医薬品価格が引き下げられたり、調剤報酬の改定があったりと、2018年は調剤薬局業界にとって変化の1年でもありました。
ただ薬価改定は2021年度になると毎年実施されるようになり、財政状況が厳しくなってしまう可能性があります。
これから調剤薬局を開業・経営していく上でどのように利益を上げていけば良いのか悩む方は多いでしょう。
そこで今回は、調剤薬局を開業・経営する上で知っておきたいビジネスモデルをご紹介していきます。
調剤報酬・薬価の引き下げによる悪影響
現在、世界各国で高齢化が進んでいますが、中でも日本の高齢化率は非常に深刻な問題となっています。
内閣府が発表している「平成30年版高齢社会白書」では、先進諸国との高齢化率を比較してみると、2015年の時点で日本が先進諸国の中でもトップの速度で高齢化率が推移していることが分かりました。
また、推計値に関してもトップを独走する形になっています。
高齢化がハイスピードで進んでいる中、医療費の膨張は大きな問題として以前から取り上げられていました。
2年に1度行われている薬価改定も、医療費に分類される「薬剤費」を減らすために行われています。
今までは高齢者が増加していくことで、どのように医療サービスの供給量を増加させていくべきかという議題で話し合いが行われていたのですが、どんどん医療費による財政圧迫が進んだことによってサービス量を増やすのではなく、質を高めようという流れになっていったのです。
薬価改定は財政圧迫を減らすための対策となりますが、調剤薬局や医薬品関連企業にとっては悪影響を及ぼしています。
例えば日本調剤の決算報告を見てみると、2018年3月期までは売上高や営業利益も増加していて好調と判断できますが、改定が行われた4月〜6月時期の決算を見ると営業利益が約77%も減益していることが分かりました。
日本調剤の場合、売上高の約8割が調剤薬局事業で占められていたため、このような事態に発展してしまったと考えられます。
このように、薬価改定が行われてすぐに調剤薬局へ悪影響が出てしまっているのです。
これまで調剤薬局が儲かっていた理由
これまで調剤薬局が儲かっていたのは、単純に薬価が高かったという理由だけではありません。
あるビジネスモデルが築かれていたからこそ、利益を上げられていました。
それは、病院・クリニックの周辺に調剤薬局を構える、いわゆる“門前薬局”というビジネスモデルです。
日本では歴史的に医師が病院で診療し、そのまま薬も処方するという形を取っていました。
しかし、明治時代初頭にドイツの医療が日本へ輸入されて以降、医薬分業が各地へ広まっていき、現在のような完全分業へと発展していったのです。
そのようなこともあり、病院で処方は行わないところが増えていきました。
門前薬局の場合、目の前にある病院の患者が顧客対象となります。
小売店の場合、顧客開拓を行わないと売上げアップにつながりませんが、門前薬局であればそのような開拓を実施する必要がありません。
つまり、待っていれば顧客が来てくれる状態になっているのです。
また、病院で行われている治療を確認すればある程度必要な医薬品を揃えておけるため在庫リスクも少なくなっています。
門前薬局は病院の近くに建てれば儲かるという仕組みになっているため、多くのメーカーや個人オーナーは病院周辺に立地しているのです。
大きな大学病院になると周辺だけで10店舗以上もの調剤薬局が立地しているというケースもあります。
これまでは門前薬局というビジネスモデルが確立されていたため、多くの調剤薬局オーナーはこのビジネスモデルになぞった形で経営を行ってきました。
しかし、上記でご紹介したように薬価改定による悪影響から門前薬局でも周辺にある薬局と差別化させないと利益を生み出すことが難しくなってきてしまったのです。
将来的には1年に1回薬価改定が行われるということもあり、今のうちから調剤薬局のビジネスモデルを見直し、新しい仕組みを取り入れる必要があると言えます。
これからは新たなビジネスモデルを取り入れる必要がある
調剤薬局において新たなビジネスモデルを取り入れた方が良いということなのですが、具体的にどのようなビジネスモデルを取り入れていけば良いのでしょう?
まず、注目すべきポイントは「かかりつけ薬局・かかりつけ薬剤師」です。
これは、厚労省が2015年に打ち出した「患者のための薬局ビジョン」の中で公表されました。
2025年までに全ての薬局で24時間対応・在宅対応を行えるようにするという目標を政府が立てたのです。
この目標を受けて創設されたのが、かかりつけ薬剤師指導料になります。
薬価改定が下がった反面、このかかりつけ薬剤師指導料により、患者が同意すれば報酬を上げて算定できるようになっています。
調剤薬局オーナーからするとこれまでは待っているだけで利益が上げられたものが、自ら営業していかないと利益が上げられなくなってしまったため、なかなか新しいビジネスモデルを取り入れることは難しいでしょう。
ただ、これからは患者本位の医薬分業が進み、これまでのビジネスモデルでは経営難に陥ってしまう可能性があります。
また、現在は調剤業務を大手ドラッグストアまで行うようになり、いよいよ「調剤薬局でなくても医薬品を調剤してもらえる時代」になってきているのです。
そのような点を考慮しても、今後はかかりつけ業務を展開する必要性は高いと言えます。
もう一つ、注目すべきポイントは「個性を出す」という点です。
調剤薬局というとメーカーを含め、多くは同じような外観・内装・サービスとなっています。
しかし、これからは個性を出していかないと競合他店に負けてしまい、より利益が落ち込んでしまうと考えられます。
市場の中に埋もれてしまわないためにも、「この薬局だからこそ利用したい」と思えるような個性を打ち出しましょう。
簡単に言うことはできますが、実際に個性を出すのは難しいかと思います。
個性を出そうと考える前に、まずは顧客のターゲティングとニーズを分析してみましょう。
どんな顧客に来店してほしいのか、その顧客は何を必要としているのかを分析していき、特化したサービスを提供すれば、それが個性となって表れてきます。
例えば、病院の患者以外にも利用してほしいという考えから、医薬品よりも身近な漢方・サプリメントに特化したサービスを提供したとします。
すると、これまでは病院の患者から受ける処方箋だけが利益になっていたものが、漢方やサプリメントを求める顧客が増え、利益を上げられるでしょう。
調剤薬局の開業・経営をサポートしてくれるアテックとは?
調剤薬局を開業・経営する上で知っておきたいビジネスモデルをご紹介しましたが、新しい仕組みを取り入れることは容易ではありません。
最初は悩み、失敗してしまうこともあるでしょう。
もし、調剤薬局を新たに開業したい、これから経営していく上でどんな点に注意するべきか分からないということがあれば、ぜひアテックを活用してみてはいかがでしょうか?
アテックは薬局M&Aをサポートする企業ですが、「薬局再生」を目標として経営に関する支援サービスを実施しています。
アテックのスタッフは薬剤師の資格を持つ人が多く在籍しているため、調剤薬局や薬剤師ならではの悩みを相談しやすいでしょう。
アテックではこの他にもこれから開業したい方のためのマッチングサイト・ファーママーケットの運営も行っています。
調剤薬局の開業・経営に悩んでいる方は、ぜひアテックへ相談してみてください。