなると薬局に出入りする医薬品業者などの協力が必要です。
医薬品業者は色々な薬局や医療機関に出入りしているので、地域の動向や立地など有力な情報を持っているでしょう。
今まで勤務薬剤師として働いていても、実際に開業となると知らないことばかりです。
多くの人の知恵を借りることも独立を成功させる秘訣と言えます。
薬局M&Aも視野に入れてみる
新規で薬局を開業するのは容易なことではありません。
それなら薬局M&Aを通じて独立を目指す方法も一つの手段となるでしょう。
既存の薬局の経営権利を得るので、立地探しや医薬品の卸、集客など一から行う必要はありません。
希望によっては従業員もそのまま継承できるので、採用の手間も軽減できます。
薬剤師が薬局M&Aをしたい場合は、アテックやファーママーケットの利用がおすすめです。
アテックのグループ会社では独立を目指す薬剤師に向けて支援サービスを行っています。
経営ノウハウや融資の支援だけではなく、アテックを通じて薬局M&Aの仲介サービスも受けられます。
ファーママーケットはM&Aを希望する薬局経営者と買収希望者をマッチングしています。
独自で希望条件に合う案件を探したい際に活用してみましょう。
既存の薬局を自分のやり方で存続させる手段も独立の方法として検討してみてはいかがでしょうか?