営業権だけの譲渡を選択して気楽な大家業に転身

実例3 Cさん - 営業権だけの譲渡を選択して気楽な大家業に転身

H薬局 Cさん

1943年生まれ。文系の大学を卒業。その後30年以上にわたって小売店を経営。1996年に調剤薬局に業態転換をはかるが、ドクターの逝去という難局を経て、2002年に他の医療機関の近くに、再び薬局を開設。67歳の時に薬局を事業譲渡しリタイア。

―― 異業種の小売店から薬局に転身したそうですね?

はい。30年以上にわたって違う業種の小売店を経営していました。ところが、ご多分に漏れず、その業界でも格安チェーン店が台頭してきて売上げは激減。廃業しようか悩んでいた矢先に、同級生の医師から、ちょうど「開業する予定だが、近くに調剤薬局がない」という悩みを聞きました。たまたま私の店舗は最適の立地だった上に、将来性がありそうな業種だったので、薬局に鞍替えすることにしたのです。

―― 業界未経験での経営はいかがでしたか?

幸い順調でした。8年間続けましたが、1ヶ月の処方せんの枚数は平均して900~1200枚。悪くはありません。薬剤師2人に事務員2人を雇っていましたが、常に黒字をキープできました。ところがチャンスをくれた同級生はまもなく急死。「同級生のクリニック無しでは経営は成り立たない…」と廃業の準備をしていると、今度は幼なじみの医師が独立することになり、「門前薬局を開いてくれないか」と頼まれました。渡りに船で、そのクリニックのはす向かいに土地を購入して薬局経営を再開しました。

―― リタイアを考えたきっかけは?

1番の要因は「精神的な疲れ」です。調剤はたったひとつのミスが人の命にかかわる仕事です。何かあれば経営者として、その全責任をとらなければなりませんが、自分は薬剤師の資格を持っていないので、安全面はすべて人任せ。そうした不安定な状態と重圧に次第に耐えられなくなってきたことに加えて、ドクターの年齢も気になってきました。何しろ私と同世代なので、いつ倒れてもおかしくない。そうなれば新しい店舗をつくるための借入金を返済できなくなります。前回のことがあったので、余計に恐怖を感じたのです。

―― 売却に関しての条件は?

販売条件は、「借入金の返済ができる額」に加えて、それなりの老後資金を得られること。価格交渉をある程度するつもりだったので、しがらみがない人に売りたいと思いました。関西の業者に頼まず、わざわざ関東のアテックさんにお願いしたのもそのためです。

―― 事業譲渡を選ばれたのはどうしてですか?

最初は法人も店舗も土地もすべて譲渡する株式譲渡を考えていたのですが、多額の所得税が心配でした。すると、アテックさんは、営業権だけを譲渡する事業譲渡を提案してくれました。それなら土地・建物・会社ともに手元に残るので、それほど税金はかかりません。その上、毎月家賃が入るので引退後も安心して生活できます。従業員の雇用も継続されることになりました。買い手は中堅薬局チェーンでした。

―― 現在は?

薬局を手放してみて、改めて精神的にラクになったと感じています。ちょこちょこ旅行をしたり、実にのんびりした毎日を過ごしています。このゆとりは何ものにも替えられません。