関係者への説明は細心の注意を払う

挨拶状はご法度。直接説明するのが筋

譲渡契約が成立したら、従業員や医療機関、問屋、家主、患者さんなどに、譲渡の報告をおこないます。「反対されるのではないか」「裏切ったと思われるのではないか」。オーナーにとっては、なんとも気の重い仕事でしょう。

関係者への理解を得るためには、誠実に説明する以外に方法はありません。まず、従業員には、全員が集まる日を設けて、全員の前で発表することをおすすめします。一人でも、間接的に聞かされる従業員がいると、話がこじれることがあるからです。また、発表を聞いた従業員は「クビになりはしないか?」「給料が下がるのでは?」とさまざまな不安を抱くはず。雇用や給料の維持について、買い手と契約を交わしているのなら、しっかり説明してください。ちなみに、長年働いてきた薬剤師ともめることは珍しくありませんが、その場合は、退職金を手厚く支払って退職してもらうこともあります。

一方、医療機関や問屋、家主などには、アポイントをとって、直接対面して、説明しましょう。挨拶状で済ませるのは、ご法度です。相手先に出向くときには、新しいオーナーを同伴し、後継者が信頼できる人であることをアピールしてください。「得体の知れない人が引き継ぐのではないか?」という相手の不安を和らげることができます。

長年ごひいきにしてくれた患者さんにも、直接オーナーが説明する必要があるでしょう。もし、自分以外の薬剤師は今後も残るのであれば、そのことを伝えてください。患者さんの不安を、少しは取り除けるはずです。

アテック株式会社 取締役社長 鈴木 孝雄
「薬局オーナーのためのハッピー・M&A読本」より

< 前のページへ

次のページへ >